第四十二話 門
「それじゃあ、私はこれで」
「ああ、生きてりゃどっかで会うだろう。じゃあな」
この街トロンの西門へと続く道の途中で、私はこの街の魔法使いであるシェランと、別れのあいさつを交わした。
そして私は門へと向かう、この街を離れるのだ。
この街の異常なところ。
シェランさんは最初はここの領主は革新的で、短期間で飛躍的に民の生活を向上させた、素晴らしい領主とうたわれていたと言っていた。
だが、ある時ドワーフ一族がこの地から姿を消してから、街と領主は変わったらしい。
その日を境に我々は奴隷になったんだと彼女は言う。
寝ている時だけ民だ、昼間は家畜と変わらない。
報酬はもらえるけど、使う暇さえなく働かされる。
そして、その報酬の多くが薬代へと変わっていると言う。
私はリュトの話と合わせて考えていた。
(なぜ領主はこれほどまでに………)
そんな事を思っていたら、いつしか私は西門へ差し掛かっていた。
(だけどこれはこの街の問題だ、私がどうこう出来る話でも無い)
私は気持ちを切り替え、門を通ろうとする。
その時、城兵が行く手を遮った。
「通行証は持っていないのか? 身分証でもいい」
「はぁ!?」
街に入るのに、お金や書類が必要なのはわかる。
だけど街を出て行くのにそんな話は聞いたことがない。
「すまんな。先月に街の子供たちが行方不明になってから厳しくなっていてね。無ければ冒険者ギルドで許可証を発行して貰わなければならない」
「え〜!」
思わず声が出てしまった。
いましがた、そっち方面から来たばかりなのだ。
文句の1つぐらい言ってもよかろう。
だけど、また戻るとなると気が滅入る。
非常にめんどくさい。
だけど戻らなきゃ先に進めない。
やっぱりめんどくさい。
非常にモヤモヤした気分になる。
こんな時は少し休もう、昼に買った非常食のドライフルーツでも食べて気分を変えようと、門に近い石畳みに腰掛けた。
城兵さんが悪いわけじゃあないけど、つい睨んでしまう。
その時、私の前髪が揺れた。
風もないのに………
「精霊さん?」
なんとなく分かる、精霊さんが北の方向を気にしているようだ。
私はその場で立つと、北の方向に顔を向ける。
遠くに、北門とさらに遠くには、あの3本の煙突が目に入る。
「ああ北門は鉱山に続くから常時開けてるんだが、そこから西へ行くには鉱山へ向かわないと行けないよ。この壁のすぐ裏は切り立った崖のある川なんだ」
年老いた城兵さんが丁寧におしえてくれた。
西の街道に出るのに少々遠回りになるが、北門から出て鉱山方向から行けるらしい。
来た道を戻る事を嫌った私は、足を北門へ向けた。
この先の話の展開、悩み中




