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第2話~変な同居人が増えてしまったようだ

ごゆっくりお読みくださいませ

 暗い闇の中、これまでに世話になった人の顔が次々と浮かんでくる・・・これが走馬灯というものなのか?

 両親に子羽、学校の友人たち数人・・・浮かんで消えていく。

 人が死ぬとこういう光景を必ず見ることになるのか、もしくはまだ現実では死んでいなくてこれから死ぬところなのか興味深い。

 自分のことながらどこか他人事のようにおもえてしまう。

 さて、もう浮かんでくるものも無くなった・・・後は意識がなくなるのを待つだけか。

そして俺はこの暗闇の中の意識を手放していく・・・


「起きたようじゃな、気分はどうじゃ?」

 うっすらと目が覚め、声をかけられた。

 さっきまでとは違う穏やかで優し気な声は、どうやら九尾の声のようだ。

「あぁ・・・気分は悪くない」

 俺の返事を聞いて満足そうに頷く九尾、目覚めた体を起こすと予想以上に九尾の身体が近くにあった。

 そんな事よりもだ、体の傷が治っている・・・左腕も元通りにくっついているのはなんでだ?


「わらわの膝枕はお気に召したようじゃの」

「そんな事よりもこれはどういうことだ?なぜ俺が生きている。それに傷もふさがってるのはなんでだ?」

「そうじゃな、まずお主が気を失ってから半刻ほど経っておる」

 半刻っていうと・・・確か大体1時間だったはずだな。

 俺は1時間気を失っていたのか・・・


「その間に死にそうじゃったお主を救うために、勝手じゃが契約を交わさせてもらったんじゃ」

「なんだと?」

 不穏な言葉が出てきた。

 とっさに銃を取り出そうとしたが・・・銃がないことに気付く、九尾の笑みを見るにどうやら九尾が隠してるようだった。

「脅されるのは好きではない、悪いが武器はこっちじゃ。話を聞いてくれたら渡そう」

「・・・わかった」

 

 どのみちあの状況のままだったら俺は死んでたんだ。

 状況的に九尾が何かをしたのは間違いないしな。

「うむ、契約と言ったが別にお主に害をもたらすものではないから安心するのじゃ」

「内容は?」

 契約内容を聞かないと始まらない。

「簡単じゃよ、わらわの主になってもらったのじゃ!要するに使い魔じゃな」

 ふふん!と、どうよ名案だろみたいな感じで言ってくるが、どういうことかわからないな。


「お主、つまりは主様じゃな。主様には害はない、むしろわらわの力を多少なりとも使えるようになるはずじゃから有益なはずじゃぞ」

「いや・・・そういうことを聞いてるのではなく、何でそういう主従とかの思考になるのかがわからないんだよ」

「それはじゃな、そういう関係を結ばないと主様の傷を癒すことが出来なかったからじゃ。主従関係を結び魂でつながれたからこそ、腕をつなげ治すことも後が無く治すこともできたのじゃ」


 あぁわかった、これが恩返しか。

 俺はこの九尾に命を救われたんだ、あの状態のままだと死んでいたから契約を無理やり交わしたのだろう。

「そうか、助かったありがとう。アンタのお陰で俺は命を救われたようだ」

 素直にお礼の言葉を伝えた。

 過程はどうであれ、救われたのは事実なのだ。

「そう正面から言われると照れるの・・・」

「それでこの契約を取り消すのはどうするんだ?」

 後は契約を解除してこの街から出ていってもらえれば、事態は万事解決!だと思ったんだがな・・・


「ん?なにを言っておるのじゃ?解除とか無理じゃ。じゃからこれから一生一緒じゃ!不束者じゃがよろしく頼むぞ主様!」

 とんでもない事を言いだしたぞこいつ!

