表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/103

000.プロローグ

5/1

物語の流れは変えずに文章の訂正作業を行っている最中です。

作業が終わるまで物語の視点がどこかの話で急に変わるかもしれないのでご了承ください

「いいか? 決して抵抗の意思と敵意を見せずに質問にだけ答えろ」


 美しい白髪で目つきの鋭い女性が創太の背中に剣先を当てて質問している。


(とほほ……この世界に来てからこんな事ばっかり……)


 災難だ。

 藤林創太(ふじばやしそうた)。男性。

 彼は転移早々、窮地にばかり立たされていた。



 ――数時間前。創太は確かに日本に居た。



 彼の日本での最後の記憶。それは薄暗い部屋の中だった。

 大きなパソコンのモニターと長らく睨めっこをしていた。

 小さく空いた窓から吹き抜ける心地よい風がカーテンを揺らす。

 カーテンの隙間からは朝の優しい日差しが顔を覗かせていた。


「ん? やべ~、もうこんな時間になってたのか」


 創太は部屋に差し込む日差しを見て伸びをし、今が朝なんだと認識した。

 朝なのか夜なのかを全く気にする素振りを見せなかった。

 それほどまでに創太は昨日の昼からずっと一つの作業に集中していた。


 その作業とはキャラクタークリエイト。

 通称、キャラクリと呼ばれている自作のキャラクターを作る作業だった。




▲▲▲





 本格的キャラクタークリエイトゲーム【クリエーション・キャラクター】


 名前の通り、キャラクターを作るのに特化したゲームだ。レベルを上げて敵を倒したりするというゲームらしい要素はない。そのぶんエディットパーツなどが定期的に大量に配布されたり、課金をしてパーツを買ったりして、そのパーツでキャラクターを作り上げる。


 そして、作ったキャラクターを鑑賞したり、ポーズを取らせたり、設定メモという項目に自分で考えた設定を詰め込んだりして遊ぶ。いわば可愛い子から厳ついおっさんまでなんでも作れちゃうゲームだ。なので設定を考えるのが好きな人にはうってつけのゲームだった。


「よし、理想の子が出来たぞ」


 我ながら良い出来だ。

 パソコンのモニター越しでニヤニヤしながら完成した自分のキャラを見て笑う。


 創太は今日も今日とてキャラクタークリエイト。

 キャラクリをしてまた一人理想のキャラを作り出していた。


 キャラクリはぶつける事が出来ない自分の性癖や趣味を全力で表に出し、自分の好きな要素で塗り固めたキャラクターを作り出す事が出来る。まさに人類が考えた至高で偉大で素晴らしいシステムだ。


 創太は日々脳内でオリジナルキャラを思い描いて過ごしていたが、絵が描けないが故にその表現を表に出せない事が悩みだった。だがキャラクリという存在を知ってからはもうゾッコン。見事に沼にハマったのだ。

 

 それからというもの、自分の理想を追い求め日々美少女から厳ついおっさんキャラまで、自分の妄想を存分にぶつけキャラクターを制作していた。


 そう、簡単に言うと創太は自分の作ったキャラクターが大好きなのだ。

 いいや、大好きすぎてもはや異常ともいえる。

 

『この世界で一番可愛いキャラは?』と聞かれると、自分が作って来たキャラクターです。と答えられるくらいには制作してきたキャラにかなり愛着を持っている。



「さて角度を変えて最終確認といたしますか!」


 ゲームの中ではカメラを自由に動かせるため、上から横から斜めから、更には下から、舐め繰り回すようにオリキャラを鑑賞するソウタ。


「うん、これはえっちだな!」


 あるあるエピソードだとは思うが、こういうキャラクリをしていると自ら作り出したキャラクターにエロさを求めるのが男のさがだろう。最初は控えめにしていた各種部位の数字を「あと少し、あと少し」と言って盛っている内に想定していた完成図よりも二回りほどパーツが大きくなったキャラが出来上がってしまうのだ。

 

