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第4話~墓場

少し前の3話に比べると短めです

「それじゃ早速行くっすよ!」

 神崎は生き生きとした表情で楽しそうにしている。

 子羽は反対に少し震えているのか、動きがぎこちない感じだ・・・まだ入り口なのに大丈夫なのかね?

 不安しかないがここまで来た以上は、一度中に入るしかない。

 それをわかっている子羽もゆっくりと墓場の中へと足を踏み入れる。


 そこからクルっと中を歩いているけれど、普通にお墓が置かれてるだけでオカルト的な事は何も起こらないし、起こりそうもない。

 そのおかげか子羽の歩みも普段通りになっていた。

「な~んも起こんないっすねぇ・・・もっとバチバチとした何かが起こると期待してたのに、これじゃ期待外れっすよ」

「まぁこんなものよ、オカルトなんてありえないわ。今までのもただの錯覚だったんでしょうね、こういう話に尾ひれがついて話が膨れ上がる事なんてよくあることよ」

 

 俺の前で雑談しながら先へ進んでいる二人、俺は玉藻と並んでその後ろを歩いているのだが・・・

「気付いておるか主様よ」

「あぁ、嫌な気配がするからな」

 前の二人に聞かれないように小声で話す、墓場に入った時点で玉藻に俺たちを覆う結界を張ってもらってある。

 その結界のお陰で気付かれることなく進むことが出来ているという訳だ。


「墓場じゃからの、おそらくリッチやワイトみたいなのがおるんじゃろ」

 リッチもワイトも普通の存在じゃない、というかゲームや物語の中でしか見たことがない生き物だ。

 骸骨の人ならざる化け物・・・それがこの場所にいる可能性が高いと玉藻は言っているから、俺はそれの大元となっている物を探すが見当たらないのだが・・・今見つけたとしても子羽たちを連れたまま潰しに行くことはできない――故に結界で見つけれないように隠してある。


「あ~あ、結局何も起こらなかったっすねぇ」

 墓場を一周した結果、特に何も起こらずただ歩いただけだということで落ち着いた。

「やっぱりガセネタだね、流石にもう遅いし帰ろう!」

 これで二人を返した後に俺は玉藻とこの場所に戻ってこようと思いながら、墓場からでたのだが・・・出たところで一人の男が立って墓場の様子をうかがっていた。

 若い男が一人、おそらくこの噂を聞いて墓場にやってきたという訳だろう・・・携帯を墓に向けているところから写真を撮るのかな?


「・・・や、やっぱりやばいよここ・・・・・早く帰ろう」

 写真を撮った後、画面を見ながらブツブツとつぶやいてる男の姿は実に不気味だし、俺達に気が付いていない。

「ん~?あの人見覚えがある気がするっすね」

 不意に神崎が男を見ながらそんなことを呟きだした。

 暗いから正確にはわからないのか、あやふやだが見覚えがあるってことは同級生か近くに住んでる人なのかよくわからないが・・・今の神崎の一言で向こうもこちらに気が付いた。


「!?・・・か、神崎さん?」

「なんでうちの名前を・・・あぁ!クラスの男子っすよ!」

 近づいてみると神崎も男の事を思い出したようだ。

 同じクラスという事は俺たちの後輩か・・・


「それで名前は?」

「えっと・・・まだクラスの人の名前覚えてないっす・・・・」

 神崎はまだ覚えてないようだ。

「はは・・いいんですよ、僕は影が薄いですし印象に残りませんから。僕は雨水 シンヤ(うすい しんや)です」

 雨水といったこの男子の第一印象はあれだな、大人しそうな男子のイメージだな。


「そうそう雨水っすね!思い出したっすよ!で、何してるんすか?」

 調子のいいように言っているが、おそらく思い出してはないだろう。

 雨水も苦笑い気味だしな。

「僕は霊的な何かが写らないかと思って来たんだ・・・」

「一人で?勇気あるね~」

 その子羽の言葉に顔を暗くして俯かせる雨水、少し気になった俺は聞いてみることにした。

 何故一人でいるのかを・・・


「ここに来て写真を撮るって事は、霊的な何かを期待してたんだろ?違うのか?」

「・・・えぇまぁそうですけど」

「だったら何でそんなに暗そうな顔しているんだ?嫌ならやらなければいいだけだろう」

「別に、貴方たちには関係ありませんよ。僕は中に入るんでそれじゃ!」

 俺達から逃げるように雨水は墓場の中に入っていった。


「行ったな」

「様子が変だったわね、クラスでいじめられてんじゃないの?それで噂の墓場の心霊写真撮ってこいって脅されてるとかさ」

 俺と子羽は神崎を見るが、首をブンブンと横に振って否定する。

「いやいや!まだうちら同じクラスになって一か月も経ってないんすよ!それにうちはイジメなんかしないっす!」

「ココちゃんを疑ってるわけじゃないよ、まぁ月曜日とか気になった事とか何かあったら教えてね」

「わかったっす!」


 今夜はこれで解散となった。

 俺は二人を送った後、もう一度墓場まで戻ってきていた。

 だが・・・墓場の様子がおかしい、さっきまで墓場の中には不気味な嫌な気配がしていたのだけど、それが全て消えているではないか。

「ふぅむ、これじゃとごく普通の墓場でしかないの主様よ」

 玉藻の言う通りだ、まぁ良い事なんだけど気持ちが晴れやかにならないな。


「さっきの雨水って後輩が何かしたか?そういう風には見えなかったが・・・」

「まぁ人は見かけで判断できぬという事じゃの、今はこの場では何も出来ぬ。早く帰ろうぞ」

 綺麗な普通の墓場になった以上、俺の出番はない。

 それにもう夜も遅いから帰って寝ることにして、月曜日に雨水に聞いてみることにした。



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