第五十八話 採掘場での話
「ギルマスのイタズラさ」
シェランさんはそういった。
「イタズラ………」
リュトの口から小さく漏れる。
「そんな、なまやさしいモンじゃなかろう」
ダレフさんは憮然と声を上げた。
私とリュトはなんの話かわからないでいると、シェランさんがリュトに話しかけた。
「リュト、アンタの身は売られていたんだ。アンタの知らないところでね。もちろんギルマスも知らなかった」
「えっ!?」
「領主が勝手にそう言ったのさ、『親のいない者は保護する』とかもっともらしい理由をつけて、アンタは引き抜かれそうになってたんだ」
それを聞いたリュトは、愕然とした表情のまま固まってしまった。
そしてシェランさんは私の方を向く。
「嬢ちゃん、嬢ちゃんは気づいているだろ? あの街の不自然なところを」
いきなりシェランさんは私に話を振ってきた。
不自然、不自然……… 私は気づいているって言うけど、なんの事だろう? あの街はお墓が多かったけど大きい街だし、あれくらいは普通なんじゃないかな?
あと気になることと言えば………
私は街の情景を思い出す。
あっ! そういえば!
「あの街は老人ばかりでした!」
私の答えにシェランさんは黙ってうなずく。
「ここの鉱山の働き手が足らないのさ、領主は新しい労働力を探している。冒険者ギルドに対しても話が上がっている」
「いや、待てよ姐御。親がいないからって、だからってなんで俺が売られなきゃならないんだ? そんな話ギルマスからも聞てないぜ」
リュトは納得がいかないのだろう、どこか少しパニックになっているように見られる。
「そりゃあロイが「そんな話は聞けない」と突っ張ってたからな。聞かない以上、お前には言えないことだったのさ」
シェランさんの言葉づかいは変わらないが、言葉にどこか柔らかく、優しさを含ませている。
私にはリュトをなだめているように感じた。
「けどよ、他からもきてるんだろ。領主さまは奴隷を解放するを条件に他領にも声をかけて、この前も増えたじゃないか」
「えっ? それじゃあ北門を過ぎたところで会った人たちは………」
思わず声をあげてしまった。
シェランさんは私を見る。
私が疑問に思っていることを感じ取ったようだ。
私の疑問、それはあの人たちは奴隷ではなかったということだ。
奴隷を解放するということ、奴隷ではないなら、いつでもそこを離れることが出来るはずだ。
離れようと思えば、いつでも離れられる。
だけど彼らは離れるどころか逃げ出すことも出来そうでなかった。
事実、少なくとも彼らのうち一人は火ダルマにされたのだ。
「ここの領主のそいつらへの扱いは、法においては奴隷じゃない。ギリギリだがな。それで皆は騙されるのさ」
「騙されるって………」
話がまるで見えない、領主は何を騙し、民は何を騙されているのだろう。
「まず、この鉱山の仕事以外はまともな報酬は貰えない。農民になろうが店を開こうが、税を搾り取られるだけだ。若干マトモなのはナガレの商人くらいなものか? ここで働く連中の税もけっして安くはないんだが、鉱山で働く分は他より優遇されている、そのぶん重く感じないんだ。そして一度でも鉱山の仕事を辞めたら、二度といい状況での仕事は貰えない。報酬も激減するから、皆辞めようとしないんだ」
シェランさんは「それに」と話を続ける。
「働く連中の中にも、倒れるまで徹夜で働くことを自慢したり、実際にひと財産築いたヤツがいるモンだから、分からなくなっちまってるのさ。鉱山で働けば奴隷から市民へ格上げだ。そのエサに釣られた連中なんかは、領主のことを救世主か何かだと思っている奴らもいる」
「けどよー、それで働き手がいないっていうのがわからねぇよ」
リュトの質問にシェランさんはダレフさんの顔を見る。
そしてダレフさんは小さくコクンと頷いた。
「そう普通ならば働き手が足らないことなんか、ないはずなんだ普通ならな。だから普通じゃないことが起こっているんだよ」
「はぁ?」
「領主は今ならドワーフたちが戻ってきても、働き手が足らないと言うだろうさ。さて」
そこまで話をすると、シェランさんはダレフさんの方に近づいて、ダレフさんが集めていた光苔に手を向ける。
それから、魔力を光苔に当てながら言った。
「ここから先の話は、歩いてからにしよう」
文章と言うか、話の辻褄が合わないところがあって、書き換えた箇所があります。変に感じるところや変な文章が実際にあるかもしれません。
気づいたら教えてね。




