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これは、まずいかもしれない

お待たせしましたー!新キャラも登場して波乱の展開!?です!

 

 ……今、なんて言ったの?


 私はハゲかかった頭のほろ酔いおじさん――この国の外交官に怪訝な目を向ける。


 ここは国の重要ポストたちが集う会食の場。私はノアの婚約者として出席させられている。

 正直、次にどの国の誰がくるだとか、そういうのはどうでもよかったのだけど。


『来週やってくる隣国の宰相の護衛を、聖女様と騎士様に任せようと思う』だって?


「失礼ながら、聖女様方にはどうやってそれをお伝えするおつもりで?」


 隣に座るノアがそうにこやかに尋ねた。なぜだか、ノアはイラついているように見える。


「ああ……考えてなかったな。まあ、聖女だし魔法使えるしわしらの考えていることくらいわかるだろう」


 がははとがさつに笑ったおじさんに私までキレそうになる。なんて無責任な。そんな便利な魔法あるわけがない。おじさんたちの心の中なんて見たくない。

「へえ?」と貼り付けた笑みのままだったが、ノアはそれ以上追及しようとはしなかった。


 そんな私のイライラも知らないで、おじさんたちはすっかり「我が国の聖女様と騎士様をぜひ見ていただこう」と躍起になっている。


 ……ちなみに、その宰相との交流及び会合には私も出席することになっている。


 つまり、エラとエレナ、同時に私が2人存在しなければならなくなるわけで。


 一体どうしようか、と私は頭を抱えた。





 ***





 王宮は忙しなく人々が行き交っている。

 それはもちろん、宰相がもう少しでやってくるからだ。


 結局私は緻密なスケジュールを練り、どうにかエラとエレナを交代することにした。例えば、エラが部屋で休む、という時間にエレナとして現れるだとか。


 そういえば、あながちハゲおじさんの言っていることは間違いではなかった。ノエルに伝えたところ、なぜかノエルもこの情報を知っていたからだ。ちなみに、ノエルはハゲおじさんのことを「あの人面倒くさいよね」なんて笑っていたりもした。


「エラ、緊張してるんですか?」

「まあ……忙しくなりそうだなって」

「そうですね、彼、2週間滞在しますからね。僕も休む時間がなくて今からちょっと憂鬱です」


 ノアがこそっと耳打ちをしてくる。エントランスで宰相の乗る馬車を待っている今、こんな話をしていたらハゲおじさんに何を言われるか。


 だけど、ノアと同意見だった私は「私もです」と笑う。

 2週間も外交と護衛をしなければならないなんて、誰か特別手当を出してくれたっていいんじゃないかな。


 ぼうっとそう考えていれば、豪勢な馬車が目に入った。

 到着し、扉が開くのと同時に私は控えめにノアの後ろに佇む。


「はじめまして。僕はヨシュア・ベイリーと申します。お会いできて光栄です」


 ……え。

 馬車から降りてきた美青年に思わず目を見張る。

 ハニーブロンドの髪に、深い海のような青の瞳。それに彼は黒いスーツを着こなしていた。


 まるで、ノエルみたいだ。


「私はエラ・イスメラルダと申します」

「……素敵な名前だね。それにそのエメラルドブルーの瞳も綺麗だ」

「あ、ありがとうございます」


 しっかり見つめてしまって挨拶がワンテンポ遅れてしまったけれどヨシュアはにこりと微笑む。

 というか、同じく金髪で青い瞳で美形のノアと、ヨシュアが並ぶと壮観というか、なんだか眩しい。


「あれ、聖女様は? 会えるのを楽しみにしていたのですが……」


 ヨシュアは辺りを見回して、分かりやすく肩を落とす。すかさずハゲおじさんが「すぐ来ます!」と雑なフォローを入れる。


 しかし、私がここにいる限りはエレナは現れない。

 お願いだから、早く来て、と私はノエルに心の中で祈ったのだった。




 ***




 私は今、ノエルを睨んでいた。


 ヨシュアがやってきて3日目。眠い。それはもう眠い。

 あれから、私は休む間もなく動き続けている。ちなみに今は本業であるシャドウ退治を行った後だ。


 お偉いさんたちとの食事に、やたら聖女に興味津々のヨシュアとの交流……なから順調ではあるけれど過労でどうにかなりそうだというのに。


「忙しいね、ほんと」

「ええ、そうね。でも、3日も経つのにあなたに会えないなんておかしいと思わない?」

「そ、それは……もともと行けないかもしれないって言ってあっただろ?」


 ノエルはきまり悪そうに告げる。

 私もノエルもなぜお互いが忙しいのが理由を話あったわけではないけれど、ノエルも見るからに疲れが溜まっていそうだった。


「宰相の護衛より大事なことなの?」

「……立場的には、そうだね」

「あらそう」


 ……まただ。

 ノエルが言葉を濁したのを感じ取った私は訝しげに彼を見つめた。何かを隠していることは明白。まあ、だからといって彼に話すよう迫ることはしないけれど。


 だけど、こうも怪しいと色々勘繰ってしまう。


 ノエルがあの場にいる人物なのではないか……とか。


 もし、仮にそうなのだとしたら、ハゲおじさんのことを知っていたのも、男性陣は常に政治問題や経済について話しているから私のようにすぐ変身できないのも納得がいく。


 そうなると、かなり人数が絞られてくるのだけど――


「エレナ?」

「ああ、いけない。そろそろ戻らなくちゃ。ヨシュア様の護衛……というよりかは質問攻めにあってこないと」

「……そうだね」


 ノエルの普段の姿は探らないって決めたのに。言った私が探ろうとしているなんて。

 ノエルに「来てね!」と念を押してから私は飛び立った。




 ***




 コンコン、というノック音で私ははっと目を覚ました。

 どうやら戻ってきてすぐ眠ってしまったらしかった。体を起こした私はまだぼやける視界で、焦りながら立ち上がる。


「エラさん? 僕です、ヨシュアです」

「はい、今開けます!」


 パタパタとかけていき、ドアを開ける。

 そこにはにこやかなヨシュアが立っている……というよりかは目を見開いたまま固まっていた。


「ええと、どうされました?」

「…………その、格好って」


 首を傾げ、目線を下げる。やっとクリアになった視界に映ったのは真っ白のローブ。

 顔面蒼白。慌てて部屋を見回すもここは間違いなくエラの部屋で、私はエラとしてドアを開けてしまっている。


 つまり……詰んでしまったわけで。


「と、とにかく中へ入ってください!!」


 私は強引にヨシュアを部屋の中へ連れ込むと、そのまま流れるように頭を下げたのだった。


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