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キャラクリしてたら異世界に飛ばされた件について。 ~僕が作って来たキャラクター達が異世界で最強でした。加えて僕が持っている【創造】の力も万能すぎて困ってます~  作者: うさぎ五夜
~第2章 死を運ぶ少女~

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25/108

025.個性○

 中は想像以上に広かった。


 中央に大きな湯船があり、複数の立派な石造が飾られている。湯船の真上には大きな天窓があり、夜になると星空が一望できそうだ。お風呂と星空、実に見事な組み合わせだけど、覗こうと思えば上から覗けそうだな、これ。


 あとは奥に進んだところに、露天風呂らしき場所もある。のんびりと外の空気を吸いながら、ゆっくりしたいときは露天もありかもしれない。


 一通り全体を見たけど、かなり綺麗な作りをしている。大きくて立派な柱が天井まで伸びていたり、ライオンの石造の口からお湯が出てきたりと、豪華仕様だ。

 

 かなりお金がかかっていそうだな。

 流石、無駄にデカいだけの事はある。


「こっち。ボーっとしないで体を洗え」


 リリーシェがちょいちょいと手招きしている。


 相変わらず目のやり場には少しは困るけど、言われるがままにリリーシェのもとに向かい、体を洗う事にした。


 ……どうやって体を洗うんだろう。僕の前にはぷかぷかと浮かんでいる謎の球体があるだけで、それ以外には何もない。


「リリーシェ、どうやって体を洗えばいいの?」


「手をかざす。マナの情報を本部の魔水晶に登録してあるなら、ソウタのマナをその球体の中にある魔水晶が識別して水が出てくる」


 ずっと思っていたけど、魔水晶って本当に万能だなぁ。一つあるだけで、様々な用途で色々な事が出来る。現実世界でいうところの、スマホやパソコンみたいなものだな。異世界版なんでも出来るぜ万能機械とでも呼びたいくらいだ。


 リリーシェの指示通りに魔水晶に手をかざすと、光がそれを包み込み、しばらくすると冷たい水が出て来た。反射的に「つめたっ!」と言葉を発してしまった。


大仰(おおぎょう)。そんなに冷たくない。むしろこれが普通」


「えぇ!? だいぶ冷たいんだけどなぁ……。リリーシェ、水の温度の調節方法ってないの?」


 僕の質問にリリーシェは、ハっとした顔をして質問を返した。


「存在する。でもやり方は簡単。もしかして、ソウタはこういう魔道具を扱った事はないのか?」


「全然触ったこともないよ。この魔水晶だって最近になって初めて見たからね」


「納得。なら扱いがわからないのも、無理もない」


「それで、どうやって温度の調整をするの?」


 リリーシェが浮いている魔水晶に手をかざした。

 特に変化がないように思えるけど、何かしたんだろうか?


「単純。こうする」


「うん。どうするの?」


「簡単。だからこうする」


 いや、だからどうするんだ! 全く分からないよ、リリーシェ!


 そんな、やり切りましたって顔されて見つめられても、僕には全然やり方が伝わっていない。やっぱり少しだけ抜けている所があるな、この子。


 試しにリリーシェのほうにある魔水晶から出ている水に手を当ててみたけど、僕が出した水と全く同じ温度だった。普通に冷たい。


 よくこんな冷たい水を浴びれるな。僕なら速攻で暖かい水にするレベルだ。


「リリーシェ。全然暖かくないよ、この水」


「当然。私のマナには炎の性質がないから、暖かくは出来ない。あくまでも、やり方を見せただけ」


 炎の性質……? またよくわからない単語が出て来たけど、僕の推測が正しければ、これはおそらく、魔法の属性に影響が出てくる要素だろう。

 マナの性質というか、属性によって扱える魔法とかが違ってくるんだろうな~とは考えているけど、考えたところでどうしようもない。


 だって、よくよく思えばあの一件以来、魔法……というよりサザンクロスを使った事がない。と、いうよりも使ったら駄目レベルの威力だから使えないって言うのが正しい。


 あれは魔法に似ているけど、スキルだから魔法と言っていいか分からないし、そもそも偶然出せただけだったから、次使う場合はどうやって発動させれば良いのか分からないから、マナとか魔法の事を今考えたところで仕方が無いんだ。

 

 それよりも僕は暖かい水で体を流したい。


「リリーシェ、どうしても暖かい水を浴びたいんだけど、やっぱり炎のマナの性質がないと暖かい水は出せないのかな?」


「マナの性質が炎なら、魔素と練り合わせて(・・・・・・・・・)魔水晶に魔力を送り込んだら暖かい水は出る。でもないなら炎のマナが埋め込まれた魔道具をギルドが売っているから、それを使うのが一般的」


 魔素と練り合わせるってどういう事だろう。


 もう色々と分からない事が多すぎて頭が痛くなってくる。はやくこの世界の知識を身につけないと、ここでやっていけそうにないから、お風呂から上がったら早々にシラユキに分からない事を全部教えてもらわないとなぁ。


 というかギルドもギルドで粋な商売をしやがってー!

 最初から温度くらい調整可能にしてほしいのに、ケチな機関だなぁ。


 でもまあ、これだけの施設を無料で使わせてもらっているから、ケチとかそういう愚痴を言える立場じゃあない。


 脳内で愚痴のような事を呟いていると、リリーシェが「そんなに暖かい水を浴びたいのか?」と話しかけてきた。可能であれば僕も暖かい水で体を流したいけど、無理なものは無理だからどうしようも出来ない。


 ただ、話しかけてきたって事はなにか期待をしても良いのだろうか?


