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094.エニグマvsソウタ①

 エニグマとソウタの戦いが始まった直後――。


「もご! もごごご! もごごご!」


「ごめん、エニグマ。君に簡単に勝つにはこうした方が手っ取り早いんだよね」


 ソウタは戦いが始まった瞬間、守護者(ガーディアン)を召喚し、エニグマの口をふさいだ。

 一瞬の出来事すぎてエニグマは理解するのに数秒ほど掛かってしまった。

 だがその数秒の間に、ソウタはエニグマへ距離を詰める。


「あいつ、何で魔法を使わないんだ。

こんな状況魔法を使えば一瞬で覆せるだろ」


 フランシスカはエニグマの魔法に腕を知っているからこそ、なんで魔法を使って反撃しないんだと苛立ちを覚えていた。だがソウタは魔法を使って反撃出来ない理由を知っている。


「んー!! んんー!!」


 必死に守護者を引き離そうと体をぶんぶんと揺らすが守護者は動かない。

 エニグマが揺れるたびに、艶やかで綺麗な金色の髪がゆらゆらと揺れている。

 ツインテールは動きに連動して髪がゆさゆさと揺れるのがいいよなぁと思いながらも、ソウタは着実にエニグマへと迫っていく。


「正直な所、君と戦いたいって気持ちは無きにしも非ずだけど、今の君の力は全く持って未知数だからね。全力の君の魔法を果たして僕は受けきれるのかっていう不安がよぎってしまう程に君の力は君が思っている以上に凄いんだ」


「んぐぐぐぐぐ!」


「だから確実に勝つために、口をふさがせてもらったよ。

悪くは思わないでくれ。これは君の個性であり、弱点でもある」


 ソウタはそれだけボソッというと、エニグマに向けて手のひらを向けた。


 ……だがここからどうしていいのかが分からなかった。

 この状況。ソウタの勝ちと言えるような状況になるにはいくつかのパターンが存在する。

 一つは目エニグマを物理的に戦闘不能にし、勝利する。

 二つ目はエニグマに気絶する程度の力でショックを与えて勝利する。

 三つめ目は自ら負けを認めさせる。


 何個か上げた候補の中で、特に三つは負けず嫌いでプライドの高いエニグマが取るとは思えなかった。一つ目と二つ目はそもそも自分で創ったキャラクター達にしたい仕打ちではない。

 

 ならどうしたらいい。


 ソウタは非常に迷った。

 このまま攻撃しないで勝つというのも難しい。

 しかしエニグマを攻撃しないといけない状況にある。


「……エニグマ。君は具現化は出来る?」


 その瞬間、ソウタはエニグマの口を塞いでいるガーディアンの手を緩めさせた。


「なんだ、今のあの動きは? フランシスカちゃんと戦った時も思っていたがあいつが召喚した物体、気のせいかもしれねぇがそれそのものが意思を持っているように感じるな……。

ハハッ。まさかな、ありえるわけねぇか」


 アルバドールの不思議がっている様子を尻目に、フランシスカはニヤニヤ笑う。

 あの守護者の強さと凄さを実感しているからだ。


「実はそうだと言ったらどうする?」


「馬鹿いえフランシスカちゃん。召喚っていう技術だけでも難しいのに、更に召喚した物体が自由に意思を持って行動するなんてあり得る訳がないんだ。ましてやそれが契約している召喚獣でもないただの物体。いわばゴーレムに近い召喚物だ。意思を持つなんてあり得ないな」


 そんなアルバドールに指を突き立て左右に揺らすフランシスカ。


「チッチッチ。まだまだ見解が甘いなアルバドール。私はあいつの作り出すあの守護者(ガーディアン)の強さを体験したから分かる。あれは確実に意思を持って動いているし、あいつの考えを読み取って自ら自立して動く召喚物だ。もちろん自分で直接的な指示も出来るらしいけどな」


「あり得ねぇな。智慧の聖女様ですら意思を持った召喚物を作り出す事なんて出来ない。智慧系統の魔法のスペシャリストが出来ない技術なんだぜ? 始祖の力を持ってしても出来ない技術をいくら強いからと言ってソウタが使える訳が……ないよな?」


 アルバドールはふと思い返す。

 イリューが言っていた『あなたに創られた存在』という発言を。

 そして本来なら意思を持たない召喚物を、自ら操作することなく、召喚された物体が自立して動く様子を見て確信ではないが一つの予想が頭によぎった。


 それはソウタが始祖の力を持っているのではないかという疑問。 

 それも聖女に宿っていない、唯一無二の力である創造の力が。


「……ってあり得ねぇか。創造の力は世界樹にしか宿っていない。

その力は世界樹以外には渡らないはずだしな」


「どうしたアルバドール」


「いや、なんでもない。それよりもあいつらを見てみろ」


 アルバドールの視線はソウタ達に注がれた。


 塞がれた口を緩められたエニグマはまだ攻撃する事もなくただひたすらにソウタに向かって言葉を投げかけべらべらと喋っているだけだった。


「あんた、どういうつもりよ! あの時もそうだったけどなんで執拗に私の口をふさごうとするわけ!? なにか理由があるの? まさか理由もなしに塞いでいるわけじゃないわよね? ロビンの事もそうだったけどあなたやっぱり私のこと何か知っているの? どこかで昔あったとか? でもその線はないわよね。だってあんた私の過去の事を全然知らなかったし……」


 エニグマはピタリと動かしていた口を止めた。

 そしてニヤっと笑ってソウタをキリっとした目で力強く見つめる。


「ま、どうでもいいわね。あんたを倒せばSランク相当の実力になるって思ってたけど正々堂々と戦わない相手と戦っても意味がないわ。あんた結局はこういう小細工みたいな事をしてフランシスカさんを倒したんでしょ? 自分は戦わないでこの変な物に指示をして戦っていた。まああんたが召喚士(サモナー)だったっていうのは意外だったけどね。生憎私は戦い方には拘るタイプなの。だから卑怯なあんたとは正反対の位置にいる」


 エニグマは勝利を確信した笑みを浮かべた。


「私は昨日見たあの男の人のように堂々として魔法を使う人が好き。そして憧れでもある。あの人のように自信を持って公に使う事は出来ないけど、私は私なりの魔法の使い方で最強になってやるんだから!」


 その瞬間、エニグマの周りに大規模な魔法陣が出現した。


「ふっ、あいつやっと攻撃する気になったのか。やっぱりあいつは恐ろしいな。あの魔法陣の規模からしても最高位クラスの魔法をぶっ放すつもりだ。一瞬であの魔法陣を展開できるのはやはり天才としか言いようがないな」


 フランシスカは攻撃する気になったエニグマを見て嬉しそうに笑った。


 そして気持ちが高ぶったエニグマもソウタに向けて一言。


「じゃあな、です」

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