第八十四話 氷壁
迫りくる火球の恐怖とみんなの視線に耐えられない。
足が震えてそこに座ってしまいたい衝動に駆られそうになっていたとき、ヒヤリとした冷気が降りてきた。
何事かと見上げると、頭上の天井近くに精霊さんがいる。
そしてその周りに白いモヤのような物が広がりつつあった。
「雲?」
そして同時に、何かが精霊さんを中心に密集していく。
雲のように白いモヤは広がりを見せるけど、その中心はどんどん密集していってる。
ポトッ
地面の上に白い小さな粒が落ちてきた。
雪のように見えるがそうではない、氷でもなくその粒からは冷たい冷気が漂っているが、溶けて水になっていない。
初めて見る。
私はもう一度精霊さんの方へ顔を向けたとき、その冷気の塊が火球に向けて飛んでいきはじめた。
流れるように、川のようにうねりながら、それは火球に向かっていく。
だけど、その白い粒は火球には届いていない、寸前で消え、熱で溶かされているように見える。
火球の勢いが少しだけ衰えた感じもするが、ほとんど変わらない。
精霊さんでも無理なの!?
あの火球に精霊さんの魔法が、さほど効いていないことに絶望を感じはじめたとき、おかしなことに気づいた。
「霧が出ている?」
坑道内で霧が発生している。
それはどんどん濃くなっていく。
まるで、ミルクの中にいるようだ。
数歩先がわからない。
でも、このままでは火球に飲み込まれてしまう。
「端に寄ってください! 水の壁でやり過ごします!」
迫る火球を避けるために、坑道の壁に張り付くように身を寄せると、そこで符術を展開する。
「水よ! 来たれり! 唵!」
小さな稲光のような魔力が指先から発せられ、護符に走る。
その護符から水が湧き出し、生き物のようにうねりながら水の壁を作っていく。
厚みを持たせてはいるが、先程の精霊さんのように火球に耐えられるか不安がよぎる。
そこに精霊さんの不思議な白い粒が、私の水の壁に降りかかる。
すると、たちまち水の壁が氷の壁に変わった。
「凄い………」
「(イソイデ!)」
精霊さんの声にハッとする。
霧の中から火球が迫っていた。
慌てて氷の壁に身を隠すと、たちまち火球が私たちの横を通り過ぎて行く。
熱い! けど、耐えたれないことはない!
自分に言いきかせるように心の中で叫びながら耐える私たちを、火球は嘲笑うかのように、不気味な音を奏でながら通り過ぎていく。
そして、火球が抜けたあと、私たちは息を殺しながら物音を立てぬよう、素早く移動を開始した。
なんだかんだで10万字超えてたんだね。
そのくせ全然、話が進まないという………




