5話 静真の特殊能力
「“あのこと“とはなんですか?」
彼女は太陽のように輝く笑みを浮かべて、意気揚々と話し始める。
「どうやら、記憶を失ってるようだな。とにかくだな、貴様には特殊能力がある。それも”別格”だ」
「”別格“?」
「貴様の能力を調べたところ複青眼殺した者のスキルを奪い、武器にスキル付与し、さらにその付与された武器で殺された者は蘇生できないようだ。この能力は、滅多にみない希少スキル。そこで提案がある」
「うわっ」
彼女は、俺の体に抱きついてきた。
俺の方が少し背が高い為、胸板に栄養がたっぷり詰まったアレの感触を感じる。
「どうだ? 私の組織に入ってほしいんだけど……」
色白の肌に程よく赤みが差し、女に興味のない俺でも、色っぽいと思った。
でも、それと彼女の案件は別だろう。
ここは丁重に断っておく。
「申し訳ございませんが……」
「あ、言い忘れてたな。断るという選択肢は貴様にはないぞ? 断ったら貴様には死んでもらう。なんせ、組織のアジトを知ってしまったんだ」
「……」
本当にあるのかも分からない特殊能力をタラタラと並べられて、はいそうですかと加入する奴がどこにいるんだよ。
でも、殺されるのもなんだか……
「!?」
俺の喉元には一本のナイフが突きつけられていた。
「いっ……」
切り口から一筋の血線が流れる。
この眼は、“本気”だ。
ここで断ったら彼女の言葉通り殺されてしまう。
俺に突きつけられた選択は“生“or“死”。
死ねば、何もかもお終いだ。
これからの人生にやり直しすら、できなくなるどころか償いもできない。
ならば、答えは一択。
「クソババァの組織に入るぐらいなら、死んだ方がマシだよ」
どうせ死ぬのだから、と悪態をついてみる。
子供の頃に夢見ていた。
悪者を翻弄したい夢だ。
予想通り、彼女の顔は猛烈に紅に染まった。
「何言ってるのか分かって言ってんのか?」
「あぁ、人を平気で殺すような組織には入らない」
――ブシュッッ
「ぐ……はっ」
一瞬にして彼女は長刀を取り出し、その刃は静真の肩を貫通する。
痛かった。
もの凄く痛かった。
でも、それでも自分の信念は曲げない。
「いい眼だねぇ……惜しいなぁ、惜しいなぁ」
これがこいつの“戦闘モード“か。
戦闘時になると、時として性格が変わることもあると言われている。
それはスキルによる影響だ。
スキルが強力であると、スキル使用者には人格の障害が生じてしまうらしい。
《特殊能力を発動させろ》
俺にあるのか……?
《ちょっとの間、完全に俺の人格と入れ替われ》
何を言って……
そこで意識をプツンと途切れた。
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