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【第十三話】来るべき刻

【第十三話】来るべき刻(願わくば我に七難八苦を与え給え)


(此処は、砂漠・・なのか?)

ゲンジは星ひとつ見えない真っ暗な夜空の中、砂の上を歩いていた。

ふと、ゲンジの視線の向こうに人影がひとつ、浮かび上がってくる。

(あれは・・まさか、陽子なのか。でも何で・・一体、誰に捕まったんだ)

何か嫌な予感、焦りを感じたゲンジが走り出し、うつむいた姿勢のままピクリとも動かない陽子の目の前まで近付いたところで、突然ゲンジの頭上に何か一瞬光る。

(危ないっ!)

ゲンジがそう叫んだ直後、藤原陽子の身体を数本の光が突き抜けていった。急いで陽子の元に駆け寄り、うつ伏せに倒れた身体を抱き寄せると、ゲンジの手がべったりと赤い血で染まる。

(いまのは何だ?しっかりしろ、陽子!死ぬなよ、死んじゃダメだ!)

着ていた白い上着がみるみるとが真っ赤になっていく陽子を仰向けの姿勢にし、虚ろな眼差しが次第に閉じていく陽子の頬を寄せながらゲンジは泣きじゃくった。

(なんで、どうしてこんな事に!一体誰が・・。目を開けてくれ、陽子ぉ!)


「ようこっ・・って、また夢か。でもこれってまさか、マジで正夢なんて事・・」

ベッドの上で目が覚めたゲンジは大量の汗をかいており、髪の毛を搔き上げた手がべったりと濡れる。額の汗と、頬を伝う涙を拭いながらゲンジは呟いた。

「そんなこと絶対にさせない。陽子は俺が必ず守ってみせる。今まで辛い訓練をこなして高めてきた俺の能力チカラを使えば、今度こそ、絶対に・・・」


「耐久試験後の基本性能は初期値の99.98%・・。よし、遂に完成したぞ!」

愛知県のとある場所、カーボン加工では世界最先端の技術を有する会社の工場の一角で、ゲンジは光学透過ヘッドマウントディスプレイ機能が搭載されたOAKLEYのスポーツサングラスを上に持ち上げ、目元の汗を左腕の袖で拭いながら、バイオリンの弓にも似た形状をした黒光りする剣が置かれた試験装置に表示された数値を確認すると頷いた。それから汗を拭きサングラスを掛け直したゲンジの目の前に巨大な白龍の姿が浮かび上がる。最新のAR(拡張現実)機能が内蔵されたこのサングラスに映しだされた白龍の姿は、ゲンジの目には身長10mはあろうかという本物の巨大生物にみえた。そのサングラスの中に現れた巨大な白龍がゲンジを見下ろして言う。

「今回の試験で試作No.046の各種評価結果が全て揃った。刃先の硬度、刀身の曲げ剛性、耐衝撃性能、ヒートショック、その他全ての評価結果はAAA判定、そしてこれらの初期性能に対する耐久試験後の性能は全て99.7%を超えた。よって本品は目標SPECを全て満足したものと判定する」

白龍の声にゲンジはホッと一息ついて安堵の表情を浮かべた後、蓋が開いた評価装置の中に置かれたカーボンソードを両手で持ち上げ、満面の笑みを浮かべて言った。

「白龍、お前のお陰だよ。試作No.046、46本目で遂に完成か。これでようやく二つあった俺の宿題のひとつが終わった」

ゲンジの言葉に白龍は言った。

「ウム、この剣は切れ味は勿論のこと、重量、長さ、取り回し性等の要素を鑑みてもゲンジにとって世界最強の剣となるであろう。そしてこの世界の半分以下の重力と算出された常世国という星でも、この剣は有効に機能する筈だ」

「世界最強の剣・・か。それに相応しい名前を付けたいな。モモの剣は布都御魂フツノミタマ、ゴウさんの剣は天羽々アメノハバキリ・・と。この二本の剣に匹敵する第三の刀の名前かぁ・・・なかなか思い浮かぶもんじゃないな」

「そうだな。刀・・カタナか。フム、ゲンジ、其方は刀乗りであろう」

「え・・?あぁ、ってバイクの方ね」

「日本神話にある“出雲の国譲りの段”において伊耶座の小浜に降臨した建御雷神は自らの剣“十握剣”の切先を天に向けて海面に立て、その切先の上に胡座をかいて座ったという。これもひとつの“刀乗り”と言えよう。しからば、刀乗りの其方が持つ世界最強の剣の名は、剣の神とも称される“建御雷神”とするのはどうか」

「カタナ乗りだからタケミカヅチ・・か。白龍、お前も洒落の効いた事を言うようになったな。でもカッコいいじゃん、気に入ったよ。よし、決定だ!あとは・・もうひとつの宿題から開放されたら、俺は思い残すことなく常世国に行けるんだよな」

「“もうひとつの宿題”とは、“F–0(エフゼロ)”の事か?或いはこないだ電話をしていた“陽子”のことか?」

ゲンジは苦笑いして白龍に返事をした。

「おいおい白龍、何で陽子なんだよ。無論“前者”だよ」

「人間というのは分かりやすいものだな、ゲンジ。心拍や皮膚の表面温度の上昇、そして発汗。つまり其方は今、明らかに動揺していると思われる」

「白龍、お前いい加減にしろよ。さぁ〜てっと・・天気もいいし、今日は久し振りにバイクに乗って行こうか」

それからゲンジは銀色のスズキGSX–1100S“カタナ”に乗り、横須賀港に向かって行った。


OAKLEYのレンズの内側に表示される時刻をみながらカタナで高速道路を走行していたゲンジは、静岡県内のサービスエリアで休憩がてら昼食を摂ることにした。自動二輪車専用駐輪場に停車したゲンジの銀色のカタナの横には、同じカタチをした色違いのカタナが停まっていた。

(珍しいな、緑色のカタナか。どんなヒトが乗っているんだろう)

そんなことを考えながらヘルメットを脱ぐゲンジの背後から声を掛けてくる男がひとり。男はゲンジのカタナのエンジン前方に配置されたオイルクーラーの左右にあるフェンダーに貼り付けられていた一角獣ユニコーンのステッカーを見て言った。

「こんにちは、いい音だね。これはユニコーンで仕上げたのかな。実は僕のバイクもユニコーンの池田さんに面倒みてもらっていてね。君の愛車も、もうだいぶ永く乗っているのかい?」

白髪交じりのくせ毛が特徴的な男の歳は六十歳位だろうか。その微笑んだ顔にできた皺を見なければ、適度な筋肉のスラリとした体格は四十代にも見えた。

「あ、どうも。えっと・・このバイクですか?実はコレ、こないだ友達から譲ってもらったんですよ」

四年前、ゴウを庇う為にモモの草薙剣を背中に刺されたゲンジは腰に腫瘍を患い、しばらく飛行機は勿論の事、クルマやバイクに乗る事すらままならなかった。

だが二年前、ゴウの血液を用いた治療法により症状が改善してからは再びFF–1を操縦することが出来るようになり、同時にこの頃から『またバイクに乗ってみたい』という衝動にもかられるようになる。そこで取り敢えず当時モモが乗っていた旧いBMW、R90Sを借りて気に入ったゲンジは、モモに自分も旧い大型バイクが欲しいと相談した。するとモモは、自らが所有する全てのバイクをゲンジに披露し、ゲンジが興味を示した車両を片っ端から試乗させた。その中でゲンジが最も気に入ったのが、この銀色のカタナだったのである。

