075.光の中からこんにちは
三本の光の柱は突如としてコロセウムの中心へと降り注いだ。
それぞれの光の柱の中に人影が見える。
だが人が降り立ったとなると、かなり危険な状況この上ない。
三人が降り立った場所は今まさに強力な攻撃がぶつかり合う場所。
とてもじゃないが無事では済まされないレベルの攻撃が放たれようとしている。
そんな中、一際おおきい光の柱から一人の女性が姿を表す。
ふわりと広がる薄緑色のロングヘアをなびかせながら。
ゆったりとした白と緑を基調にした高級そうなドレスに身を包む。
いや、おしとやかという言葉が服を着ていると言ってもいい。
第一印象としてはとてもおだかやそうだ。
目を閉じながら、ニコニコしている。
そして優雅に歩きながら一言。
「……あなた達、ここを破壊する気なんですか?」
「!?」
表情とは真逆の、冷たい声色でそう呟く。
その姿を見た瞬間、ルミエルは全ての武装を解除した。
そしてすぐさま片膝をつき、頭を深く下げる。
続くようにして二人目が光の中から姿を表す。
「やっほー! なんだか面白そうな事してるね!
でも程々にしないとお姉ちゃんからきつーいお仕置きがあるんだからねっ!」
とても可愛らしく明るい声で元気に登場なさった。
手をブンブンと振りながら挨拶をしてのご登場。
彼女もまたツヤのあるふんわりとした長い桃色の髪をなびかせる。
左右の瞳の色が違う。右目が黄金色、左目が紫色の瞳。
いわゆるオッドアイといわれる珍しい瞳をしていた。
いかにも元気っ娘というタイプだった。
一人目の女性と違い、こちらはかなりラフな格好だった。
いや、ラフというよりは肌が見えている面積が大きいというべきか。
一応ドレスと言っていいのだろうか?
それっぽい服で身を包んでいる。
だがスカートの丈は短く肩も見えている。
胸元もゆるく、余裕で谷間が見えるレベルである。
当の本人は何も気にしていない様子だが。
そして三人目が……。
――?
「あれ? おーい、エルヴィナお姉ちゃん?」
「あらあら。仕方のない子ね。
エルヴィナちゃんの事だからら何か面白い事でもみつけのかも?」
「えー!! ズルいズルい! 抜け駆けだよそんなの!
私だって久しぶりの外出だもん、どこか行きたーい!」
「エリシアちゃん、忘れたの? 私たちがここに来た理由」
「む~! 分かってるけどエルヴィナお姉ちゃんだけズルいよ!」
「エルヴィナちゃんはあの子なりに何か理由があってどこかに行ったはずよ。
あなたみたいにただ遊びに行きたいだけじゃないと思うわよ」
「なにそれ!」
「さて、この話はまた後で。
それよりも優先すべき事があるでしょ?」
おしとやかの方な女性がチラりとルミエルを見た。
「ルミエル。あなた、何をしているのですか?」
「……も、申し訳ありません。システィーナ様」
「はぁ……。まあいいです。
後で事の経緯は聞きますが、そこのお二方」
システィーナと呼ばれた女性に、ロヴァートとソウタが呼ばれた。
「あなたはロヴァートですね? 噂は常々聞いています。
モンクの道を究めて類まれない戦闘技術を持っているとの事で」
「おう、そりゃあどうもな」
「そしてあなたは……。誰でしょうか?」
「あの! すみません! ちょっと全力出しすぎて制御できそうにないのでそれどころじゃないんです! そこをどいてください!!!」
ソウタはクレアールの力をまだ完全に制御できているわけではないので、放出した力を制御させる技術がまだまだ甘い。
もうほぼマナを放出させようとしている状況なため、名前を名乗る余裕もなかった。
今はただひたすらクレアールの制御に手一杯だ。
そんなソウタの様子を、システィーナは興味深そうに見つめる。
(あの方のマナ……。あれは一体……?)
慌てるソウタとは対照的に、ロヴァートは落ち着いていた。
拳に風を纏わせながらシスティーナをジロジロと見ている。
「なになに~? お姉ちゃんの事エッチな目で見ちゃって変態さん?」
エリシアは口に手を当て小悪魔的な笑いでロヴァートをからかう。
「うるせえガキ」
「んなっ!?」
軽くあしらわれてしまった。
「それよりもあんた、システィーナって呼ばれてたか?
どこかで聞いたことがあるようなないような……?」
「立場をわきまえよ! このお方は……!」
ルミエルは慌てた様子でロヴァートに荒げた声で何かを言おうとしたが。
「まあいいや、悪い。俺もマナの制御できねえから避けてくれ」
そのまま拳を前へ突き出した。
「ぐっ……! 僕もマナの制御が……!
すみません、全力で避けてください!!!!」
その瞬間、ソウタとロヴァートから超高密度なマナの放出攻撃が行われた。
「いけない、いくらシスティーナ様でもあの攻撃は!」
「面白そうなのが見れそうなの。邪魔をしないでくれないかしら?」
それを止めに入ろうとルミエルが咄嗟にシスティーナの元へ駆けつけようとしたが、その動きを何者かの手によっていとも簡単に止められてしまう。
(私の動きをこうも簡単に……!?)
「システィーナ様!!!!!」