 僕はリリーシェの問いかけに答えた。


「可能であればね。でも無理なら冷たい水でも我慢して浴びるよ」


「禁則。本当はダメだけど、今回は特別に私の許可で暖かい水を使わせてあげる」


 そういうとリリーシェは中央にある湯船の方に体を向け、両手を下から(すく)い上げた。


 リリーシェが何かを掬い上げる動作をしたと同時に、湯船から大量の水が宙に浮かび上がり、リリーシェが僕の方に体を向けなおしながら、「えい」と一言。上げていた腕を振り下ろした。


 ……凄く嫌な予感がする。


 僕の予感は見事に的中し、僕が思っていた通り、リリーシェに掬い上げられた水が一気に僕めがけて飛んできた。


 お腹から勢い良く水面に着水したときのような音がお風呂場全体に鳴り響く。


「完遂。ソウタ、これで満足した?」


「水は暖かいけど、リリーシェの対応は凄く冷たかったかも」


「ソウタが暖かい水が良いっていったから浴びさせてあげた。何か問題あった?」


 首を傾げながら、リリーシェが不思議そうに質問をしてきた。

 リリーシェにとっては悪気のない行動だったかもしれないけど、これが当たり前だと思っているのかな?


「いや、大丈夫だよ。ありがとね」


 リリーシェの常識からかけ離れたような行動は何度か見て来たから、リリーシェはこういう子だと思い切ったほうが良いかもしれない。でもずっとこのままだと、やっぱり人付き合いとかの面が凄く心配になる。


 リリーシェと仲良く? なれたからこれを機に、僕がリリーシェの抜けている部分や一般常識なんかを教えて行こう。


「リリーシェ、僕のわがままに付き合ってくれたから、気持ちは嬉しかったんだけど、もう少し優しくしてくれたら、もっと良かったかな」


「優しく? いつもアーニャにも言われているけど、私にはそれがよくわからないんだ」


 優しさがわからないか。リリーシェがどういった環境で育って、どういう教えを受けて来たのかを教えてもらうのは、今この段階では踏み込む領域じゃないな。もっとじっくり時間をかけてから踏み込むべきだ。

 だったら、まずはリリーシェがどういう倫理観を持っているのかを確認しよう。


「……そうなんだ。じゃあ例えば偶然通りかかった場所でモンスターに襲われている人がいた場合、リリーシェはどうするの?」


愚問(ぐもん)。モンスターを見たら殺す選択肢しかない」


 あれ、意外にも普通の回答だな。言い方はちょっとアレだけど、てっきり無視するものかと思っていた。やっぱりAランクの冒険者ってだけあって、そこらへんの考えはちゃんとしているんだな。

 僕の方がリリーシェに対する見方を変えるべきかもしれない。


「意外だなぁ。リリーシェなら助けるのを無視するのかと思っていたよ」


「助ける? いや、モンスターの素材を手に入れるために殺すだけ。もしそこに人がいたなら、そのついでに助けた事になると思うけど」


 この子、冒険者だよね!?

 そういう価値観でモンスターに襲われている人を助けるの!?


「リリーシェ、冒険者とかなら、まずは人を助ける事を優先するべきじゃない?」


「無理解。そのシチュエーションだと、私は人を助けるという考えには至らない」


「どうして?」


「理由を聞かれても、私がそう思っているから助けない」


 思った以上に倫理観と価値観に問題があるかもしれない。

 これが個性といったら個性と言い張れるけど……。本当にそれで済ましちゃっていいんだろうか。


 僕が難しい顔をしていると、リリーシェが口を開いた。


返報(へんぽう)。ソウタが助けを求めるなら私は助けにいく」


「どうして僕を?」


「私は受けた恩は返す。ソウタは体力が尽きた私に回復魔法をかけてくれた。つまりお前は私を助けた事になるから、私はその恩には応える。……あと私は個人的にお前の事が気に入ったからな」


 リリーシェが矢で射貫くかのように、真っすぐな瞳で僕の顔を見つめてそう言った。 最後に何かボソボソ言いながら目をそらしていたけど、僕の耳を持ってしても聞き取る事ができなかった。


 良い意味でも悪い意味でも、純粋なリリーシェの言葉だからこそ、その言葉には一転の曇りもなかったように感じた。


 行動こそ問題があるように見えるけど、それがリリーシェという一人の人間なんだ。リリーシェという一人の人間の個性であり、キャラクターとしての設定なんだ。


 あぁ、愚かしい。キャラクターを幾度となく作って来た僕が無理やり設定を書き換えるような行為をしてまで、リリーシェという一人の少女を我が物みたいに理想の人物に変えようと思っていた事に身震いしてしまう。


「寒いのか?」


 僕が自分のしていた行動に震えていたら、リリーシェが寒がっていると思ったのか、もう一度大量に掬い上げたお湯を僕めがけて飛ばしてきた。


「暖かくなった?」


 やっぱりちょっとだけは、一般常識というか人との接し方を教えておくべきかもしれない。

【魔水晶】

マナの情報を保存する事ができる魔道具。

用途は様々あるが、基本的な使い方として生体認証のような使われ方が施されている。主に王宮や非常に重要な場所(転移の扉)などを守るセキュリティを担っており、魔水晶に保存されていないマナ情報の人物を通さないといったようなセキュリティ対策が取られている。



【ついったー】

ここに書くのはどうかと思いますが

twitter開設してました。


【@Usagi_San1203】


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