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いってらっしゃい

「クロスゥウウウ!」


 そ、そんな……クロスは何故、自らバグに飛び込んだりなど……


「わ、私が……私が助けに行かなくちゃ」

「待て、ルイ」

「待ってる暇なんかないわ! 今すぐにでもクロスのもとへ」


 私は駆け出して、すぐにでもクロスを助け出さなきゃいけないというのに。

 急ぐ私の腕をサンが掴んで止めた。


「は、離して! 早く行かなきゃクロスが!」

「いいんだ、もう終わったんだよ」

「終わったって何が! 終わりになんてさせるもんか、私が絶対に救って――」


 サンに強く腕を引かれて、浮いた体はサンの胸に収まった。

 何がなんだか分からないが、こんなことをしている場合ではないということだけは確かだ。


「終わりになんかさせないと、そう願うのなら。きっとルイはクロスを救える」

「だから! 私はすぐにでも――」

「帰るべきだ。元の世界とやらにね」

「え?」


 なぜ今、サンは世界の行き来の話をするのか。

 窮地に陥るクロスはここにいて、元の世界にいるのは抜け殻だというのに。


「クロスはね、元からリセットボタンなんて押す気はなかったんだ。この世界の記憶を残す気でいたんだよ」

「でもバグに侵されたら元も子もないじゃない!」

「そうかもね。だからクロスは、それをルイに託したんだ」


 私に? 確かにクロスは私に何か頼みごとをしていた。

 でもあれは一体、なんだったっていうの?


「サンには、それが何か分かるというの?」

「分かるよ。でも言わない。無理強いはしないと、それがクロスの意志だからね」


 なんで私だけ仲間外れなの。

 嫌だよ、もう一人は嫌なのに。


「さあ、帰るんだルイ。異世界から来た君にはそれができるはず」

「い、嫌よ……絶対に帰らない」

「帰れって、ルイの居場所はここではないんだ」

「酷い……なんでそんなことを言うの?」

「とっとと……元の世界に帰れと言ってるんだ!」

「ひっ……」


 サンの腕から離れて腰を落とす。けれど痛むのは、体ではなく心だった。


 みんなが私に隠し事をする。

 どうして、何故? 私は罪を、クロスを助けたいだけなのに。

 なのに私は、この世界に必要ないというの?


 サンは尻もちを着く私に歩み寄ると拳を鳴らし、高圧的に見下ろした。


「消えろ、ルイ。でなければ今ここで、私がルイを殺してやる」

「い、いや……」

「これが最後の温情だ。早くこの世界から……消え失せろぉおおお!」

「いやぁああああああぁぁぁ……」


 なんでなのサン、なんでそんなに私に怒るの?

 なんで私が消えた後には穏やかな顔をしているの?

 分からない、私には全然分からないよ……


「さぁクロス、私も一緒にさせてくれ。ルイの帰りを共に待とうじゃないか」

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