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089.討伐隊への誘い

「お、来たか」


 ギルド本部のマスター室。

 ギルドマスターであるアルバドールが基本的に使用している部屋だ。

 執務室のような場所であり、基本的にはここで書類の整理や事務仕事などをやっている。

 アルバドールは椅子に深く腰を掛け、手招きをしてソウタを呼んだ。

 

「それでアルバドールさん、話したい事って?」


「単刀直入に言う。ソウタ、俺の討伐隊に入らないか?」


「討伐隊……ですか?」


 なんだそれという顔をしていたソウタの隣にいたフランシスカ。

 彼女は不思議そうな顔をしているソウタを見て代わりに説明を始めた。


「お前、昨日のストロングモンスターを見ただろ? 最近は神出鬼没にストロングモンスターが現れは消えを繰り返していてギルドとしても困っているところなんだ」


「あのレベルの魔物が神出鬼没に……? そりゃあ大変だね。

でもギルド総出で全力で対応すれば何とかなるんじゃないかな?」


「そりゃあそうしたい所ではあるが、ギルドの冒険者にも限りはあるし、全員が全員ストロングモンスターと対峙出来る実力を持っているわけじゃないだろ? そんな中で私のような実力者を含め、実力ある者たちがあっちこっちに討伐しにいってはここが薄手になる。薄手になればいざというときに対応が出来なくなるから困っているんだ」


「なるほど、つまりは各所で急に出現するストロングモンスターを処理するためにギルド周辺、もしくはよく出現する地点に拠点を構えてすぐに対応できるような人材が欲しい。という事ですか?」


 アルバドールはソウタが口に出したことに感心した顔で頷いた。


「理解が早くて助かるな。そう言う事だ。フランシスカちゃんが言った通りここで動かせる冒険者にも限りがある。そこで俺が見込みを着けた何人かの冒険者と一緒に出現する警戒エリアに拠点を構えてもらってすぐに対応するべく組んだのが俺直属の討伐隊という事になる」


「でも討伐隊に抜擢されるって事は、このギルドの中でも上位のランクの冒険者たちですよね? 却ってギルドの外に出したら何かあったときに本部の方へ駆けつけるのが遅くなりませんか?」


「なに、ストロングモンスターを討伐するだけってのが仕事じゃない。拠点付近の魔物の掃討や村や街の治安維持のための自警団的な役割も持ってもらう。そうする事で討伐隊が駐留している付近の安全は確保できる。討伐隊はギルドを中心に広がって貰っているから、ここで何かが起こる前に討伐隊が厄介ごとを処理してくれるっていう寸法よ」


「なるほど。となると僕が討伐隊に参加するってなった場合、何人かの冒険者とパーティを組むって事になりますよね?」


「まあそういう事だ」


 ソウタは焦った。


 まだ全然ギルドにも馴染めていないのに、これから討伐隊に入った場合ほぼ初対面の人と一つ屋根の下で一緒に生活しないといけないのかと。

 それにソウタはこの世界に存在している自分が作ったキャラクターに会ってみたいという一つの目標的な物もある。討伐隊に入ったとなればしばらくは自由に動けないだろうし、どうした物か……。


 だが、ロイヤルナイツになるためには東エリアを統治している破壊の聖女に認められなければ【ロイヤルフェスティバル】の参加資格も与えられない。


 これはチャンスだ。ソウタは気持ちを切り替えた。

 創造の聖女が創造空間(クリエイトエリア)で言っていた事が本当なら、いずれにせよ聖領国にいかなければならない。だったらこの機会を存分に利用して名を挙げて見せる。


「わかりました。討伐隊の参加、承諾しますアルバドールさん」


 アルバドールはソウタの返答にニヤっと笑う。

 まるでこの答えを想定していたかのようだった。


「そう言うと思ったぜ。だからあらかじめ何人かに目星はつけておいた」


「僕が承諾するって分かっていたんですか」


 ソウタは若干引き気味だ。

 勝手に話が進められてたのには少しだけ動揺したが、どの道これから討伐隊として生活していくのには変わりがない。逆に自分で探す手間が省けて助かった。


「それでアルバドールさん、その人たちとはどこに行ったら会えますか?」


「なに、もうすぐここに来るはずだ。待てば分かるさ」


 数秒後、アルバドールの言う通り、部屋の外で声が聞こえた。


「ギルドマスター。Bランク冒険者のエニグマです」

「……」


「来たか」


「……ってほら! あんたも黙っていないで名前いいなさいよ!」


「……イ、イリュー……です? 宜しくお願いしますです?」


「ちょっと! 変な挨拶しないでしっかりしなさい!」


「???」


 扉の前が騒がしいが、ソウタは扉の前にいる人物の名前を聞いた瞬間から背筋をピンと伸ばし胸を張って出迎える準備を始めた。


「二人とも、入れ」


「失礼します」


 マスター室の扉が静かに開かれる。


「やあ、エニグマ。元気してた?」


 エニグマはソウタの顔を見た瞬間、顔を隠すようにして180C°方向を変えた。


「失礼しました」


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