088.打ち明け●
「――して、どうしてお前は私の事をしっているんだ?」
ソウタは謎の少女……。いや、フランシスカに問い詰められていた。
抵抗できぬまま引きずられ、物置小屋のような場所に連れてこられた。
投げられる形でソウタは地面へ座り込んだ。
「どうしてって言われても……。君は君じゃないか」
「そこか問題なんだ。いいか? この際だからもう隠さずにいうがな、私は誰一人として他人に素顔を晒していないんだ。なのにどういう訳かお前は私の顔を知っていた」
さらにフランシスカは続ける。
「それにお前は"普段の姿"だと言ったな?
なぜお前がその事まで知っているのか洗いざらい話して貰おうか?」
フランシスカに詰められ、ソウタはどうするべきかと考えた。
確かに設定上のフランシスカは誰も装備したがらないような重い鎧に加え、大の男が全力を出しても振りかざすので精一杯な武器であるバリアブルスを軽々と扱う。また、"普段"のフランシスカは年齢の割には子供かと思われるような童顔をしていて、背丈も低い。それ故に、自分に憧れてくれている人たちをがっかりさせたくない思いから、自身の能力である【変幻自在】で体の大きさを変えて、装備に見合う風格を出していたのだ。
ソウタはこの世界では、確かに自分が創り出したキャラクターや、その設定などが反映された人物が存在しているのは把握したつもりだが、いつも頭から抜けてしまう事がある。
それはこの世界では、創ったキャラクターは一人の人間として生きている事だ。人格や、より深い人間的な部分は創造主であるソウタを持っていしても理解するのは難しい。
まさかフランシスカが誰一人として素顔を見せていないとは、思わなかった。
まだまだ作ったキャラクターへの愛がないなの実感してソウタは目に涙が溜まった。
情けなかった。自分のキャラへの愛はこんなものなのかと。
フランシスカの深い部分まで理解できてないなかった事実が悔しすぎた。
「ごめん、ごめんな……フランシスカ」
「なっ!? お、おい! 何も泣くような事じゃないだろ!?」
フランシスカは言いすぎてしまったと、後悔した。
腰を落とし、落ち込んでいるソウタに目線を合わせる。
するとフランシスカはソウタから強く両肩を掴まれる。
「僕は全然君の事を分かっていなかった! 僕は(創造主として)失格だ!」
「私は何も人間失格だなんて一言も……!」
「いいや、僕は分かっているつもりになっていただけだ!
まさか君が誰にも素顔を晒していなかっただなんて……」
「ま、まあ落ち着け! 幸いにも素顔がバレたのがお前で良かったというか何というか。逆に知ってもらえて良かったというか何というか……。もとより私は後々お前に顔を見せようと思ってた部分もあるというか何というか……。つ、つまりはだ! ソウタ、別にお前に顔がバレたのは対して問題じゃないんだ! ただ、どうして私の事についてそんなに詳しいのかを聞きたい!」
ソウタはどうするべきか考えた。
今日みたいに、自分が作ったキャラクターに会った時や、本人がまだ見せていない一面をポロっと口に出してしまった時、まず最初に疑いの目を掛けられ、なぜそれを知っているのかと尋問が始まる。エニグマの件もそうだった。
あの時もエニグマしか知りえない【ロビン】の事を口走ってしまった。
後々面倒な事になるより、何故知っているのかを話した方がいいかもしれない。
だが、話したら気持ち悪がられるかもしれない。
自分がこの世界の人間ではないということ。
そして、別の世界で君たちを作った本人だと告白する事。
……全てを言えるわけではないかもしれない。
だが、良いタイミングだ。
なぜ知っているのかと問われている今の状況。
もう隠して言い訳を考えるのも疲れて来た。
腹を割って言えるタイミングが訪れたのかもしれない。
ソウタは目を閉じ、呼吸を整える。
そしてキリっと瞼を開けた。
「ど、どうしたんだ?
今度は急に改まったような顔をして」
「実はね、フランシスカ――」