「その若さでユニコーンのカタナとは。君のご友人は何か特別な方なのでしょう」

この言葉にドキリとしたゲンジは、誤魔化すように言った。

「い、いえ・・確かに変なヤツだけど、“見た目はごく普通のヤツ”ですよ。でもなんで?」

「僕の刀もそうですが、こんな旧いバイクはいまどき簡単に手に入るものではないし、それをこのようなコンディションで維持するには、それなりに手間もお金も掛かりますからね。バイクへの情熱と拘りがあって正しい知識と経験も豊富であり、更に信頼できるお店とのコネクションもある。そういう方というのは、おそらく仕事も出来る方なのだろうな、と思う訳ですよ」

「仕事・・ですか。確かにアイツは仕事やらせたら出来るかもしれませんね。それにしてもバイクをみるだけで、その持ち主の事が結構分かるんですね」

「当たっているかどうかは別として持ち主をみれば車体も分かる、バイクやクルマにはそういう愉しみ方もあるということですよ。そしてそれだけじゃない。君の刀の周囲には何か特別な・・そう、オーラのようなものを感じますね」

「そうなんですか?このバイクが特別なオーラを・・・」

「いえ、ちょっと言い過ぎましたかね。あまり推測で大げさなことを言うのはこの辺でやめておきましょう。なんだかんだ講釈したところでバイクはバイク。どんなに綺麗で美しくても飾っておくだけでは勿体無いし、バイクも可哀想ですから、細かい事は気にせずガンガン乗って、しっかりメンテしてあげれば良いかと思いますよ。池田さんなら安心して任せられます」

そう言うと白髪交じりの男は緑色のカタナに鍵を差し込み、エンジンを掛けた。

「キュル・・ズ、ヴォンッ!・・ズヴォォォォ・・」

ヨシムラ・ドラッグサイクロンから奏でられる低い排気音がゲンジの胸に響く。と同時に、白髪交じりの男の背中からゲンジの脳裏に“心の声”が聞こえてくる。

(オーラを発していたのはおそらく刀ではなく、君であろう。刻の旅人よ、“来るべき刻”にまた会おう)

(え、いまのは・・誰が言ったんだ?まさかあのオッサンが・・・)

それから男はヘルメットを被り右足をステップに置いてギアを1速に入れ、アクセルを煽ると軽く左手を上げてゲンジに会釈した後、空冷四発の乾いたエキゾーストノートを木霊させながら颯爽と去っていった。緑色のカタナが視界から消えた後、ゲンジは首を傾げて考えた。

(確かにさっき『来るべき刻』って聞こえたよな。あのオッサンは常世国のことを知っているのか?いや、まさか念話ができるとも思えないし・・やっぱ空耳か)

その後昼食を摂ったゲンジは道中、ウェアラブル端末を使って白龍を呼び出しモモやゴウと連絡を取り合いながらカタナを走らせ、横須賀港内にある自衛隊基地に到着した。基地内に入ると、ゲートでゲンジを待っていた若い隊員が「楠木さん、お久しぶりすね。お待ちしておりました」と敬礼する。ゲンジは深く帽子を被った若い隊員の顔を覗き込むとハッと思い出したように言った。

「及川ぁっ、何だよお前か!」

そう言って肩を抱き寄せるゲンジに若い隊員、及川は恥ずかしそうに言った。

「反町さんが気を利かせて、お前が迎えに行けと言ってくれまして」


及川誠。百名以上居るFー0のパイロット候補生の中でも若手エースの彼は、一般市民のゲンジがある日突然テストパイロットとしてやってきた時も嫌な顔ひとつせずに、Fー0の基本的な操縦方法から細かい機能などを、ひとつひとつ丁寧に教えた。

その後、機体に慣れたゲンジが圧倒的なテクニックを披露するようになっても、どうすればゲンジのように飛ばせるのかを熱心に質問し、自らの操縦技術の向上に努めた。そんな及川をゲンジは弟のように可愛がり、二人で酒を交わした事も幾度となくあったのである。


「僕の後ろをついて来て下さい」

及川はそう言うと最新型の1/2t小型トラックに颯爽と乗り込み、ゲンジのカタナを先導した。それからしばらく走ったところでゲンジを乗せたカタナは基地内の奥深くに位置する小さな施設に到着する。及川に軽く会釈をした後ゲンジがカタナを停めた駐輪場には、鮮やかな橙色をしたモモのBMW R90Sと、深い緑色に輝くゴウのモトグッツィ V11が、仲良く並んで停車していた。

「なんだ、ふたり共とっくに来ているじゃないか」

そうつぶやきながらグローブをヘルメットの中に放り込んでタンクの上に置き、建屋の入口に向かって歩き出したゲンジの前に再び及川が現れ、敬礼して声を掛ける。

「楠木様、特別応接室までご案内しますので、どうぞこちらへ」

以前自衛隊に勤務したこともあるゲンジは慣れた仕草で及川に「有難う」と言って敬礼を返し、及川の後ろを付いて行った。

「カツン、カツン、カツン、カツン・・」

静まり返った廊下を及川とゲンジの足音だけが響き渡る。しばらく歩いた後、案内された部屋の扉を及川が開けたところで複数の声が上がった。

「楠木殿、お待ちしておりました!」

「おう、無事着いたか。カタナはどうだ」

「よっ、エースパイロットのご到着だね!」

その部屋にはモモとゴウ、そして航空自衛隊基地司令“反町道夫”と、先日完成した最新型護衛艦DDC–199[やまと]の艦長“鶴巻一芳”の四名が出迎えた。

社交辞令がしばらく飛び交った後、静けさを取り戻しつつある部屋の中で、頭頂部には一本の髪の毛も残っていない禿げた頭を撫でながら反町は言った。

「楠木殿、この度はテストパイロットをお引き受け頂き大変感謝しております。先に到着された郷様からは以前より世界中の戦闘機開発に関する極秘情報をご提供頂いておりF–0の設計にも生かしてきました。そして貴方が乗ることでF–0は本来の性能、当初の設計目標を引き出すことに成功したのです」

反町の言葉にモモは言った。

「ゲン・・いや、楠木。FF-1であれだけのテクニックを披露したお主でなければ此度の件、成し得なかったであろう。して、お主の腰の具合はどうなのだ?バイクはともかく、いまは戦闘機に乗れる状態なのか」

「全然大丈夫。ゴウさんのお陰でほら、この通り」

ゲンジはその場でバク宙(後方宙返り)をしてみせた。すると反町が薄い頭頂部をポンと叩いて言った。

「いやはや、若いというのは素晴らしいですな。私ももう少し若ければ」

反町の言葉に対し、鶴巻は生え揃ったオールバックの白髪頭を撫でながら言った。

「確かに反さんも髪の毛が未だフサフサしていた頃はバク宙は勿論の事、F-4EJやF-15Jで後方宙返り、背面飛行、錐揉み旋回等といったアクロバット飛行も何なりとこなしてみせたものだったが、今回のF-0はあまりにも違いすぎる。あの様な凄まじい性能を自在に操るのは、いくら若かりし頃の反さんでも・・」