 なかには、自分で作ったキャラクター達に欲情なんて出来ない。

 そう思う人もいるだろう。

 だが、キャラクリで作ったキャラクター達は、いわば自分の欲望の塊。

 好きな要素てんこ盛りなのだ。


 そんな好きな要素が詰まりに詰まりまくったキャラクター達を見て、そういう目で見ない方がおかしな話だと創太は思う。


 ただ、全てが全てそういう目的でキャラクター達を作っているわけではない。


 あくまでも好きな要素を詰め込み、このキャラクターはこういう性格で、こういう強さでこういう戦闘スタイルを取って~などと言う基本的な設定を考えた上での行いである。


 決して初めからやましい気持ちで作っているわけではない。

 ……ウン、ホウトウニ。

 

「さ~てと、あとは設定を考えるだけだ」


 ソウタは黙々と設定を考えた。

 時間にしておよそ4時間。

 事前に考えていた設定に肉付けをし、細かい要素を継ぎ足していった。

 あれやこれやと作業をしていると時間など一瞬で過ぎていく。


 ――そして。


「……聖域を守る聖女様っと」


 ふぅ。


 ソウタは一通りの設定を書き終えた。

 今回作ったキャラクターは、ゲームで良くいる守護者的な立ち位置のキャラだ。


 見た目は神秘的にするために色々工夫した。


 髪は少し癖っ毛だけど、腰まで伸びていて、見るものを引き付ける様な綺麗な金色。目は若干たれ目にして穏やさを表現した。瞳の色は吸い込まれそうなほどの輝きをしている青。水色に近いかな。


 そしてここからが肝だ。


 胸のサイズと形について。

 創太が一番重要視している工程であり、一番慎重になるべき場所だ。


 色々な角度から舐めまわすように見て理想の大きさと胸の形を探し出す。

 理想の胸を追い求めるため、妥協は絶対に許されない。

 あれやこれや作業をしていると2時間くらい経つ事もしばしばある。


 今回は神秘的で品のある聖女様ってイメージだから、大きすぎず小さすぎず、Cカップくらいの大きさにしようと思った。だが、やっぱり男たるもの出るところは出したいのだ。


 ちょっとだけ……。

 ちょっとだけ……。


 大きさを少しだけ盛ってと……。


 そして創太が行きついた答えは――D。

 これが理想的だ。


「ふぅ~、お疲れ様。僕」


 一通りキャラクリが終わり、創太は椅子に深く腰を掛ける。

 ブラウザを立ち上げ、いつものようにメール確認→ネットサーフィンといったルーティンをとるため、マウスのカーソルをmailと書かれた文字の方へ運ぶ。


「ん……? なんだこのメール名」


 クリエーション・キャラクターを遊ぶために登録したメアド宛に、開発者からのメールを受信したのか【New】という文字が浮かび上がっていた。


 時期的に、パーツ配布のお知らせかなと思いワクワクでメールボックスを開く。

 メールの題名は【創造】と書かれていた。


 いつもなら『新パーツ配信のお知らせ!』とか名売っているのになぁ。

 こんなシンプルな題名でのメールは初めてだ。

 ま、キャラクリのゲームだし、メールの題名で遊んでいるのかも?

 ソウタは特に不思議に思わずにいそいそとメールの本文を確認することにした。


------------------

[【創造】]

助けて。

------------------


 なんだこのふざけた内容のメールは。


 創太は開発陣営の人達が本文を書こうとして、誤って送信したものだろうと思いメールを閉じようとした。新パーツかもしれないと期待したのにガッカリだった。


 まあ、そのうち内容を訂正したメールが来るだろうと思い、創太は仮眠をするべく椅子から立ち上がりベッドへダイブしようと考えた。


「あ、やべ意識が」


 長時間パソコンを見すぎたからか?

 それとも睡眠をまともにとっていなかったからなのか?


 椅子から立ち上がった瞬間、猛烈な目まいと吐き気に襲われた。


「あ、あれ……。やばいコレ」


 おそらく創太が現実世界で発した最後の言葉だろう。


 創太が意識を失う直前に感じた最後の感覚。


 パソコンから眩い光が放たれたと思ったら、自分の意識がどこか別の所に吸い込まれていくような。そんな不思議な感覚に陥った。


***【応援】***

少しでも面白いと思っていただけたり、続きが気になるって思って下さったら

気兼ねなく下の【☆】を押して頂いて、評価などしてくれると励みになります!

【☆1】でも気にしないのでドンドンお願いします。

もちろん、ブックマークも大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