012.質問攻め○
シラユキが落ち着くまでソウタ達はお互いの身を寄せ合っていた。
しばらくするとソウタの上に体を乗せていたシラユキが、こっぱずかしくなったのかゴロンと一回転してベッドから足をブラブラと下げた。そして可愛らしい口が動いた。
「は~、なんか泣いたらスッキリしちゃった!」
そういうとシラユキはソウタの方を見た
「泣いたしスッキリしたし、ソウタに本音も言えたけど、私が全然ソウタの事をしらないから色々と質問させてね!」
ソウタに対しての質問攻めが始まった。
「ソウタはなんで嘘をついていたの?」
シラユキからそう質問された。どうやらソウタが思っていた以上にシラユキには嘘が見抜かれていたらしい。シラユキが泣いていた時も嘘がバレている事に気が付かされた。
「シラユキはいつから気づいていたんだ?」
「ソウタが私と初めて会ったときに、東エリアの事を知らないっていった時から」
「それだけで?」
「だって、このクレアール大陸のエリア分けの常識を知っていなかったんだもん。もしソウタが東エリアを知っているって言っていたなら、別にそこまで興味引かれなかったし、あの時あそこまで驚かなかったよ」
ソウタはシラユキから、今まで思っていた事を全部話された。
シラユキはこのクレアール大陸で一般的に知られている事をソウタが知らないと言ったのにも関わらず、シラユキの名前が出て来たというのがおかしかったから、ずっと疑問に思っていたらしい。
それに加えてソウタがシラユキの全てを知っていると言った事で、この人は確実に私の事を知っているのになんで嘘をついているんだろう。と、頭を抱えていたっぽい。
多分これは、シラユキがこの大陸で結構広く名前が知られてたから故の、悩みだったんだろうなぁ。
僕自身は白が切れていると思っていたって言うことになるよな。恥ずかしい。
……という事はシラユキはそれを知りながらも僕の嘘に付き合っていたって事になるのか。あぁ愛おしい。 ソウタは一人そう思っていた。
「ソウタってどうして私の名前をしっていたの?」
ソウタはこの質問に、シラユキは覚えていないだろうけど、シラユキが小さい頃に家に僕の両親が頻繁にお邪魔して、親が良くシラユキの事を話してくれていたと返した。こればっかりは嘘だけど許してほしい。だって別の世界から来て君を作ったなんて言いにくいから。
シラユキはそんな事あったかな~? と不思議そうに顔を上に向けて考えていたけど、ギリギリ納得してくれていた。
ソウタはここで、もしシラユキの親に会う機会が来たら、どういう言い訳をしようかと必死に考えておかないとな~と、自分の作った設定に頭を悩ませた。
「じゃあ何で私を見て驚いていたの?」
この質問にもさっきの設定を生かして、小さい頃に聞いたシラユキの特徴にソックリだったからビックリして声を出したと答えた。
「遠い場所ってどこ?」
この質問には、クレアール大陸よりもずっとずっと遠い場所から魔法の暴発の影響でこっちに転移してきたと説明した。僕の親は転移魔法のスペシャリストだったから真似出来ると思ってやったらこのザマだったよ。と冗談交じりで言った。
シラユキは、『ソウタもあの凄い魔法使えるからやっぱり親も凄いんだね!』と目をキラキラさせながら話を聞いてくれていた。
ある程度気になっていた事を言えたのか、シラユキの口が少しだけ止まった。他に何か聞きたいことなかったかな~っと、顔を少し上に向けながら考えている。
しばらくして、シラユキがソウタの顔をみつめて、結構真面目に質問してきた。
「そういえばソウタは、どうして本当の私を知っていたのにキャラを演じている私の方が好きって言ったの?」
「あぁ、あれ? あれは一応、本気で言ったつもりではあるよ。あの時の僕は、素を隠しているシラユキが可愛いなぁって思って言ったんだよ」
