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099.異なる世界との邂逅~エニグマ②~

 7/21

 長かったので分割しました。

 近いうちにまたエピソード更新します。

 エニグマには二つの顔がある。

 一つは日中の顔だ。瞳の色は宝石のように透き通る綺麗な緑色をしている状態。この状態のエニグマは気が強く、素直じゃない性格になる。これが普段のエニグマである。


 しかし夜になるとその真逆の性格へと変貌する。

 瞳の色も緑色からルビーのような深い赤色へと変わる。


 夜が更けていくにつれ、性格の変化は強くなり、朝が近づくにつれ元に戻る。


 エニグマは今、まだ性格の変化が緩やかな状態だった。

 だがソウタから投げられる言葉に、もはや耐えられなかった。



「ねえ……。聞きたいことがあるんだけど」


「どうしたのエニグ……マッ!」


 ソウタはエニグマの顔を見てぎょっとしてしまった。

 まだ夜は更けていないというのに、目の色が深い深い赤色へと変わっていたからだ。


(な、なんで! まだ性格の変化はゆるやかな時間のはずだ!)


「もしかしてアンタって昨日の夜、私と会わなかった?」


「え? 昨日の夜?」


 昨日の夜と言えばストロングモンスターの襲撃があった時間だ。

 ソウタは確かにエニグマをモンスターから助けはした。

 だがソウタは何かよからぬ感じがして、本当の事を言うのを躊躇った。


 今の状態のエニグマは普通ではない。

 本来なら性格の変化はもっと緩やかのはず。

 だが、今のエニグマは何か制御できない欲望というのだろうか?

 とにかくただならぬ想いに体が支配されているような気がしてならない。


 少し身震いを起こしたソウタは、目を少し泳がせながら言った。


「やだな。僕と君は今日久しぶりにマスター室で会ったじゃないか。

昨日の夜に僕に会っただなんて何かのまちが……」


 エニグマは凄い力でソウタを押し倒した。

 恍惚な表所を浮かべ、ニヤッと笑う。

 その際、ソウタは見逃さなかった。エニグマに牙が生えていたのを。


(なんだあの牙……。僕あんな設定なんてつけたっけ?)


 頭を傾げているソウタなんてお構いなしに、

エニグマはぐっとソウタの顔に自分の顔を近づけた。


「ねぇ……嘘を付かないでよ。何となく分かっちゃったんだから。アンタが今日、私に言った言葉と昨日の夜、マジックローブを装着していたあの人の言葉。ほとんど言っている事が同じだったわ。これって偶然? いいえ違うわ。だってあの人、私に会った時に詠唱魔法の事について語っていたんだもん。ねえ、私が他の誰かに魔法が詠唱しないと使えないって事を伝えていると思う?」


 ゆっくりとソウタの顔を指でなぞりながら、耳元で囁く。


「あの時、私を助けてくれたのはアンタよね?」


「そ、それは……」


「私、昨日の夜ね、不本意だけどその言葉にトキめいちゃったのよね。なんだか私の努力が報われたような。今まで詠唱の事で悩んでいた自分にとって、その事を全部肯定されたような気がして気分が踊っちゃったの」


 エニグマは耳元から顔を離し、上体を起こした。

 ソウタの胸板に手を置いて、見下すようにしてソウタの顔を見る。


「もしそれがアンタだったっていうなら私……。

アンタがいいっていうなら……私は別に構わないけど……?」


(ヤバいヤバいヤバいヤバい!! なんかこの展開、どこかで経験したぞ!)


「ねえハッキリ答えなさいよ。昨日の夜、私を助けたのはアンタでしょ?」


 ここで「うん」と答えたらどうなってしまうのだろうか。

 もし答えてしまったらこの先の展開は誰もが予想がつくであろう。

 だがそれはソウタは望んでいなかった。


 まだ自分の中で一番を決められていないからだ。

 今この場で流れに身を任せてしまってはダメだ。

 これ以上エニグマが暴走する前に止める。

 創造の力で身体能力を強化して拘束を解き、気絶させるしかない。


 ソウタがそう思った瞬間、窓の外に一人の人影が見えた。


「ん……? アレって?」


 ソウタが見たのはシラユキの後ろ姿……。

 ではなく、イリューだった。


 イリューはマジックローブを身に着け、こくんと頷いた。


「エニグマ、君の探している人ってあの人じゃない?」


「え?」


 エニグマは後ろを振り向いた。そのタイミングを見計らったのように、イリューはあらかじめ、ソウタが使用したサザンクロスに近い規模の魔法を使う準備をしていた。


「あの魔法……。確かに間違いないわ」


 エニグマは窓の外を見て、またソウタへと顔を向ける。


「でも違う。アレは……見せかけ」


「あ、あれ……? あの人に会いたいんじゃないの?」


「会いたい気持ちはあるけど、今は……アンタのほうに興味があるの」


 エニグマはそういうとソウタの体に自分の体を密着させた。


「ねえ、どうして本当の事を言わないわけ?

昨日の夜、アンタに助けられたんなら、結構嬉しいんだけど」


「嬉しい? どうして」


「どうしてって……。さっきも言ったけど、私の全部を肯定してくれた気がしたのよ。あの人の発言は。そしてさっきのアンタの発言も。だからその……ね?」


 その「ね?」の続きは何を言いたいんだエニグマ!

 そして本当にいいのか僕よ!


 いわばこれって、予めエニグマの情報を知っていた僕がエニグマの心を動かしてしまったという事だ! 言うなれば全ての攻略情報を知り尽くしたうえで、全部最適解の選択肢を選んでヒロインの好感度を上げて最速で攻略しているギャルゲーのようなものだぞオイ!


 このままではいけない。

 こんなの、僕が望んでいる結果じゃない。

 早すぎる! もし恋愛をするならば、もっとじっくりゆっくりと!

 これが僕の恋愛観だ!!!


 ソウタはマナの活性化を右手だけに絞り、そこに力を一点集中させた。


 そしてエニグマを抱きかかえるように、背中と頭に手を添えた。


「あっ……」


 急に積極的になったソウタの行動に、思わず声が漏れるエニグマだったが。


「おやすみエニグマ」


 ソウタはエニグマの首に、右手に溜めたマナを微量に放出させた。

 手刀の要領で首の後ろに軽く衝撃を与えた結果、エニグマはぐったりと倒れた。


 ソウタはそのまま、エニグマをベッドの上に運んだ。

 そして自分は床に横になり、一夜を過ごしたのだった。


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