表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/67

最終決戦

 強敵のエステルを打ち倒した後には、絨毯に乗るサンとルイに合流する。


 対岸であった魔王の城の城壁には、俺の投げた剣が鍔まで深々と突き刺さっていて、それを引き抜くと持ち主であるサンに柄を差し出した。


「ほら、返すって言ったろ。サンキュな」

「クロスが使った剣なのなら、これで私の剣も伝説の剣かな」


 冗談交じりに微笑むサンだが、それ以前にサンの剣はとっくのとうに勇者の剣だ。切れ味には見て取れない、多くの勇気が備わっているはず。


「さあ、行こう。後は魔王を倒して、それで俺たちの冒険は完結だ」

「そんなことはないでしょう? これは終わりではなくて、リセットした先の世界のはじまりでもあるわ」

「……そうだね。そうなるといいね」


 いざ魔王城を前にして城門を開くと、屋内は闇に包まれていた。魔力を消費した俺に代わってルイの魔法が灯火を宿す。


 玄関ホールから連なるオブジェは、魔人の形を成した銅像だ。サンいわく神話の中の存在で、七体の魔人たちは世界を破滅に導くそう。もしかしたら裏ボス的な要素もあるのかもしれないな。


 オブジェの先には扉が続いていて、意を決して開いてみるも無人の空間が広がるのみだ。対角線には更に扉が続いているが、その先も同じくもぬけの殻だった。


「これってまさか……ボスの控える部屋なんじゃないか?」

「四天王の部屋。既に倒したから部屋は空っぽということか」

「ならこの先も、二つ空き部屋が続くはずです」


 三つ目の部屋の隅には幾つかの棺桶が置かれていて、恐らくアンデッドを操るアリルの部屋だろう。そして四つ目は先に戦ったエステルの部屋。仮に四天王が残っていた場合、ここで戦うイベントが発生するのだと伺える。


 だが殺した訳ではないのだし、初めに倒したエウレタンなら、そろそろ戻って来ていてもおかしくはない頃合いのはずだが、しかしいないのならいないで好都合。最後の部屋へ続く扉に手を掛ける。


「次の扉を開いた先には――」

「いるだろうね。未だ手を合わせてはいない、ストラユニバースに君臨する魔王が」


 扉越しにも伝わる重苦しい重圧。この先に魔王がいることは確かであり、そしてSランクの俺は倒しうるだけの力を持っている。しかし不安は拭えない。エステルとの戦いで残る疲労もそうなのだが、これまで四天王にすら苦戦した俺が魔王に勝つことはできるのだろうかと。


 土壇場で震える俺の手に、二つの掌が重なった。


「大丈夫、大丈夫」

「怖くない、怖くない」


 サンとルイがいれば怖くない。この温もりの為なら命だって懸けることができる。そんな二人を失うことが敗北で、だから俺は必ず打ち勝って、リセットボタンをこの手にしてみせるんだ。


 三人の手で扉を開け放つと、不気味に揺れる灯火の先には、玉座に掛ける魔王の姿があった。


「お前が魔王……レイザーか」

「ようこそ、魔王城見学ツアーの御一行様よ」


 深淵の黒髪を波立たせ、頭上には天を穿つ二本の双角。軽口こそ叩いてはいるが、魔王としての威圧は十分だ。


「お前に恨みはないけれど、悪いが倒させてもらうよ」

「はっ、おもしれぇ冗談だ。だがそんな我儘を語るのが強者の特権で、俺はそれに挑む挑戦者だ」


 レイザーは真理を語るようだが、俺の解釈は少し違う。仲間を守るのが強者であって、だから恨みあろうがなかろうが、俺はお前と戦うんだ。


「それじゃあ行くぜ、端から全力でてめぇを倒す」

「かかってきなよ。俺も全力で、お前たちを救ってやるからさ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