第五十六話 鉱山深部
ダレフさんの声に私は立ち上がろうとしたが、リュトの様子が何となくおかしい。
「リュト?」
「あ!? ああ、悪い」
リュトは気のない返事をすると、片膝を立て背中を丸めた。
トロッコから私が降りるときの足場になってくれるらしい。
一瞬、ある考えがよぎったが、それは口に出さないでおこう。
私は靴をリュトの膝の上に置いた。
トロッコの外側に降りるときはダレフさんに手伝ってもらった。
最初はそのつもりは無く、縁に手をかけ後ろ向きに降りようとしてたのだが、降ろした足をトロッコの金具の出っ張りにかけたところで、身動きが取れなくなってしまった。
どうしようかと迷っているときに、ダレフさんが私をヒョイと持ち上げたのだ。
「猫みたいだな」
その様子を見たリュトが言う。
私が身動きが取れず固まってたときに、リュトは簡単に乗り越えてた……… 解せぬ。
「覗いてないでしょうね」
先程、言わないでおこうとした言葉が口から出る。
「バ、バカやろう!? 誰が覗くか!」
私の言葉にリュトは顔を赤くして慌て出す。
「どーだか」
そんなやりとりを、私の両足が地面に着くまでにやっていると、どこか遠くで人の声が聞こえたように感じた。
「シッ! 静かに」
ダレフさんは素早く、だけど丁寧に私を降ろすと、地面に伏せ耳を付ける。
しばらくしてダレフさんは地面から耳を離し、何か考え込んでしまう。
「追手ですか?」
私は出来るだけ小さな声でダレフさんに聞いた。
「いや、違うようじゃ、追手は来ているだろうが、まだ遠くのはずじゃ、出口を探すぞい」
ダレフさんはそう言いながら腰をあげた。
「俺は……… いかねえ」
後ろからリュトの絞るような声がした。
私とダレフさんの足が止まる。
私は振り向きリュトの方を見る。
周りは光苔で照らされいるが、リュトの顔がわかるほどでは無い。
だけど、声では怯えているように感じる。
「リュトどうし………」
「鉱山の深部なんてダンジョンと同じなんだぞ! おっさん! アンタ気づいてるんだろ! 追手じゃない何かがいることを!」
その時、また遠くで人のような獣のような叫び声が聞こえた。
だんだんと不安になってきた。
私はリュトとダレフさんを交互に見る。
「俺はギルマスに見限られたんだ。アンタについて行く義理はねぇ」
リュトはそう言うと両手を握りしめ、顔を逸らす。
「小僧………」 (ギャアアァァ)
ダレフさんがリュトに喋りかけようとした時、またもや叫び声のようなものが聞こえてきた。
先程より近い、とても人間とは思えない。
暗がりの中、私は目を凝らす。
光苔のおかげで、わずかに周りの景色が分かる。
その叫び声は別の坑道………
私たちが乗ってきたトロッコとは、別のレールが敷かれた近くの坑道から聞こえる。
ダレフさんがゆっくりとアックスを構え。
リュトも腰のナイフに手を差し伸べ。
私は緊張のあまり精霊さんを握る。
そして突如、その坑道から光る得体の知れないものが、物凄い勢いで私たちに襲いかかってきたのだ。
だんだんサブタイトル付けるの面倒になって来た。




