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キャラクリしてたら異世界に飛ばされた件について。 ~僕が作って来たキャラクター達が異世界で最強でした。加えて僕が持っている【創造】の力も万能すぎて困ってます~  作者: うさぎ五夜
~第2章 死を運ぶ少女~

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019.ちょっとした揉め事

 シラユキの不意打ちをくらってそのままの勢いで冒険者ギルドの方へ来たけど、改めて全体像を見ると本当にデカいなぁ。たくさんの冒険者が出入りしている。王都を活動拠点にしている冒険者たちだろうか? 装備とかもしっかりしていて、いかにも強そうだ。


 入り口の方まで伸びるようにして建っている立派な柱に挟まれた道を渡り、ソウタは冒険者ギルドの中に入った。


 中に入ると広々とした空間が広がっていた。冒険者たちが綺麗に並べられているテーブルセットで談笑している姿や、パーティを組んでいるであろう冒険者たちが楽しそうにご飯を食べている光景も目に飛び込んで来た。


 これが本部。明らかにアリエルの街のギルドとは比べ物にならないほどの大きさだった。この建物は軽く数えるだけでもおよそ八階建てくらいはあるだろう。

 ギルドが提供している冒険者の部屋もたくさんある。

 絶対部屋とかきれいだろうなぁ。


 ギルドの入り口から真っすぐ進んだところに、受付カウンターのようなものが二つ見える。あそこで冒険者登録やクエストの依頼を受けるのかな?


 ……どっちの受付で冒険者登録をするんだろうか。

 ソウタは受付の窓口が二つあるのに気が付いた。

 右のカウンターは人がたくさん並んでいる。

 恐らく混み合っているのをのを見る限り依頼の完了報告に来ているのだろう。

 だったらまずは左の方に行ってみるか。



 ソウタの読みは当たっており、左側の受付では冒険者の登録が行えるらしい。

 だがそれよりもソウタはそこでキャラクリエイターとしての目が光った。

 そう。受付嬢が異様に可愛いというか、結構な好みだったのだ。

 ソウタの好きな髪型の一つであるサイドポニーテールだ。

 それも結んだ髪を肩にかけているのもグッド! 

 顔だちはお姉さん系だけど、どこか幼さが残っている。


 うんうん! 僕がが作っていてもおかしくない見た目をしているな!

 故に惜しかった。この人が自分が作ったキャラクターじゃない事が。


「あの~、どうなさいました?」


 受付嬢はカウンターの前で何もせずにジッとこちらを見つめているソウタを不思議そうな目で見つめていた。しかしいくら待っても言葉一つ発しないので声を掛けて来た。


「うわあ! 違います!

決してあなたに見惚れていたわけではありません!」


「ナンパですか? だったら回れ右して入り口の方へお戻りください」


「はっ!? 違うくて……え~となんというか」


 思っていたことが口に出ていた。

 ソウタはいきなり声を掛けられて背筋がピンと伸びてしまった。


「えっとですね……え~と」


 受付嬢は若干呆れたような顔をしているが、一応はこの道のプロなのだ。

 迷惑なお客様の対応も粗相なくこなさなければいけない。


「ここに来たって言う事は冒険者登録をするためだと思うんですけど、もしかして違いますか? それとも個人的に私に何か聞きたい事があって来たんでしょうか? でしたら知っている範囲でお答えしますよ」


「胸のサイ……」


「はい?」


 おっとりしたトーンで優しく話しかけるものだから、なんとな~く人柄的にこの人なら答えてくれそうっていう卑しい考えがあったけど、流石に駄目だった。でもソウタは幾多のキャラクターの胸を設定してきたん。その慧眼によればこれは……。


「84」


「え~っと?」


「こちらの話です。気にしないでください」


「わかりました?」


 なんかすごい不思議な目でソウタのことを見ている。意味不明な言動で困惑させちゃったみたいだから、はやくここに来た理由を話さないといけないな。


 この受付の人は、冒険者登録をするために来たんですか? って言っていた気がするから、きっとここで登録が出来るはず。なら早速【闘技登録】でAランクに飛び級をしよう。


「いろいろ変な発言をしてしまって申し訳ありません。ここに来たのは冒険者登録のためなんですけど、受付はここでしょうか?」


「はい。こちらで冒険者登録の受付は行っています」


「なら早速なんですが、闘技形式で冒険者登録をお願いします」


「闘技形式ですね、かしこまりました。ただ現在はBランクの試験官の方が、先ほど試験を終わらせたばかりなのでBランクの登録をするのでしたら少しだけ時間をいただくと思いますが、何ランクから登録をするおつもりでしょうか?」


 (なるほど、受けたいランクに先客が居たらこんな風に待たされる事があるんだな。さすがに試験官ともいえど、連続でやるのは中々ハードってわけだ)


 ソウタは受付の人に「Aランクでお願いします」と告げたが、本当にいいんですか? という声が聞こえてきそうな神妙な面持(おもも)ちでこちらの顔を伺って来た。


「あの、何か問題でもあるんでしょうか?」


「あ~、え~っとですね……。その~、Aランクの試験官さんはちょっと危険というか何というか……。なんならSランクに挑戦した方が安全って言われているほどなんですけど……」


 (え、なにそれ!? Sランクの方が簡単ってどういう事だ!? 普通ランクが高いほど試験官が強くなって簡単には登録させないようにするんじゃないのかな?)

