最強を上回る超理不尽
「マジかよ、これは幾らなんでも……」
「お、おい! 一体どうしたというんだ!?」
「サン、四天王はみなバグに冒されていたのです。その四天王を取り込んだ魔王は、その身をバグに捧げることに」
これって、この能力値って、いったいどうしたらいいっていうんだ。
『『ラ力*+39R=??『』
】防${{90!>>>>
『%早##:7YQP<BH『
『『『『魔魔0』P=~7」
HPPPPPP&%2-・Ω
全ての能力がバグってる。ボス耐性が残っているのなら、即死も通用するか分からない。というより、その身に触れてしまうことすら危険なような気がする。
一体いつ、四天王はバグに冒されてしまったんだ。後ろから迫るバグに呑み込まれたのか。しかしエスヴァプはバグの影響が見れたものの、マップの移行不良が主であり人体への影響は見られなかった。そしてアンジュエラを帰した後、絨毯を買いに立ち寄ったハイネの町。そちらも未だ無事であり、つまりラシーニアやベゲット山からの方角の影響ではないはず。だとしたら何故、しかも全員。
恐らくきっと、四天王の内の誰か一人がバグにやられてしまったのだ。そしてその者と接触したが為に、他の三人もバグに吞まれた。では果たして最初の一人目は――
俺自身への異変、透過のバグの影響を確認したのは、ルイに会う直前だった。しかし実際バグに感染したのは、きっとそれより前のはず。であれば俺はいつ何処で、バグに感染したのだろう。
思い返すと、俺がバグに触れたのは始まりの部屋の中だった。しかしその時は何も見られず、その後も透過は起きていない。次にバグに触れたのは、サンを救った湿地帯でのこと。サンの胸の空洞に、俺は手を通したのだ。そしてその後に発症し、ルイと出会ったという流れ。もし仮に、サンのバグが発端だというのなら、それに触れてしまった者は――
「エ、エウレタン……奴はサンの胸に腕を通してしまっている」
それだ、それしかない。そこから四天王は感染したんだ。ネイロンとアリルはエウレタンの話を聞いてる以上、少なくとも片一方は戦いの後に接触している。エステルも俺と戦う以前の段階で、ネイロンかアリルと接触している。だから三人の戦い方も知っていて、地の利の有用性と共にそれを俺に話していた。
サンは悪くない。むしろサンがいなければ、この旅は既に行き詰まっていたくらいだ。ならば今起こってしまったこの事態、それをどうするかが重要だ。
蠢くバグの塊は俺を俺と認識し、こちらにじりじりと迫ってくる。これほど悪化したバグならば、触れれば即座に感染し発症にまで至るだろう。それは床を通じて、バグに冒される城内が物語っている。
「ど、どうするのよ!? このまま攻撃を加えて行く訳?」
「そのつもりだ。だけど怯ませることはできても、それで倒すことはできないと思う。こいつは恐らく、このままの姿では倒すことは不可能だ。ルイの力が必要で、ダメージを通すには実体に戻す必要がある」
「私は、私にできることは何もないのか?」
「そんなことはないよ、ルイが触れるまではサンしか実体を見ることはできない。俺とルイにはあいつがどこに向いてるのか、何をしようとしているのか、そういった挙動を確認できない。だけど気を付けろよ、床を通じてバグの浸食は進んでる。後ろに引きながら、それでこいつと戦おう」
後ろには四天王の部屋が四つ、そしてホールを抜ければその後ろは無限の谷底だ。それが俺たちのデッドライン、そこに至るまでに、こいつをなんとか倒し切らねばならないということ。
「行くぞ! サン、ルイ! これが最後の戦いだ!」




