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ヘルプデスク

「そろそろ昼飯だな」


 スーツを纏う男はブルーライトに照らされて、疲れ目には夥しい量のメッセージが映る。男は現実世界の会社員にして、ウェアのヘルプデスクの担当だ。設立当初こそホワイトな労働環境だったが、仮想空間への来訪者は日を追う毎に増してゆき、合わせて問い合わせも増加を辿って、今では過酷な労働環境に陥っている。


 溜め息を吐く間にも増える案件、しかし同時に増える給料。金儲け主義な会社であれば当然で、基本は金持ちからの依頼が経営の基盤となり、そして年に幾度か抽選を行う。その売上額は全盛時の宝くじよろしく、軽く兆の桁にまで達してしまう。外貨を含めればそれ以上だ。


 年収は受付ですら億を超えるし、エンジニアとなれば桁が変わる。何より福利厚生の一つは魅力で、だから職員は文句を垂れつつも、我慢の道を選択した。


「最近、問い合わせ多すぎなんだよ」

「世界の数も増やし過ぎだよな。ファンタジーに恋愛に、SFもあればなんでもござれだ。世界が変われば対応も画一では済まないし」

「でも、ちゃんと優先順位はつけろよな。あくまで金持ちが優先だ。親族や知人が同じ世界を訪れてくれる」

「分かってるよ。抽選の奴を厚遇したって、所詮持っていたのは運だけだ。後には何にも続かないよ」

「そゆことぉ。面倒だけどさ、せめてたぁっぷり、貰える金は貰っとこうぜ」


 そして職員は席を立った、僅かな昼食時間を取る為に。その間にも案件は津波のように押し寄せて、そしてその中に紛れるかたちで、一つのメッセージが届いていた。


”こちらストラユニバースのクロスです。不具合があったのでご連絡しました。扉と窓にバグが生じて家からの出入りができません。早急に解消をお願いします”


 海岸に立ってみて、海の波が鎮まることはないはずだ。これも同様、次なる一波に覆い被さり、クロスの救助の信号は、あっという間に一覧の下方に追いやられた。

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