 

 まあいいや。深い事は考えないようにしよう。

 わざわざAランクよりもSランクの方が簡単だと言っているんだ。

 それにAランクは受付嬢が止めるほど危険らしいし、だったら答えは一つ。


「だったら、Sランクでお願いします」


「いや~そのですね、Sランクの試験官さんも大変お強いかたなので、そう安々と倒せる相手ではないんですよ」


「そ、そうなんですか……」


 ソウタにとってはAランク以上からしか挑戦権がない。

 だがなんという事だ。Aランクは危険だから避けろと言われ、かといってSランクは普通に強いからオススメしないと言われている現状だ。


 まあ、普通そうだだろう。普通CとかBランクあたりで手堅くいくのが定石だとソウタも思っている。だが転移の扉を使うためにはAランク以上で冒険者登録をしないと駄目だ。だからどうしてもソウタにはAかSかの二択しかないのだ。


 (ん? 待って待って、そもそもどうしてAランク以上になろうとしているんだっけ? この世界に飛ばされてから別に住む場所とか決まっているわけじゃないし、別にAランクに固執しなくても良いような……。でもAランクになればシラユキと一緒に各地を転々と回れたり、転移先で僕が作ったキャラクターに会えるかもしれないっていうメリットがあるのか!)


 だったらAランク以上に挑戦したい。

 だが試験官を倒せなかった場合ってどうなるのだろうか。


「もしAランクやSランクに挑んで落ちた場合って再試験は可能なんですか?」


「残念ながら再試験を行うには半年ほど時間を空ける必要があります」


「ですよね~」


 やっぱりそうだよな~。落ちてもすぐ再試験を受けるってなると、ギルド側も調整が大変だろうし、何よりそんなポンポンと受けさせると試験官の負担が大きいはずだから妥当だな。


 やっぱりそう考えると闘技登録は、腕に自信のある人が手っ取り早くCランクかBランクになるためにある試験と考えても良いな。AとSを受けて落ちるくらいなら誰でもそうするだろう。


 王都に在住っていうのも悪くはないが、生憎(あいにく)都会的な場所よりもアリエルの街みたいな落ち着いた場所が好きだ。だからさっさとAランクになり転移の扉を使えた方が良い。


「決めました。Aランクの闘技登録をお願いします!」


「……少し危険ですが、わかりました。

ではこの魔水晶に手をかざしてもらえますか?」


【魔水晶】。確か転移の扉を使う際にもこれに【マナ】を流しこむとか何とかってシラユキが言っていたけど、どうするんだろうか。


 言われた通りに手をかざしてみたけど、特に何も感じない。


「これは何をしているんですか?」


「魔水晶の事はご存じありませんか?」


「お恥ずかしながら、無知なもので」


「いえいえ、無理もないですよ。普通に生活している分にはあんまり見る機会も触れる機会もないですから」


 一通り説明してもらったけど、なるほど。魔水晶というものは、生体認証を行う際によく使われる魔道具のような物だ。【マナ】と呼ばれる力の情報を魔水晶に記憶させて、本人かどうかを識別する事が出来るみたいだ。


 低位の魔水晶から上位の魔水晶があるらしく、どれもマナの情報を保存するという役割は変わらないが、上位の魔水晶になればなるほど、マナの保存情報の保ちが長いらしい。最上位にもなればほぼ永久的にマナ情報が残ったままなんだとか。


 冒険者ギルドがこうやってマナを登録させるのは、再試験を行う際に一定の期間を本当に過ぎたかどうかを、マナ情報が魔水晶に残っているか見て判断するためらしい。


 冒険者ギルドが保有している魔水晶は半年で情報が消えるらしいから、試験に落ちたからといって見た目や名前を偽ってもう一度受けようって思っても、魔水晶に自分のマナ情報があるから不正が出来ないってわけだ。しっかりしている。


 あとは主に王宮などの重要な場所や、貴重な物が保管されている場所に使われているとか。転移の扉もその類だ。セキュリティ対策がしっかり取れている。


 ただ、物凄くお高いから一般的にはあんまり使われていないらしい。


 ――説明を聞いて、マナという単語を何回も聞いたけど、まだ【マナ】と言うものは良くわからないから、シラユキに教えてもらわないとな。


「こ、これは……」


 受付嬢が驚いている様子を見せている。どうしたのだろうか。


「どうしましたか?」


「すみません、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


 あ、名乗り癖がないからいつもこういうタイミングで言われるな。

 今度こそ、次こそ、絶対に先に名乗ろう。


「僕はソウタって言います。それでどうしたんですか?」


「それがですね、ソウタ様の魔力……。というよりもマナの事なんですが、今まで見た事もないような性質でして……」


「どういう事ですか?」


「はい。マナは基本的に破壊、慈愛、智慧の三系統の始祖の力が元になって出来ている力なのはご存じですよね?」


「はい」


 嘘です、見栄を張りました! 初めて知りました!