「鶴さんの云う通り、私も少し見栄を張りすぎましたな。瞬間移動でもするかの如く向きを変えるあの機体の性能を限界まで引き出す事は、いくら耐Gスーツを着て訓練を重ねたパイロットであっても難しい。何度かシミュレーターで経験してみたがね、機体の動きが速すぎて認知、判断、操作が間に合わないのだよ。ラプターとの模擬戦では揚力を失って何度も墜落したし、2回ほど敵機に突っ込んだ事もあったな。シミュレーターでなければ10回は死んでいたと思うよ」

頭頂部を撫でながら反町が苦笑いすると皆が笑い出し、和んだ雰囲気の中でしばらく雑談を重ねたところで、ふと腕時計に目をやった鶴巻が言った。

「さて、そろそろ本題に入りますか。これより皆様に乗船して頂く“やまと”は先日、無事進水式を終え、本日竣工式を迎えます。そしてこの艦に搭載される戦闘機“F-0”は楠木殿の多大なるご支援、ご協力でようやく完成しました。そこで楠殿には是非このまま残って頂き、若手パイロットの育成・指導をしていただけたら有難いのだが、なんでも“重要な案件”がおありだとのこと・・」

鶴巻の言葉に対し、ゲンジはチラリとモモとゴウに目をやった後、頷いて言った。

「はい、折角のお話し、残念ですがいまはお受けする事が・・・」

するとゲンジの言葉を途中で遮るように反町が頭を下げて言った。

「いいんですよ、楠木殿。我々の事は心配ご無用、貴君にここまで仕上げて頂いた機体は、今後日本を護る力になってくれるでしょう。先ずは日本海の佐渡島沖でこのところ大量に採掘されているメタンハイドレート掘削設備の護衛が最初の任務になります。専門家の話しでは、このプロジェクトが軌道に乗れば日本は石油、ガスの輸入が不要となる可能性があるとか・・」


ゲンジがテストパイロットを務めたF–0(エフゼロ)という戦闘機は、護衛艦に搭載されるべくSTOVL機能と呼ばれる短距離離陸・垂直着陸機能を備えていた。そしてこの機能を飛行中の姿勢制御にも利用する事で、従来機に対し大幅な運動性能向上を狙った開発当初の目論見は見事に的中し、この機体に類稀なる性能を与えた。しかしながらその過大な旋回Gと、過敏に向きを変えようとする操作系は自衛隊トップクラスのパイロット達ですら扱いこなす事が難しく、扱えたとしても今度は身体が耐えることが出来ず失神してしまうケースもあり、開発途上で幾人ものエースパイロットを失ってしまう。一方、同時に進めていた同型無人機の開発は順調に進んでいたものの、部隊単位で離陸から着陸まで有人機が全く不要になる程テクノロジーは進んでおらず、テストパイロット不在で有人機の開発が頓挫してしまうと無人機も含めたプロジェクト全体が暗礁に乗り上げるという事態になりつつあった。そんな中、目をつけられたのがFF–1初代チャンピオンとなった楠木将成、つまりゲンジであった。

その類稀なテクニックは陸海空自衛隊をはじめとして、世界中のエースパイロットを探しても肩を並べる者は皆無であろうと、航空関係者の中では評判になっていた。そんなゲンジに目をつけた開発部隊がF–0のテストパイロットとして協力してほしいと懇願し、これをゲンジは了解していたのである。


「さてと、そろそろ時間ですね。楠木殿のラストフライト、皆で愉しみましょう」

左腕に嵌められた迷彩色のG-SHOCK FROGMANに目を向けた反町がそう言った後、五人は部屋を出て“やまと”に向かった。それから小一時間が経過した後、ゲンジ達を乗せたやまとは旭日旗を掲げ横須賀港を出航した。

このあと“やまと”に乗船したゲンジは、甲板で待ち構えていたF–0に乗り込むと超短距離離陸にて発進させ、竣工式に参列した内閣総理大臣以下関係閣僚の前で数々のアクロバット飛行を行い、華麗な模擬戦をやってみせて観衆を大いに湧かせた後、再びやまとの甲板に鮮やかに垂直着陸した。それからF–0のキャノピーを開きコックピットを下りたゲンジは、首にぶら下げた勾玉を握りしめて呟いた。

「見えるよ、月の光が降りてくる大地が・・。もうすぐ俺は、この世界から十八年間居なくなる。その間、日本を護り続けてくれる翼が遂に完成した。ふたつ目の宿題も完了、これで思い残すこと無く俺は、常世国へ向かうことができるんだ」


護衛艦やまとの竣工式から数週間後、ゲンジとモモ、そしてゴウの三人はゲンジの導く方向へ向かい米国のニューメキシコ州、ロズウェルに到着した。

光沢の無い濃紺の最新型トヨタ・メガクルーザーFCEVが、広大な平原が地平線まで続く大地の湖畔に停車した。運転席のドアを開けて降り立ったゲンジは胸にぶら下げた勾玉を握った後、辺りを見渡して言った。

「いやぁ、暑いな。おそらくこの辺りに月の光が降りて来る筈なんだが・・・」

東の空に白い満月がうっすらと浮かぶ晴天の空に、一羽のイヌワシが滑空する姿がゲンジの目に映る。ふと突然、イヌワシを喰らうかの如く、口を開いて現れた巨大な竜が、ゲンジを見下ろして言った。

「我には感じる事は出来ぬが、そろそろ別れの刻が迫っているようだな。この装置のお陰で其方の姿を立体的に捉える事ができ、自らを実体として感じ取る事が出来るようになった我は、これからしばらく其方に会えなくなる事を少々寂しく思う」


実はゲンジがここに来る直前、AMATERASより支給されたウェアラブル端末はこれまでの眼鏡型とは異なり、左右其々の耳に掛けるイヤホンのような形状をしていた。この左右ふたつの端末にはそれぞれ投影機が仕込まれており、これらが映し出す其々の映像が重なりあう事でいま、3D化された巨大な白龍の映像がゲンジの目の前に出現していた。そしてゲンジのウェアラブル端末が検出したゲンジの姿勢や顔の表情のデータを用いて、白龍もまた3D化されたゲンジの姿を見る事が出来るようになっていたのである。


イヤホンから聞こえてくる白龍の声に目を細め微笑んだゲンジは言った。

「俺の目にもお前の姿は荘厳で、知的で、そして神聖な、本物の龍に見えるよ」

するとメガクルーザーの助手席から降りてきたモモが言う。

「これより白龍は十八年間、儂らの帰りを待つ事になるが、儂らにとってはたった一日でしかない。今度こそ全員無事に戻ってこれると良いが・・」

運転席から降りてきたゴウは、モモとゲンジの肩を同時にポンとたたいて言った。

「そう、向こうの世界ではたった一日しかない刻の中で、この中の誰かが死んでしまうかもしれん。だがそうはさせぬ、俺の命に代えてもな。それはそうと・・」

そう言ってゴウはきょろきょろと辺りを見渡した後言った。

「さっきも宇宙人の看板があったが此処はむかしUFO騒ぎがあった場所だよな」

ゴウの言葉に白龍が反応する。

「一九四七年、ロズウェル事件のことだな。このとき人類が本当にUFOに遭遇したか確証を得るデータは、現在検索している中では見つかっていない。だが当時此処に居た者が『何か得体の知れないものに遭遇した』可能性は否定できないようだ」