「なんでそうなるんだよ!契約できたなら解除も出来るだろ普通!」

「一番深い契約じゃから無理じゃ。それと他の小さい妖狐なら安心するがよい、安全なところに避難させたからの」

 マジかよ・・・これからずっとコイツと一緒に暮らすのか、力を考えると便利だけどさぁ・・・

 これは予想外だわ、こめかみを抑えながらなんとか状況を理解しようするが、上手く頭が回らない。


「ケガは治っておるが、失った血液は戻っておらぬ。早く帰った方がよいぞ」

 そういうことか・・・そりゃ飛び散った血液を回収なんて無理だもんな。

「そうだな、話は帰ってからだな」

 立ち上がり歩こうとすると足元が覚束ない・・・

「おっと・・大丈夫かの?」

 ふらっと倒れそうになったところをギリギリで支えられた。


「すまん、肩を貸してもらえると助かる」

「心得た我が主様よ」

 肩を借りてゆっくりと家まで帰る。

 外に出ると既に日は落ちて真っ暗になっていた。


「ふぅ・・・」

「ここが主様の家か、中々広いではないか!」

 ゆるりと帰ってきた後、九尾は俺の家を物色し始めた。

 それを横目にソファで寛ぐ・・・どうやら家に帰ってきたおかげで少しは頭が回りだした。

 何故殺し合いをした相手と暮らさねばならんのだ?わからん・・・

 だが害はなさそうなんだよな~あの嬉々として台所で料理を作ってる姿を見る限りでは問題なさそうな気がする。


「主様よ、ちと遅い時間じゃがご飯の用意ができたぞ。こっちに並べるから来ておくれ」

 声につられてテーブルに向かうと料理が並べてあった。

 焼き鮭にみそ汁、白ご飯に納豆・・・朝食か?というか・・・

「料理できたんだな」

「失礼じゃな!長年生きているとこれくらいの料理作れるわ!」

「ばばぁか・・・ごめんなさい」

 やべぇ、妖狐といえど女性に年齢の話は禁句のようだ。戦った時の非じゃない殺意が向けてきたぞ。


 大人しく出された料理を食べようか・・・お?美味い。

 さっきとはうってかわって期待したような目で見てくる。

「美味いな」

「そうじゃろ!こういうのが一番じゃ!」

 まぁ見た目は朝食だけど美味しいのは確かだった。

 

「それでさっきの話の続きなんだが・・・使い魔だったか、俺が学校に行ってる間はどうするんだ?さすがに連れていけないぞ、家で大人しくしてるか?」

「嫌じゃ!主様が外に出るときはわらわも一緒に行くぞ!・・・学校とは学び舎じゃろ、学校に行くときはこの姿になろうぞ」

 そう言って女性の姿から子狐の姿へと変わっていく九尾。

 一瞬で小さい子狐へと変化していった・・・これを連れて学校に行けと?


「どうじゃ、これなら文句ないじゃろう?」

「その状態でも喋れるんだな・・・仕方ないな、何とかごまかすか」

 正直この件に関しては何の問題もないのが俺の行ってる学校だったりする。

 無理でも一つだけ方法はあるしな。

 

「ごちそうさま。風呂に入ってくる」

「うむ!わらわは片づけをしておく、のんびりしてくるがよい」

 悪いがその言葉に甘えさせてもらおう。


 浴場に入ると、しっかりと湯舟も張られていた。

「ここだけを見るとすごいできる嫁をもらった感じだよな、九尾だけど・・・」

 体の汚れを洗い流していく、鏡で背中――それも重傷だったはずの左側を見てみるが、そこには焼けた後のない綺麗な肌が写りこんでいた。

 左腕も何の違和感もない、本当に一度ちぎれたのか考えたくなるほどだ。


「はぁ~それにしても疲れたよ・・・今までで一番疲れた一日だったな」

 ゆっくりと湯舟に浸かってから浴場から出る。

「お?なんじゃもう出るのか?せっかくわらわが背中を流してやろうと思うたのに・・・」

 出ようとしたら全裸の九尾が現れた。

 いや、一応タオルで隠してはいるが九尾の体つきも相まって何かエロい・・・これはまずい!