 でも偶然だけど、マナについて知る事が出来そうだ。


「その三つの力が混ざり合ったような力がマナなんですけど、ソウタ様のマナは……なんというかそれ以外にも何か有るような無いような。とにかく普通のマナの性質じゃないんですよ」


「それだと、何か問題があるんですか?」


「そうですね……。普通ではありえない事なので私ではどうしたらいいのか……。一度ギルドマスターに報告してみようと思います」


 まさか【創造】の力が関係しているのだうか? 

 だとしたら、これが知れ渡るのは少しばかり厄介だ。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 別に報告する必要はないと思います! 実は僕、異能(タレントスキル)持ちなのでそれが影響しているのかもしれません!」


異能(タレントスキル)持ちだとは言え、普通はマナの性質がこれほどまで変わるという事はありえないんですよ!? あぁ、やっぱりここはギルドマスターに……」


「お願いします! ちょっとこれが知れ渡ったら厄介事が起こるかもしれないので、僕とあなただけの秘密にしておいてくれませんか! もしくは見なかったことにしてください!」


「でも、他に例を見ないマナの性質を保存している魔水晶を管理するなんて、私も怖いですって!」


「僕もそれが知れ渡るのが怖いですって!」


「私もそれを管理するのが怖いんです~!」


「未知の力だなんて大げさですって! 僕、ここで魔水晶を使うまで自分にそんな力がある事なんか微塵(みじん)も知らなかったんですよ!」


「でも! もしかしたらそう言って油断を誘っておいて、その力で悪さとかするかもしれないじゃないですか~!」


「しーまーせーんー!」


「す~る~か~も~!」


 ソウタと受付嬢はお互いに手を伸ばし合い、魔水晶を取り合う形で喧嘩のような何かをいつの間にかおっぱじめてしまっていた。少し恥ずかしいけどソウタの身を守るためにはこうでもしないと!


「本当ですって! もしかしたら魔水晶の故障かもしれないじゃないですか!」


「なんですか故障って! そんな簡単に魔道具は故障なんてしませんよ!」


「ぐっ、わからずや!」


「ソ、ソウタ様こそ!」


 いつの間にか周囲には騒ぎを見て駆けつけて来た冒険者がチラホラといた。あんまり大事(おおごと)にはしたくない。

 だがこのままじゃあ、そのうちギルドマスターとかも出てきちゃうんじゃ……。


「お願いします受付嬢さん! 僕、その未知の力とやらで絶対に悪さとかしないって神に誓ってでも言えますから! ソウタたちだけの秘密にしてくれませんか?」


「神に誓っても……ですか?」


 お? 苦し紛れの言い訳だけど、意外に通用しそう。


「はい! もう心の底から神に誓います!」


「……そこまで言うなら、信じてあげなくもないですが」


「受付嬢さ~ん! わかってくれたんですか!」


「……ですが、やっぱり少しだけ気になりはしますよ? だってもしこれでソウタ様が悪事を行ったりした場合、私の管理責任が問われるんですからね」


「安心してください! 絶対にそんな事はしません! 神に誓います!」


 少しくどかったのか、本当に神に誓っているの? とでも言いたそうな顔をし始めた。ジト目、というんだろうか。とにかくさっきより若干だけど疑われてしまっている。


 そう思っていた時。


 ドサッ!


 (――うおっ! なんだ!?) 

 誰かがソウタの背中に飛びついてきた。


「アーニャ、心配はいらない……。怪しいのなら私が確認するだけ」


 子供? 女の子……かな? 

 少しおとなしい感じの声がソウタの後ろから、というより背中から聞こえて来た。


「リリーシェさん!」


 誰だろう。ソウタは背中の子を振りほどこうと左右に揺らしたり、首に回されている手を掴んで降ろそうとしたけど、降りてくれない。首を動かして顔を確認しようとしても、ソウタの動きに合わせて顔を移動させている。


(なんだこの子!?)


「アーニャ、この人がAランクで闘技登録をしようとしている人?」


「はい! ですが……」


「問題ない。さっきも言ったけど、私がこの人と戦って確認する」


 はい? もしかしてこの子……。


「おい、男。私と戦うんだろう? だったら早く運べ」


「運ぶって……どこにかな?」


「闘技エリアに決まっている。そこ以外にどこに運ぶ?」


「あの~、場所がわからないから運べと言われても……」


「私が案内する。さっさと歩く」


 足で太もも辺りをゲシゲシと蹴られて、歩けと促された。

 

 やっぱりこのリリーシェって呼ばれていた人はもしかしなくても。

 ソウタは一つの疑問が確信に変わった。


「もしかしてリリーシェさん、試験官だったりしますか?」


「当たり前。いまさら何を聞いているの?」


 こうしてソウタは顔も容姿も分からない、子供か大人かも分からない、男の子か女の子かも分からない人をおんぶしたまま、闘技エリアなるところへ移動させられることになった。


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