白龍の言葉に頷いたモモが言う。

「実はその頃、儂は常世国から帰ってくる際この地に降り立った事があってのう、その時偶然儂と一緒に此処に辿り着いてしまった常世国の民がいたのだよ。おそらくそれが・・その話は無事帰ってきたらしてやろう。それはそうと、いつもならこの辺で黒龍が邪魔に入るのだが、此度は今のところ奴も静かにしておるようだ。ゴウ、お主なら奴の動きを把握しているのではないか?」

モモの質問にゴウは首を横に降った。

「それが困った事にこのところ黒龍の情報を入手する事が出来なくなってさ」

「お主はこれまでずっと黒龍を監視し続けてきたのであろう。何かあったのか?」

「ここ数年の間に奴等の情報セキュリティが厳しくなり、最近はネットワークを介して奴らの情報を得る事は殆ど出来なくなった。どうやら世界最高水準のハードウェアとソフトウェアを組み合わせた人工知能が黒龍の背後におり、情報セキュリティを監視しているようだ。だがようやく分かった事もある。富裕層には臓器を、貧困層には肉を与えるJIGSジグス計画、あれはどうやら黒龍の人工知能が計画立案し、実行している」

「人間狩りをして解体し、それを利用する計画。お母さんはそのせいで・・でもそれが黒龍ではなく、AIがやっていたなんて言われたって、じゃあ俺は誰にこの怒りを、憎しみをぶつければいいんだ」

どこにもぶつけようがないゲンジの怒りにゴウが応えた。

「今まで通り黒龍も、そして黒龍の背後に居るAIも倒す事を考えればいいんじゃないかな。JIGSは人間を生産する者と消費する者の二つに分け、消費する側と判断された者は処分されるシステムだ。そしてこのシステムを構築するのに一番難しい課題は“何をエビデンスにして人間の善し悪しを判断するのか”なんだよ」

ゴウの言葉に頷いたモモが言った。

「全知全能なる神。世界中のありとあらゆる処に住む人間、一人ひとりの情報を入手して、感情に流される事なく善悪を判断する。然すれば極めて短時間で効率よく神の審判が下る、とでも云うのか」

モモの言葉にゲンジは歯ぎしりさせながら言った。

「その神の審判とやらを黒龍達が実行し、俺やお母さんを襲った・・。いくら全知全能だろうが、そんな事許されるわけがない。そのAIは何処にあるんだ。そいつが真の敵、お母さんの仇なら、黒龍と一緒に俺がぶっ潰してやるよ」

ゲンジの言葉にゴウは目をつぶり小さく首を横に振って言った。

「それが出来れば俺だってとうの昔にやっている。以前俺がスパイをやっていた頃の奴らのアジトは、いまはもぬけの殻だ。黒龍のAIは広大な施設を必要とするスーパーコンピュータ、スパコンを使っているものと思われるが、何処に引っ越したのか足取りが全く掴めていない。それにAI自体はプログラムであり実体が無い故、捕まえるのは非常に困難、現実的には不可能と言えるであろう」

「なら・・だったら白龍に頼めばいいじゃないか。お前は史上最強なんだろ?」

ゲンジの言葉に白龍は応えた。

「確かにAIを倒せるのはAIだけであろう。現在、我も奴の存在は確認しているがアクセスは非常に困難で倒すのはおろか、会って話をする事もままならぬ状態だ」

「だったら黒龍を捕まえて、そのAIを引っ張り出せばいいじゃないか」

ゲンジの言葉にゴウは頷いて言った。

「それは正論だと思うよ。だがそれも容易じゃ無い。中国政府を裏で操るまでになったいまの黒龍の力は強大だ。最先端のドローンを使った兵器で武装された黒龍の軍隊にまともにぶつかったところで、いまの俺達に/勝てる見込みはない。まあ、命を捨てて挑めば、或は何とかなるかもしれんが・・」

「だったら命懸けで挑めばいいじゃん。俺だって必死で戦う覚悟はあるんだ」

「ゲンジ、命懸けだの必死だのと、そのような言葉を軽々しく使うものではない」

「軽々しく、だと?お前こそふざけるな。俺はお母さんの仇を、人類の敵を討ちたいだけだ」

「落ち着け。間も無く“来るべき刻”が来る。現時点で黒龍が姿を現さないこの状況下で、何処にいるのかも判らぬ奴の討伐を考えたところで無駄というものだ」

「それもそうだな。俺がJIGSの話しなんかしなきゃよかったんだ。続きは俺達が十八年後の世界に無事帰ってきたら、また皆で考える事にしよう。それまで日本は勿論、この世界が十八年間もってくれるといいんだが・・」

ゴウの言葉にモモは頷くと、ゲンジに向かって言った。

「さてと・・ゲンジ、あとどれくらいだ?」

「え?あ・・あぁ、分かったよ、俺も熱くなりすぎていた。で、来るべき刻か・・。そうだな・・まだ先だけどぼんやり見えるよ。黒い空と白い光が・・この感覚だと、まだ四・五時間くらいあると思う。それにしても黒龍め、何処にいるのか分からないけど、奴はきっと来る予感がするんだ。そしたら俺が、必ず奴を倒してやる」

ゲンジの返事を聞いたゴウが言った。

「黒龍は皆で倒そう。その前に腹ごしらえだ。支度をはじめるとするか」

その言葉に頷いたモモは左手で持っていたラガヴーリンの瓶を持ち上げて笑った。

「ウム、では景気付けにアクアヴィーテでも一杯やるか。・・と、その前に儂は糞をしておかねばならぬな」

そう言って笑顔を見せたモモの口元には、相変わらず健康そうな白い前歯が光っていたものの、外観からは見えぬ奥歯は血が出たり抜け落ちたりと老化が進行している状態になっていた。このとき既に上下左右の奥歯は親知らずを含め三本ずつ、計十二本がごっそりと抜け落ちていた事は、ゲンジもゴウも知る由が無かったのである。


その後、西の空に太陽が沈み、東の空から昇った月が天頂に差し掛かった頃、身支度を済ませた三人がメガクルーザーの傍でキャンピングチェアに座り、透明なシリコン樹脂製のグラスに注がれたラガヴーリン18年を片手に佇んでいた。

