013.小都市エルニアへ①○
「ドーンレアルさーん!!」
ギルドの中にソウタの大声が響き渡る。階段をドタドタと下りながら、ソウタは冒険者登録を済ませて早くシラユキと二人でイチャコラしたいと考えていた。
「お、ソウタじゃねえか。ハッスルしすぎてベッドは壊してないか?」
ベッドで抱き合いまではしましたがその後はまだやってませーん! という冗談を言いたい気持ちもあるけど、今はそんな事ではない。
「ドーンレアルさん、冒険者登録がしたいんですけど」
「あぁここじゃあ無理だぜ。というかお前冒険者登録していなかったのか」
即答。ここでは出来ないっぽい。じゃあどこでやるのだろうか?
ソウタは疑問に思い質問した。
「ここじゃあ無理って、じゃあどこでなら冒険者登録が出来るんですか?」
「まあ、早い話は王都の冒険者ギルドに行って登録することだな」
王都? ソウタが不思議に思った顔をするとドーンレアルから冒険者の登録には【ルーンベルグ王国】の首都である【王都アンファング】で冒険者の登録が出来るということを聞いた。
「早速行ってきます!」
説明を聞くや否や、ソウタはドーンレアルに感謝して、抑えることが出来ない謎にあふれ出てきている活力を使い、ギルドの入り口に向かい全力で走った。
「おいソウタ」
シラユキの声が聞こえたので即座にブレーキ。クルッと綺麗にターンをし、呼びかけに応じるようにシラユキの所へ向かった。
服も着替えている。見慣れたシラユキだ。
「お前、どこに王都があるのかもわからないのに出発するつもりだったのか?」
うっ。なんだか素っ気ない……。
ついさっきまで色々とイチャコラしていたのに、急に冷めた態度をとるシラユキを見ると嫌われたかのような感覚になるなぁ。少ししょんぼりしながら、これは仕方のない事だとソウタは自分に言い聞かせた。
「ドーンレアル。ソウタを王都まで案内する。だから当分はここを離れるぞ」
「あぁ、別に構わねえぞ。旅先ではホドホドにしておけよ~?」
そう言われると、シラユキはどこからともなく取り出した小さな魔石をドーンレアルの口に放り投げた。「ンゴガッ」という声と共にドーンレアルはその場で倒れた。恐るべし命中精度。
ギルドを開けると伝えたシラユキがソウタの元に駆け付けた。
「ソウタごめんね。人が見ている前だとあんな態度を取るけど、別に嫌いになったとかそういうわけじゃないからね?」
シラユキが小声で呟いてきた。たまらん、かわいい!
なんとも言えない感覚だ。これが"萌え"だろうか。
ソウタは感動で涙が溢れ出そうな顔にぐっと力をこめて瞼を閉じた。
「そういえばシラユキ。このアリエルの街から王都まではどのくらいあるの?」
ギルドを出て、アリエルの街の中を歩いてる時にふと気になってシラユキに質問した。ソウタの質問に答えようとして、シラユキはチラチラと周りを気にしている。
「ここから王都まではかなり遠いんだけど、実はね、私 結構優遇されていてさ、一定以上の冒険者ランクじゃないと使えないとっておきの場所から王都に移動する事が出来るんだよね」
「なにそれ?」
シラユキは質問に答えようとしたが、前方から結構な数の人が歩いてきているのに気が付き、仕方ない。という顔をして口を動かした。
「冒険者にはランクがあってな。まあ言うなれば冒険者の強さを表す階級みたいな物なのだが、私は強さは別として名前と実績だけはあるから、Sランクとして認定されているんだ」
へ~、ランクかぁ。なんかそういうの憧れちゃうな。やっぱりこういうのってゲームとかと同じで、高ければ高いほど良いものなんだなぁ。
「それで? Sランクだったらどうして王都にすぐに行けるの?」
周りをチラチラと見渡すシラユキ。それを見てソウタは「シラユキ、外だと喋り方を統一しよう」と提案した。なんだかこっちもこっちで、コロコロ喋り方変えられると調子が狂う。
……なんだか腑に落ちない表情しているな。普通に喋りたいって思っているのかな? くぅ~毎回かわいい所みせちゃってこのこの~! と肘でシラユキの腕を小突いた。
「……なんで王都に行けるかだったか?」
ついシラユキで遊び過ぎてしまった。反省反省。
「そこに着いたらわかると思うが、転移の扉という場所があって、名前の通り主要な都市や場所などに移動できる便利な魔法で作られた扉なんだが……」
「誰でも使えるってなると悪用される危険性があるから、使用するときには一定の身分を証明するものが必要って感じ?」
「そうだ、勘が良いな」
ゲームとかで学んだ知識が役にたった。
「冒険者だったらAランク以上から、商人とかだと、貴重な物品を運ぶ際に使用できる」
結構しっかりした管理されているんだなぁ。まあ主要な場所に簡単に移動出来るってなったら、悪い輩が使えばいつでも攻め放題になっちゃうから当たり前っちゃ当たり前か。
「それで、その扉ってどこにあるの?」
「近い場所だと、ここから少しだけ離れた小都市のエルニアだ」
「結構距離ある?」
「ありはするが、その……。ソウタと一緒に旅しているみたいだから、私的には遠くてありがたいな~……なんて思っちゃったりもして」
ズッキュンッ!
最初は急いで行こうと思っていたけど、今の言葉で少しだけなら寄り道してもいいかなって思った。
【冒険者】
モンスターを討伐したり、物を採取したりして生計を立てる人たち