ソウタはシラユキに『本当の君を知っているからこそ、キャラを演じているシラユキを見て、実際にはどう思っているのか想像したりして遊んでいた』と説明した。
そして、シラユキの全てを知っているっていう発言をした事を覚えていないと言い通せば、シラユキは素性もしらない人には素は見せてこないだろうって考えていた事を伝えた。
シラユキには最初から嘘をついているというのは分かっていたらしいけどね。恥ずかしい。
そう言うと、シラユキは頬を風船のように膨らませ、ソウタの方へ詰め寄って来た。
「ソウタのバカ! 私ね、その事で色々と勘違いしちゃってたんだよ! ソウタは私の素を知っているのに、キャラを演じている私が好きって言ったから、強い私が好きなんだと思って……」
「本当に悪かったよ。全部シラユキを知っていてのソウタの悪ふざけだった。
悩ませてしまって本当にごめん!」
「ううん。別にいいよ! 何はともあれ、こうやって弱い私でも、本当の私としてソウタとお喋り出来ているんだもん! 私、これだけでもソウタに気持ちを打ち明けてよかったなって思ってる」
シラユキはその可愛らし顔を更に可愛くして、ニッコリとソウタに微笑んだ。
でも、シラユキは決して弱くはない。
ソウタは自分で作ったキャラクター、シラユキと接して分かった。ソウタが設定した性格とかは、あくまでもベースでしかすぎない。そこから色々な経験を経て、色々な人格が形成されるんだと。この世界で一人の人間として生きているんだという事を知る事が出来た。
だからシラユキも強い、弱いだなんてソウタが付けた設定にすぎない。きっとベースは弱いけど、これから様々な経験を得て強くなっていくはずだ。
現に、アルディウスに立ち向かった事や夜通しソウタを守ったことなんて、並大抵の心の強さじゃ到底できた芸当じゃなかったから。
だからソウタはシラユキに告げる。
「シラユキは弱くなんてないさ。心は誰よりも強いよ。
こんな事が出来るのはシラユキしかいないと僕は思う」
シラユキはソウタに飛びつく形で抱き着いてきて、耳元で「ありがとう。ソウタ」と呟いた。
あぁ、この姿は僕以外には見せないでほしい。これはソウタのワガママでもあり願いだ。
そう思っていると「今まで素を見せれなくて苦労しただろうけど、これからは僕には見せてほしい」と口から自然に出てきた。
「元からそのつもり。ソウタ以外の前で素は見せるつもりはないよ!」
ソウタとシラユキはそう言うと、自然と優しく抱き合っていた。
なんかシラユキと絆が深まった気がする。
……シラユキと離れたくないや。ソウタがそう思っていても、シラユキはギルドの事で忙しいし、これからはこうやって一緒に居るのも難しいだろうなぁ。
ソウタが心で思っていたことが口に漏れていたのだろうか、シラユキがめちゃくちゃ照れた顔で「じゃ、じゃあ! 冒険者登録をして冒険者として活動していくのはどう!?」と提案して来た。
なるほど、それは良い提案だ!
ソウタはシラユキと一緒に居たいという思いから、ベッドから勢いよく飛び出し「さっそく登録しに行こう!」とシラユキに言いながら元気よく部屋の扉を開けて、ドーンレアルに会いに行く事にした。
ちなみに、シラユキはめちゃくちゃ柔らかくて良い匂いだった。
【シラユキの柔らかさ】
ムニっとしてる。決して太っているわけじゃない。
そう、程よい柔らかさだ。丁度良い肉付きだから、世の男性がこれくらいが丁度良い! と声をそろえて言えるくらい程よいのだ。
ソウタがシラユキと抱き合った時、あまりにも自分が思っていた理想の柔らかさと一致していたため、太ももに埋まりたいとか、二の腕をムニムニしたいとか、溢れんばかりの欲求をなんとか抑えて自制した。