モモは十八年前、ゲンジに会ったときと同じ、イリジウム製の鎧を身に纏い、三種の神器のひとつ“草薙剣”を鎧兜の鍔の上に差し込み、大太刀“フツノミタマ”は鞘に紐をつけて背負っていた。ゴウはAMATERASより支給された戦闘服に身を包み、モモから渡された“八咫鏡”を首にぶら下げて、腰の右脇には金剛杵を、左脇には柄頭に八咫烏が彫り込まれた両刃刀“アメノハバキリ”を携えていた。このゴウがいま身に纏っている服は一見、米軍のM51フィールドジャケットのようにみえるが、その素材はケブラー製の生地にカーボン樹脂で成形された真空断熱材とチタン合金を用いた高強度高断熱プロテクターを内蔵し、胸ポケットの中には最先端の電子技術を用いた各種センサ、通信装置等が装備された特殊なものであった。

一方、ゲンジは真っ黒い服を身に纏い、首には八尺瓊勾玉ヤサカニノマガタマをぶら下げ、そして先日仕上がったばかりのカーボンソード“タケミカヅチ”を腰の左脇に携えていた。そしてバイクのレース用革ツナギのようなシルエットのこの黒いボディスーツの素材は、タケミカヅチと同じくカーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン等を用いて製作した究極の防御性能を有するものであった。


“来るべき刻”が訪れる時間が近づき、少しずつ張り詰めた空気が三人の周囲を包み込んでいく中で、気を利かせようとでもしたのか白龍がゲンジに声を掛ける。

「ゲンジ、其方と我が協力して完成させたこの二つの武装はまさに究極の剣と究極の盾と言える。その剣“タケミカヅチ”で其方が身に纏うボディスーツを切るとどうなるのか、シミュレーションしようにも実力値が乏しい為、我にも見当が付かぬ。其方を待つ十八年の間、我の宿題としたいが、ゴウとゲンジで模擬戦は出来ぬものか」

「まさにホコタテ、矛盾だな。けど模擬戦やってどっちか壊れたらどうすんだよ」

白龍の言葉にゲンジがそう返すと、ゴウが面白がって言った。

「どれどれ、俺にそのタケミカヅチを貸してみなよ。試し斬りしてやるからさ」

「勘弁してくださいよ、ゴウさん。もしホントに切れたらどうするんですか」

ゴウの言葉にゲンジが右耳の横を掻きながら苦笑いしたところで会話が途切れ、辺りは静寂に包まれていく。

それから数分ほど経ったであろうか、ふとゲンジはキョロキョロと周囲を見渡した後、空を見上げて言った。

「ん?なんだろ・・これは、なにか・・・くる」

ゴウも上空の空を見上げて言った。

「そうなのか・・俺にはよく分からんが、ゲンジの予想より少し早かったのかな」

二人の言葉にモモが立ち上がると頷いて言った。

「では、参るか」

ゲンジは首を振って言った。

「ちがう。これは・・・みんな、離れろ!」


ゲンジがそう言った直後、濃紺のメガクルーザーのフロントフェンダーが、先程の夕日を思わせるオレンジ色の光を発しはじめる。そして車体外装の側面全体が光に包まれた後、メガクルーザーFCEVの巨体は「ボオォーンッ!」という大きな爆発音と共に吹き飛んだ。

「これは・・・THEL」

湖の岸辺にうつ伏せになったゴウがつぶやくと横にいたゲンジが聞いた。

「THELって・・何?」

すると白龍の声が聞こえてくる。

「Tactical High Enagy Lazer、戦術高エネルギーレー・・ザザッ・・ピィーッ・・・」

「どうした白龍、何かあったのか?端末の故障か」

ゲンジはイヤホン型ウェアラブル端末を人差し指で軽く叩いた後、大声でモモとゴウに言った。

「俺達が月の光に吸い込まれていく途中であんなものに狙われたら、ひとたまりも無いぞ!」

「儂が破壊してくる。お主たちはここで“来るべき刻”を待て」

そう言って立ち上がろうとするモモの肩を掴んだゴウが言う。

「まあ待て。こういう時はキャラ的に俺だろう。ここは俺に任せろ」

「何か策はあるのか?」

「ああ、お前から預かったコイツの能力チカラを試してみるさ」

ニヤリと笑ったゴウは首の紐を引っ張りモモから譲り受けた八咫鏡ヤタノカガミを出した。

「成る程、確かにそうかもしれぬ。では済まぬ。ここはお主に任せるとしよう」

モモがそう言うとゴウは素早く立ち上がり、先程メガクルーザーに放たれた光の方向に向かって走っていった。しばらく走っていくと、丘の上から強烈な白色光がこちらを狙っているのがみえてくる。

「コイツは・・・こりゃあヤバイな」

そうつぶやくとゴウは首にぶら下げていた八咫鏡の紐を千切り、左手で持って前方に構えた。

その直後、THELから発せられた光は、八咫鏡を持つゴウの前で四方八方に拡散していった。そして鏡の直径とほぼ同じ10cm程度の光の束は180度反射して照射された方向に向かって戻っていく。するとTHELのボディ表面がオレンジ色の光を放ちながら溶解していき、メガクルーザーと同じように吹き飛んだ。

「ブッ・ボッ・・ボボボォォンッ!」

爆発の轟音が振動となって体中に伝わるのを感じながら、ゴウは左手に持った鏡に映る自分の顔をみながらつぶやいた。

「ざまあみろだ。それにしてもコイツはすげぇな、傷ひとつ付いてねぇ」

それからゴウは残存する敵の数を確かめる為、爆発したTHELに向かって更に進んでいった。

(でもこれって米軍の兵器だよな。俺達を攻撃してきたのは米軍なのか?)

そんな事を考えながら近付いていくと、飛び散ったTHELの破片の周囲にひとりの人影がみえる。ゴウは胸ポケットからtasco社製の光学デジタルハイブリッド双眼鏡を取り出して覗いてみた。

「ちいっ・・そういうことか。噂には聞いていたが奴等、まさか本当に米軍と組んでいたとはな」

そこには仰々しい白いパワードスーツを纏ったひとりの人間の姿がみえる。デジタルズームを最大にしてその男の顔を照合した結果、ゴウがこれまでに何度も顔を合わせてきた顔と名前が、双眼鏡のディスプレイに映し出された。

「やはり黒龍・・か。俺たちがこの場所から常世国に向かおうとしていることを、お前はどうやって知ったというのだ?」

双眼鏡を覗きこみながら奥歯を噛みしめるゴウの目に、緊箍児のようなものを額に付けた黒龍の目が合う。金色のリング形状をしたウェアラブル端末を頭に装着した黒龍は、右目の前方に設けられた透過型ディスプレイを通してニヤリと笑い、持っていた木の棒をゴウに向けて何か喋った。

その直後、頭上から複数の自動小銃がフルオートで連射される音が響き渡る。

「バラバラバラバラッ!」・・・「ダッ、ダダンッ、チュン、チュインッ」

ゴウが伏せた目の前の岩に火花が飛び、跳弾する音が絶え間なく響く。

「ドローン・・か。これまで対峙してきた超能力者より遥かに厄介な敵だな。拳銃やライフルで撃ち落そうとしたところで上空から複数のドローンに狙われたら勝負にならんし、刻を止めても飛び道具の火薬は点火しないから使い物にならんし。仕方がない、向こうに行くまでは温存しておこうと思っていたのだが・・」