「なんじゃ?呆けた顔をしおって・・・もしや主様よ、わらわの身体に欲情しておるのか?浴場で欲情しておるのかの?」

 なんてこと言ってやがるコイツ!ここで付き合ってやるのはまずい、さっさと出ていかないと。

「してねぇよ!俺は先に上がってるから、ゆっくりしてろ!」

「つれないのぉ」


 九尾の浴場に置いて俺は自分の部屋へと向かう、これからこんなことが起こるのか?慣れていかないと・・・

 それから数十分くらいの間、俺は机である作業を黙々とこなしていた。

 少し休んで力が戻ってきたから使った分の弾丸の補充とお札化。

 作る弾丸によって消耗も違うからこういのは日々積み重ねておかないといけない、そういうことをしていたら寝る前に道具を作るのが日課となってしまっだんだ。


「・・・これで今日消費した分は作り直したな」

 余った分はいつもの場所に保存しておく、予備はいくらでもあるんだがあってこまるもんじゃないから止められない。

「終わったなら寝ようぞ主様・・・」 

「あぁもう寝るよ、だがお前の寝床は別の部屋に用意してあるんだが?」

 作ってる途中で風呂から上がった九尾が俺の作業を見ていた、最初は興味津々だったけど早々に飽きて尻尾のブラッシングとかしてたよ。


「わらわは使い魔じゃぞ、別々の部屋で寝るなどあり得ぬわ。それともなんじゃ、主様はわらわの大人な体に興味津々なのかえ?」

 違うところに行けと遠回しに言うと、妖しい笑みを浮かべながら煽ってきだした。

「それにお前じゃなく名前を付けてたも。主なら自分の使い魔の名前くらい付けるものじゃ」

「名前は考えといてやるから部屋から出ていけ」

 できるだけ平然として言えたはずだが、それを素直に聞いてくれるはずもなく出ていく様子は見られない。要するに無視されてる――しかも。


「なんでいきなり裸になってるんだよ!」

「服は自分で作ってるだけじゃからな、着るも着ないも自由自在なのじゃ。それに寝るといはいつも裸じゃし」

 これだから妖は・・・・女性ものの服があるはずもないから、俺のYシャツを着させておいて、明日服を買いに行こうと決意する。


「うむ、こういうのも悪くないの」

 裸Yシャツとか言うアレな格好になったが気にしてはいけない、気にしたら負けだ。

 結局一緒に寝ることになったが別段何も起こる事はなく、疲れていたからか一瞬で眠ってしまったからな。


 昼、いつものように屋上で昼食をとっている。

 この時間は人間の姿に戻ろうとした玉藻だったが、どうにかなだめて子狐のままで食べてもらっている。

 名前は玉藻と呼んだら意外としっくり来たからそのまま玉藻と呼ぶことにした。

「イルミ~昼飯と子狐見に来てやったぞ!」


 もう広まってんのか・・・そりゃそうか、開き直って頭に乗せて堂々と歩いてたら噂にもなるわな。

「ほらよ」

 渡そうとした弁当そっちのけで、子狐に視線がロックオンされてある。

「もふもふだ!ねぇ触っていい!?」

 今にもとびかかりそうな雰囲気だが、一応俺に確認を取ってくるだけの理性は残ってるようだ。

「触らしてくれるなら触ったらいいだろ」


 玉藻に手を恐る恐る近づけていくが、触られないように近づいた分だけ離れていくのが面白い。

「あぁ!?・・・やっぱダメか~、触ろうとしても絶対に触らしてくれないって噂になってたしね」

「大人しく弁当を食べとけ」

 諦めて座って弁当を食べ出す子羽。

 玉藻も他人がいるときに子狐状態で喋らないように言ってあるから静かで大人しい。


「それにしてもよく認めてもらえたよね、子狐を教室に連れてくるとか普通無理だよ」

「“ゴッドチケット”を使ったからな」

「あ~数枚持ってたもんね・・・うらやましいなぁ」

 ゴッドチケット、館長の影響の及ぶことなら一枚につき一度だけ何でも許してくれる全生徒が欲しがるチケットだ。


俺たちが通うこの高校、通称“虎狼館“――ここの館長が頭おかしいんだが・・・それはまた別。

とにかくこのゴッドチケットを使えば子狐を学内で連れて回る事を許可してもらえることなど簡単な事なのだ。

これは落第したとき、停学したときに使う事でそれを回避することにも使える便利道具だからな・・・その分取得難易度は恐ろしく高い、持ってる人はそう多くないだろう。


「子羽も1枚持ってるだろ?」

 確か去年にもらってたはずだし、まだ使ってなかったと思う。

「持ってるけど1枚だからね、そう簡単に使うもんじゃないのよ。というか使ってまで回避したいことかないし」

 そうなのだ、ゴッドチケットを取れるほどの人物なら停学とかになる事もないから、結構使うことがないって話をよく聞く。

 かくいう俺も玉藻以外の事で使ったことは一度もない――まぁあれば便利程度のチケットだよこれは。


 他愛ない話をしながら昼休みが終わり、午後の授業も終わった。

 これから玉藻の服を買いに行かねばならない・・・子羽に事情話してついてきてもらえばよかったかなと後悔してる自分がいた。

 だが子羽はもう遊びに行っていない以上、俺が付き合わないといけないのだ。

 校門を出る足がかなり重かったぜ・・・・

「ちょっとそこの子狐の先輩待つっス!」

 今まさに校門を出ようとした時、後ろから聞き覚えのない声が俺を呼び止める。

 


狐というか、もふもふの動物と一緒に暮らしたい・・・もふもふに囲まれて生きていきたいよ

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