2話 実は無能力でも超人!?
「こいつは惜しいな、使えると思ったんだ」
「使える……?」
気がつくと前へ乗り出していた。
「あぁ、そうだ。あいつは使える奴だ。是非、牙刀直属の部下に欲しかったんだがな……どうやら騎士団所属者らしい。残念だ」
「どこでそれを……」
騎士団のトレードマークでも無ければ通常、把握できない。
もしくは……
「見た者は抹殺させたもらう。一人ずつだ」
ナイフが眩い赤のオーラに飲み込まれ、そのナイフを片手にミサイルの如くこちらに向かってきた。
「これで、終わりだッッ」
ナイフは赤い弧線を描きながら、静真の喉を狙う。
当然、静真には目視できないほどの速さだ。
しかし――――
静真は平然と、体を後ろに反らし避けてみせた。
静真の表情には「焦り」「怒り」「恐怖」といった感情の欠片も無い。
(これは……面白い)
牙刀は歯を剥き出しにするほど笑い、再びナイフが静真を襲う。
「ぐがっ……ッッ!!」
ナイフの軌道は瞬間的に変化し、戦闘素人である静真には全く反応できなかった。
「無能力が俺に歯向かうか……」
その男はやれやれと言った表情で、ため息をつく。
右腕はもう使えない。
これが絶体絶命の大ピンチというやつだろう。
たしかにお前の言う通り、俺にはスキルは無い。
「だからって、負けるわけにはいかねぇだろ!!」
使えない右腕で絡めて固定し、
左腕で―――
なに……?
「……脆弱な奴だ」
渾身の一撃がたったの指一本で止められていた。
俺の渾身の一撃はこの男にとって無に等しかったのだろうか?
いや、そんなことはどうでもいい。
「あいつを返せ……」
「は?」
その男は少し目を細めてにやつく。
俺の親は【無能力】だからと言って毎日のように頬を叩いたり、ベランダで寝かされたりした。
周りの人達の反応も氷のように冷たく、忌み嫌われる惨状。
対照的に龍馬にはみんな優しく、自然と周りに人が集まる。
しかし、あいつは違った。
あいつはそんな俺を「親友」だと認めてくれたのだ。
それから、次第に友達も増えて俺の人生は色彩豊かになった。
そんな奴をこいつは……
殺したんだ。
「お前、あいつを返せよ……」
静真は涙に溺れた。
まるで、静真の位置にだけ大雨が降ったようだ。
静真は分かっている。
爽太は帰ってこないことを。
《なら、この感情はどこにぶつけたらいい?》
頭の片隅にふと、そんなことが囁かれた。
誰が囁いたかは分からない。
俺は突如洗脳されたように体が自然と動いた。
――ズシャッ
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