そう言うとゴウは腰に差していたアメノハバキリを右手で抜き、左手で金剛杵を持って刀の柄頭に差し込んだ。すると柄頭の辺りからキーンという微かに高い音がしはじめ、アメノハバキリの切先の空気が歪みだす。その様子を見て頷いたゴウは目を瞑り「願わくば我に七難八苦を与え給え」と呟くと、大きく目を開いて全身の力をへその下辺りに集中させた。

するとゴウの周囲から風が止み、音が消え、全ての物体がその動きを止める。

辺りがしんと静まり返る中、ゴウはひとりアメノハバキリを構え、頭上でホバリングしているドローンに振り翳した。これを複数のドローンに向かって繰り返してその切先を下ろしたところで、再び風が吹き、音が聞こえはじめる。

すると、上空に向かって伝播していった“空気の歪み”がゴウの頭上に浮かぶドローンに達したところで、それまで空中に浮かんでいたドローンは次々と破壊され地面に落下していった。足元にドローンの破片が散らばっていく中で、ゴウは背後に何者かの気配を感じる。

「バキーンッ!」

背後から左胸の心臓を正確に狙った攻撃を、振り返り様にアメノハバキリで受け止めたゴウの前に現れたのは、白いパワードスーツ姿の黒龍であった。

「久しぶりだな、黒龍。いつの間にやらお前の手下共は能力チカラを持つ異能者ではなく、こんなガラクタ共になったのかい」

壊れたドローンの破片を踏み潰しながらそう言ったゴウに、黒龍は応える。

「ゴウタロウ・・いや、平清将。裏切り者はさっさと片付けてあげるよ」

不敵な笑みを浮かべる黒龍にゴウは言う。

「裏切る?ハナっから俺はお前の仲間にもなっていなければ裏切ってもいない。それにいまの俺は以前とは違うぞ。今日こそお前の首を飛ばしてやる」

ゴウが黒龍と対峙している様子を、念話の能力を使って脳裏に映し出していたモモがゴウに伝える。

(ゴウ、黒龍が持っている桃木剣には気をつけろ)

(剣って・・モモ、どう見てもただの木の棒だぞ。何を気をつけろと言うのだ?)

(その剣には特殊な能力が・・)

モモが念話でゴウにそう伝えたところで風が止み、音が消えていく。それから間も無く、ゴウのアメノハバキリと黒龍の桃木剣がぶつかり合う音が鳴り響いた。

「カンカンッ、カンッ!カンッ・・カンカンッ!・・カンカンカンカンッ!」

幾度となく桃木剣を受け止めていたゴウは顔を強張らせ心の中で呟いた。

(何・・駄目だ。もう刻が動き出す?幾ら何でも早過ぎる。これが奴の能力・・)

一方、不敵な笑みを浮かべながらゴウのアメノハバキリを振り払った黒龍は、ゴウの腹部を勢いよく突いた。

「ゲフッ・・そうか、いまようやく分かったぞ。ヤツの剣の能力は・・・ゴホッ」

苦痛の表情を浮かべながらアメノハバキリを持っていた手の力を緩めたゴウは、剣を地面に落としてゆっくりと倒れていった。それからバタンと地面に倒れ込んだゴウの息の根を止めようと、黒龍が桃木剣を両手で構え突刺そうとした瞬間、ゴウと黒龍の間に黒い影が現れる。

「これはまさか・・ゲンジ、なのか。ゼェ・・ゼェ・・だがいまお前がその能力を使ってしまったら、お前の身体は、ゼェ、ゼェ・・」

「ほお・・君はあの時、僕が毛細血管を破壊して死ぬ筈だったんだよね。どうやって治したんだい?まあいいさ、今度こそ殺してあげるよ。そして君の母親と同じように解体して、臓器は富裕層に、肉は貧困層に配ってもらえば君も本望だろう」

ゴウを背に、黒龍の前に現れたゲンジは鬼神のような形相をして言った。

「俺は十八年間、お前に会いそして倒す刻をずっと待っていた。だがお前を殺す前に聞きたい事がある。人間を殺して臓器や肉を人間に与える、その目的は何だ?」

「簡単な事さ。人類の存続、更なる繁栄だよ。人間は増えすぎたんだ。だから減らさなきゃならない」

「その為に人間を殺すのか?殺していい人間なんて、そう居るもんじゃない」

「いくらでもいるさ。これまで人間達は殺し合い、無益な戦争を繰り返してきた。その発端は人間の本能である食欲、物欲、性欲、支配欲、欲ばかりだ。僕はそいつらのお陰で散々な目に遭ってきたんだ。戦争なんて馬鹿げてる。だからそういう人間は裁かれるべきなんだよ。一方、未来に残したい人間は守らなければならない。その選択が出来るんだよ。JIGSという神の意思でね」

「その“神の意思”とやらでお母さんは殺された。お母さんは本当に裁かれるような人間だったのか?あんなに優しくて、真面目で、誰からも愛されたあの人が・・」

「君にとってはそうなのかもしれぬが、青龍にとってそれは重要ではないのだよ。最も重要なのは、その者がいま生産する側なのか、消費する側なのか、だ」

「黒龍、お前は戦争を憎んでいるみたいだけどさ、お前のやっている事は戦争そのものじゃないか、お母さんのように何万人もの罪もない人々を殺しているのだろう」

「違う!僕は戦争の無い世界を作り上げるんだ。そしてそれはもう少しで実現する、青龍のお陰でね。人類全体の為の犠牲は犠牲と言わないって青龍が言ったんだよ」

「もう・・なにも言うまい。ここでお前には死んでもらおう」

ゲンジがそう言った直後、モモの声がゲンジの脳裏に響く。

(突然消えたと思ったら黒龍の前に居たとはな。一体何を話していた?兎に角、今のお主の能力では奴に勝てぬ。それよりも今は“来るべき刻”を優先しろ)

(俺はこの刻を十八年待っていた。俺にとって“来るべき刻”とは常世国に行く事であり、お母さんの仇を討つことでもあるんだ。だから俺はコイツを倒して、常世国に行く!)

(よせ!)

そう制止するモモの声を無視したゲンジは、鞘から抜いたタケミカヅチを黒龍に向かって構え、身体を前に蹴り上げると共に振りかざした。

その瞬間、風が止み、音が消え、刻が止まる。

周囲のすべての物体が静止している中、ゲンジがタケミカヅチを振りかざそうとしたところで突然周囲の音が聞こえはじめ、ふたたび刻が動き出す。

「ブウンッ!」

空を切るタケミカヅチの切先の向こうを見ながらゲンジは声を上げた。

「えっ・・そんな、黒龍が居ない。ヤツは何処へ行った!」

辺りを見渡すゲンジに向かって、呼吸が乱れたままのゴウが念話で伝える。

(ゲンジ・・気をつけろ。奴の持っている桃木剣は・・)

(君は余計なことを言わなくていいんだよ)

ゴウの言葉を制止するようにゲンジの脳裏に響く声と共にゴウの前に現れた黒龍は持っていた桃木剣をゴウの首に向かって突き刺した。

「カーンッ!」

黒龍の桃木剣をカーボンソード“タケミカヅチ”が払い除ける音が周囲に木霊する。

(あれ・・?コイツが止めた刻を僕は桃木剣を使って動かした。でもコイツは僕が動かした刻をまた止めた・・。桃木剣は奴の能力を完全に無力化出来ないのか?)

