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第五十四話 思惑

 ガラガラと音を立てて坑道へ向かうトロッコを陰気な視線で見つめる男がいる。

 

「面目ありませんな」


 その男に呑気な声をかける別の男。

 声に反省や悔しさなどといったものは、微塵も含まれていない。


「追撃のため、坑道に入る許可をいただきたいのだが」


 もちろん、別の男とはトロンの街の冒険者ギルドのギルドマスターであるロイのことだ。

 そして、それに答えたのは最初の男、ビルツだった。


「ふざけるな」


 ビルツは顔を向けることなく、静かに言った。

 それに対してロイは両手を広げて肩をすくめる。

 「何のことやら?」と、わざとらしいジェスチャーをして見せた。


「ふざけてなんかいませんよ。あのドワーフは少女を連れ回しているし、若者の方は私の命令に(そむ)いた。けっして、鉱山夫を火ダルマにしたなどでは無い」


 ロイの言葉にビルツは何も言わず、ただ一度だけ咳をする。

 

「ここは私の管轄だ。手出しすることは許さぬ」


 ビルツはそう言うと、感情というものを感じさせない目でロイを見る。

 ロイも冷ややかな目で、その視線を返していた。

 双方の間に目に見えぬ火花が散っている。

 兵士は武器を握りしめ、冒険者は剣の柄に手をやった。


 だが、しばらくしてロイは口を開いた。


「わかりました、よろしいでしょう。ですが、彼らを裁くのは、私の前でお願いします。これはギルドのそしてマスターである私の権利。絶対に生かして連れてきてもらいます」


 ビルツは何も喋らず、無視するように視線を外すと、そのまま数名の兵士を連れて、坑道の方へ向かって行った。

 

「いいのか? ギルマス」


 ビルツの背を見つめるロイに、馬の手綱をひいたアベルトが声をかける。

 

「ああ、私に出来るのはこれくらいだ。あとは彼らの運次第だな」


 手綱を手に取り馬にまたがると、ロイは号令をかける。


「トロンに戻る!」


 来た時と同じように土埃を上げながら去っていく冒険者たち。

 だが、その中にシェランの姿はなかった。

〜〜〜


 馬上の冒険者が鉱山を離れ、トロンの街へと進む中、何かに気づいたアベルトがロイに聞いた。


「ギルマス、でまかせなのは知っているが、リュトの反逆ってなんだ?」


 その質問に対しては、締まりのない顔でロイは答える。


「でまかせなものかぁ〜 あいつは私に「伝えることは何もない」と、報告の義務を怠ったんだ。立派な反逆だろう? ちゃんと連絡役のシェランの口から聞いたさ」


 連絡役がシェランと聞いて、アベルトは呆れた顔を浮かべる。


「シェランの……… 報告だよな」


 アベルトの言葉に、ロイは無言の笑顔で答えるのだった。


 一方、鉱山では………

 坑道に入るビルツと兵士の姿と、


 そして、それを見下ろす人影があった。

 

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