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100.一夜が明けて

 夜が明けた。ソウタはエニグマよりもいち早く起床し、エニグマが被っていた毛布がズレているのを確認するとそっと掛け直し、部屋を出た。


 他のベッドはたくさんあったが、かっこつけて床に寝たせいか体が痛い。

 軽く伸びをして、ソウタは医務室の前でエニグマが起きるのを待った。


 特に何かしたいわけでもなく、ただこの後どうしたらいいのか分からない。

 だからとりあえず起きるのを待って、一緒に行動しなければ。

 一応同じ討伐隊のメンバーになった事だし、これから先は彼女と共に行動する機会も増える。だからまずは一緒に行動して生活するっていう習慣を慣らしておかないといけない。


 だが待てども待てどもエニグマは起きてこない。


「そういえば、エニグマって設定的に夜型なんだっけ……」


 だとしたらこんな早朝に起きれるわけもなかった。

 エニグマには悪いが、ソウタは時間ももったいないので部屋に入ってエニグマを起こす事にした。部屋の扉に手を掛けた後、ソウタの脳内にはこの後の展開がいくつか浮かび上がって来た。


「……まあ、そんな事おこるわけないでしょ」


 まさかエニグマが着替えている最中なんてことはないはずだ。

 そんな漫画みたいな展開か起こるわけがない。

 若干の不安を覚えつつも、ソウタは医務室の扉を開けた。


「あ」


 ソウタが扉を開けようとしたほぼ同じタイミングで、内側から扉が開いた。


「や、やあエニグマ。おはよう」


「おはよう……。早いのね」


 まだ完全に覚醒してない、寝ぼけ顔のエニグマが立っていた。

 ソウタの顔を見て、すかさず目線を明後日の方向へと逸らした。

 昨晩の事が記憶に新しいのか、こっぱずかしい様子だった。


「あのさ、一つ言っておくんだけど」


「な、何かな?」


「昨日の私は私であって……なんていうか私じゃないというか……。と、とにかく昨日の夜の事は忘れなさい! あんたも私に理解があるからわかるでしょ!」


「ま、まあね。君が日中と夜とではガラっと性格が変わるのは僕が居た世界の君と同じだからね。そこは問題なく受け入れるよ。昨日の君は夜だったから普段我慢している本来の自分が出て来ただけだもんね。大丈夫、そこは理解しているよ」


「変な言い方しないでよね! それじゃあまるで私が……あんたの事を……!」


 エニグマはそこまで言うと目を鋭くさせ、ギロっとソウタを睨んだ。


「とんかく! 夜の私は私じゃないの! だからこれから一緒に討伐隊として生活していく中で、私が夜になにかやったとしても、それは私じゃないから! わ、分かったわね!? 分かったっていいなさい!」


 日中はツンツン、夜はデレデレってキャラクターを造りたかったソウタ。

 夜のエニグマの性格は、本来我慢している部分が欲求とかに忠実になって表にでるって設定だから、私じゃないといいつつも、夜の姿が本来の姿なんんだけどな。と思いつつもソウタは首を縦に振る。


「昨日は色々あって結局何もできなかったけど、今日から討伐隊として活動するからまずは拠点となる建物に移動するわよ。まずはマスターに会ってから拠点の場所を教えてもらわないとね」


「じゃあ、まずはマスター室に行こうか」


 医務室を後にして、歩き出すソウタの服をエニグマはぐいっと引っ張る。


「ちょっと。その前にアンタも私も寝起きなんだから朝の支度をするわよ」


「それもそうだね……あっ!」


 エニグマに袖を引っ張られた後、ソウタは思い出したかのようにエニグマの頬に手を当てた。そしてそのままエニグマの歯を確認するように頬をぷにっと摘み、ぐいっと上へ引っ張った。


「――!?!?」


「あれ、昨日みた牙がないな。エニグマ、君って夜になると牙が生えるの?」


 やっぱりアレは見間違いじゃなかった。

 昨日の夜、エニグマからは確かに牙が生えていた。


 ソウタは不思議そうに首を傾げる。

 エニグマは夜は性格が素直になるってだけで、牙が生えるなんて設定を付けた覚えはないはずだ。

 今ソウタはエニグマの口を開けて、歯科医のように歯を観察している。


(やっぱり僕がおおまかにつけた設定の部分は、この世界で一人の人間として存在する為に、この世界自体がキャラクターの設定を大きく補完しているのか? エニグマに牙が生えているのも、夜に性格が変わるっていう設定と何か関係が……?)


「いきなり何すんのよこの馬鹿!!」


 順当というべきだろうか。

 ソウタはいきなりエニグマの頬を触ったことで、驚いたエニグマに突き飛ばされた。


「昼は別にそういう気分じゃないから!!!

だ、だからといって夜にやってもいいってわけじゃねえです!

そこんとこ頭に入れやがれこんちくしょー!」


 エニグマはそう言い残し、早足気味で朝自宅に向かった。

 その背中を見てソウタはまたこう思う。


 口調が安定しないなと。

 これもこの世界で補完されたエニグマの設定なのだろうか?


 油断ならないな。まだ分からない部分が多い。

 ソウタは自分が作ったキャラクター達にも、この世界ならではのルールや力で何かしら設定が追加されているのではないかという疑問を持ち始めた。

 

 だったらその疑問を晴らす簡単な方法がある。

 それは仲良くなればいい。

 それだけで自分が知りえない新たな部分が知れるはずだ。


 よし、とソウタは拳を握り、この世界で上手くやっていくためにも原住民や作って来たキャラクター達との関係性を上手く構築するぞと意気込んだ。



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