(能力を無力化する剣だと・・そんな能力、俺が何度でも覆してみせるまでだ)

目を血走らせながら対峙するゲンジに向かって、黒龍はニヤリと笑って返した。

(少しだけ驚いたよ。でももう一度やってみるがいいさ。君、もう既に死のフラグが立っているよ)

(言われなくても・・・)

それからまた刻が止まり、無音の中を幾度となく互いの剣を交えたところで、突然ゲンジは脳裏にまで突き抜けていく音と共に腹部に激痛を感じる。

「カーンッ・・・ドスッ」

「ゲフッ・・止めても止めても、刻を動かしてくる。これじゃ俺の方が先に体力の限界が・・どんなに必死に足掻いたところで、結局俺は奴に勝てないのか・・・」

腹部を押さえてうずくまるゲンジの前に立った黒龍は言った。

「あれ?やっぱり突き刺した感触が変だ。さっきもそうだったけどその服のせいで貫通していなかったという事か。でも、いつまで持つかな」

(ゲンジ!黒龍の桃木剣は俺達の能力を封じるものだ。であれば、俺とお前が協力して止めた刻ならば、奴は再び発動する事がそう簡単には出来ぬ筈・・)

(だから、君は黙っていればいいんだよ)

それから黒龍の姿がふたたび消え「グサッ」という音と共にゴウの前に現れる。

「グボッ、ゲフッ・・さっきと寸分違わぬ同じ場所を狙ったというのか・・」

ゴウの腹に深く刺さった桃木剣をゆっくりと抜きながら、黒龍はゲンジに言った。

(さあ、次は君の番だよ)

「ゲンジ、逃げろ!」

背中を丸くして蹲るゲンジに向かって桃木剣を構えた黒龍の身体が、突然「ドンッ」という音と共に吹き飛ばされる。

「な・・・何?」

ゲンジを背に、黒龍の前に姿を現したのはモモであった。

(済まぬ、待たせたな。儂の周りのドローンを片付けるのにちと梃子摺ってのう)

ゲンジも念話でモモに返した。

(モモッ!お前には刻を止める能力は無いんだろ?お前の方こそ、奴に勝てる訳無いじゃないか)

(フム、確かに儂には刻を止める能力は無いが、それでもこれまで千年もの間、幾度となく儂は此奴と対等に対峙しておる)

(でもどうやって?黒龍が止めた時間の中を防御するんだ)

(よおく見ておれ。命を懸けるとはこういう事だ)

ゲンジとモモの会話に黒龍が割って入る。

(全部聞こえているんだよ、モモタロウ!今日こそ殺してあげるよ)

それから黒龍は三度刻を止め、モモに向かって桃木剣を振りかざした。

だが、首に向かった切先はモモの肩のプロテクターに当たって跳ね返ったところで「カーンッ!」という甲高い音と共に刻が動き出す。

「カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カッ!!!」

ふたりの武器がぶつかり合う音と共に、ゲンジの目にはモモと黒龍の対峙する様子が、一コマ一コマをつなぎ合わせて作ったパラパラ漫画のように見えた。

(す・・すげえ。でもなんとなく分かってきたぞ。ふたりの動きから予測すると、黒龍が刻を止められるのは俺と同じで1秒程度。そして黒龍が刻を止めている間に動いた姿勢から、奴の次の行動を予測したモモは、黒龍が次に刻を止める前に、常人には見えない速さで黒龍を攻撃、或いは防御しているって事なのか・・)

ゲンジの考えている事が聞こえたのか、モモはゲンジに伝えた。

(左様、此奴とは幾度となく対峙してきたが、互いに致命傷を与える事は出来ても倒す事は出来なかった。だがもし、儂があと少しだけ速く動く事が出来たら、或いは黒龍がもう少し長い間、刻を止める事が出来たら、勝負は決していたであろう)

(やっぱりそうなのか。で、今度こそ勝てそうなのか?)

(判らぬ。・・が、ちと押され気味だのう。此度は儂の方が先に参るかもしれぬ)

時間を止められる能力と、見えない速さで動ける能力。

黒龍が1秒間、時間を止めている間に身体を動かすと、モモは黒龍が1秒間に動いた姿勢の変化から次の動作を予測し、0.1秒以内に対応する動作を完了させる。

そのどちらが強いのか、結果は前触れもなく突如訪れた。

「カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カ!カッ・・・キーンッ!!!」

ふたりの武器がぶつかり合う音が途切れた直後、モモの大太刀“フツノミタマ”が宙を舞う。それから「ズザッ」という音と共にフツノミタマが地面に刺さったところで、桃木剣の切先をモモの眉間に向けた黒龍が仁王立ちする姿がゲンジの目に映る。

(モモっ!逃げろ!)

ゲンジの声に身体を動かせないモモは呟いた。

(ハァッ、ハァッ・・奴の方が僅かに速かった。ハァッ、奴のパワードスーツは刻が止まっている中でも機能しているのか。それとも・・儂も歳なのかもしれぬ)

モモの心の声が聞こえたのか、黒龍はニヤリと笑うと「これで最後だ。補助動力、出力最大」とつぶやいてパワードスーツのアシスト量を最大限に引き上げた。

「キイイイーン・・・」

パワードスーツから高周波音が聞こえてくるのと同時に黒龍は持っていた倒木剣を僅かに引いた後、モモの眉間に向かって突き刺した。

(させるか。お前だけは・・お前だけは絶対に許さない!)

ゲンジがそう思った直後、ゲンジの胸元が緑色に輝きはじめ、黒龍の視界をホワイトアウトさせていく。

(なんだ?また刻が止まった。待て!僕ももう一度刻を・・駄目だ、もう限界か)

それからその緑色の光が消えていくと共に視界を取り戻した黒龍は左胸を押さえ、少し苦しそうな表情をしながらニヤリと笑って言った。

「ハァッ、ハァッ・・奴のあの光はおそらく三種の神器、勾玉の能力。あれを手にすれば僕にもあの能力が手に入るんだ。ハア、ハァッ・・まあいい、僕が予知したあの景色はもうすぐ目の前に現れる。僕も行くんだ、そこに・・・」

「モモ、ゴウさん、大丈夫?」

月の光が収束していく中、その光が照らし出す大地にモモとゴウ、そしてゲンジ、三人の姿が現れる。ゲンジの言葉に腹部を押さえながら苦笑いしたゴウは言った。

「AMATERASって組織は、ずっと昔からウチの一族とは色々あってさ。はっきり言って嫌いだったけど今回ばかりは助かったよ。この服を着ていなければ、今頃俺の腹には風穴が開いていた筈だ」

モモは、ゲンジの肩に手を乗せて言った。

「ゲンジ、済まぬ。我等三人の腹部には、強い衝撃が加わると急速硬化する特殊なシリコーン樹脂製のプロテクターが入っている。普段は柔軟性を有するシリカゲルが黒龍の攻撃を受けた事で一瞬のうちに砂に変わリ、サンドバッグと化した。結果、黒龍の桃木剣の威力は減衰し、その切先がCNTカーボンナノチューブクロスの皮膜を破る事はなかった故、お主らも大事に至らなかったのであろう。だが一度砂と化したそれは、プロテクターとしての効力を失った。故、次は無いぞ」

それを聞いていたゲンジもゴウに話し掛ける。

「ゴウ・・さん。ホント、無事でよかった。俺もこれでしばらく能力は使えないけど、ここまで来れば大丈夫・・だよ、ね」

そう言って瞼を閉じていくゲンジの身体を抱き抱えたモモは頷いた。

「ウム、ご苦労であった。流石にここまで来れば奴も手出し出来まい」

だが、それから三人の視界が金色に染められていく中で突然黒い影が現れる。

「クックック、貴様らの代わりに僕が、異世界に行ってあげるよ」

突然モモの目の前に現れた黒龍を、ゴウは睨みつけながら言った。

「気を付けろ!あのパワードスーツのお陰で奴の体力は未だ温存されていたんだ」

「その通りだよ。でも折角気付いたのに残念だね。君達はもうすぐ死ぬのだから」

それから再び風が止み、音が聞こえなくなっていく世界のなかで黒龍はひとり、モモが抱き寄せていたゲンジの前に立つと桃木劍を突き刺した。殆ど意識を失いつつあったゲンジは、ゆっくりと腹部に刺さっていく黒龍の剣の痛みを感じながら思った。

(これで終わり・・か。人生ってあっけないもんだな。ゴメン、お母さん・・)

ふと突然、黒龍の脳裏に強烈な念波が聞こえる。

(願わくば、この生命と引き替えに、我に永遠の刻を与え給え)

それから風が吹き、刻が再び動きはじめたところで、眼下のゲンジの姿を見た黒龍は顔を歪ませ言った。

「これは・・何故此奴に入れ替わっている?!」

腹部に深々と桃木剣を刺されていたのはゲンジではなくゴウであった。

ゴウは黒龍に向かって血を吐きながら、ニヤリと笑って言った。

「ゲフッ・・残念だったな黒龍。いくらお前でも、流石にもう能力は使えまい」

そしてその太い両腕を素早く黒龍の首に回し、桃木剣が刺さったままの胸元に黒龍の身体をたぐり寄せるとモモに向かって言った。

「ホントはお前達と一緒に行きたかったけど、ご覧の通り俺はもう無理だ。代わりにコイツは俺が地獄に連れて行く。モモ・・ゲンジの事はお前に任せだぞ」

「何をする!離せ!ええいっ、ぶっ殺してやる!」

胸元で黒龍が喚く中、ゴウは「じゃあな」と呟くと目を瞑って唱えた。

「刻よ・・・止まれ」

その直後、ゴウと黒龍の姿はモモの視界から消えていった。

録画した動画をスキップさせているように、次々と目の前の光景が変わっていく様子を目の当たりにしたモモは、ゴウが立っていた筈のところに身体を宙に浮かせた状態で眠り続けるゲンジに向かって呟いた。

「瞬間移動で入れ替わるなど出来ぬ筈、奴にはなにか別の能力が・・・何れにしてもゴウは身を呈してゲンジの身体を守ったというのか」


それからゲンジとモモを包み込んだ光の束が天頂に向かってすうっと消えていった後、月の光がやわらかく照らしはじめた大地に、ひとりの人影が立っていた。

「フウ・・危ないところだった。流石の僕も今回ばかりは死ぬかと思ったよ」

口元を少し震わせながらそう言った後、モータの焼き切れた焦げ臭い匂いと白い煙が立ち上るパワードスーツを脱ぎはじめた黒龍の足元には、上半身と下半身が分離した遺体がひとつ、横たわっていた。

ふと、黒龍が額につけたウェアラブル端末から声が届く。

「黒龍様、お見事でした」

その声に黒龍は左手を耳元に寄せ、頷いて返した。

「ああ、青龍か。君が助言してくれたパワードスーツは大いに役立ったよ。恐らく此奴の最後の能力とは、僕が刻を止める能力とは反対の能力。きっと自らの命と引換えに、自分自身の刻だけを永遠に止められる能力なんだろう。周りの刻が動き続ける中で奴の刻だけが止まり続ける世界、その奴の止まった世界に僕も閉じ込めようとしたんだと思う。だけど止まった奴と僕の身体があの光の束から元の世界を跨いだ瞬間、時空のズレが生じたのだろう。僕は一瞬、刻が動くのを感じる事ができた。そしてほんの少しだけ瞬間移動を使う能力が残っていた僕は奴の腹に刺さっていた桃木剣を再び手にし、パワードスーツの出力を限界まで上げて奴の身体を真っ二つにしてやったという訳だ。お陰で助かったけど・・つまり、これを着ていなければ間違いなく僕は死んでいた」

そう話す黒龍の姿は、いつもの十代の少年のようではなく、その目尻や頬からはげっそりと痩せ細った老爺のようにも見えた。

「黒龍様の戦いぶりは可能な限り拝見しておりましたが、光の柱の先の映像は私の目からは伺うことが出来ませんでした。何れにしても黒龍様がご無事で何よりです」

「そうか、やはりこの世界のCCDカメラからは常世国に通じる世界は見えないのだな。それはそうと、このパワードスーツはもう使い物にならないんだけど、新しいやつはまだ完成していないのかい?」

「はい、現行型kaiは既に完成しておりますし、次世代型の開発も進んでおります故、彼等がこの世界に帰ってくる十八年後は、圧倒的に黒龍様が有利になるでしょう。それから別件ですが、例のワクチンがようやく完成しました」

その言葉を聞いた黒龍は顔中に皺を寄せ、高笑いしながら叫んだ。

「フフッ・・ハハハ・・・ハアッハッハッハッ!そうか、遂にやったか。これで僕はすべての国を支配し、戦争の無い世界をつくる事ができる」

「では、計画を開始しますか」

「いや、そのワクチンを使うのは未だ早いよ。もう少しこの世界の人口が減ったところで少しずつバラ撒くんだ。そうすれば僕達はヒーローだよ。鶏も、豚も、牛も、そして人間もみんな助かるんだからね。だからいまは君がつくった“JIGS”(ジグス)を使って、善い人間を生かす為に悪い人間をもっと減らそう」


その頃、新潟県のとある場所に設置された世界トップクラスの性能を誇るスーパーコンピュータ施設が何者かに破壊されていた。実はその施設とは、白龍のプログラムが収められているAMATERASの極秘施設だったのである。

そしてまた、そこから程近い大学病院の脳外科病棟で働いていたゲンジの同級生、陽子は自らが担当医を務める患者に、これから行う手術の説明をしていた。

「今日はいよいよ手術をする日だね。でも心配しなくても大丈夫。ほら、ココを触ってみて。私も子供の頃に同じ手術をして、今でもここにはシャントレギュレータが入っているのよ。あ、でもね。私のはレギュレータは圧力センサも内蔵されてないし、バルブ機能が正常に働いているかどうかを知らせる機能も付いてない、とっても旧いタイプのものだけどね」




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