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第四十一話 命令

「話が……… 見えませんね」


 そう言葉を出した時のギルマスの姿を見た者は、逃げ出したい心境だったと、その場にいた冒険者たちは後に語る。

 

「そのドワーフには今回の魔獣を、この街まで誘導させた嫌疑がかかっている」


 だがビルツもまた化け物だった。

 ロイの発する『氣』をまるで気にしていない。

 それも自分に向かって放たれている『殺気』に対してだ。

 (はた)から見れば「殺してみろ」と、言わんばかりである。


「お(たわむ)れを、彼こそ、その魔獣の被害を食い止めた功労者です」


「その判断をするのはお主ではない。なに、本当にそなたの言う通りならば、何も問題はあるまい。コホッコホッ! 冒険者を(鉱山へ)送る話も、いましばらく保留しておいてやろう。コホッ」


 ビルツの発した言葉に冒険者たちはざわついた。

 冒険者たちは、何の話か聞かされていない。

 ビルツの発した言葉の意味に浮き足立つ。

 だが、そのことがロイ自身の立場を思い起こさせ、冷静さを取り戻す事になる。

 しばらくの間を置いて、ロイは口を開いた。


「それとこれとは別の話ですね。この街の冒険者の数はギリギリだ。先月から発生している子供の連続行方不明の解決と再発防止のためにも、これ以上は人員を()けない。この街が大事なのは貴方様も同じなはずだ」


 ここで初めてビルツの表情に変化があった。

 眉毛をほんの少し動かすと、ロイに背を向ける。


「3日だけやる。コホッコホッ!」


 ビルツは一言だけ喋ると、馬車へと向かい乗り込んで早々にこの場を離れていった。


 その様子を冒険者たち一同は見ていたが、1人の若い冒険者が軽い口調で口を開いた。


「ヘン! 鉱山なんか誰が行くか!」


 それはリュトだった。

 彼もビルツは陰湿すぎて嫌いだった。

 だが、決してビルツや領主の、この街の政治に対しての反発ではない。

 彼は若かった。

 判断というものを他者に委ねても問題はないと思っている。

 だから彼はダレフをビルツに引き渡しても公正な判断が下され、何も問題が起こらないと思っている。

 ダレフと行動を共にしたのは昨日の夕方の数時間だけ。

 そして、その時は常にシェランの後ろについて回っていた。

 討伐依頼の時も早々に依頼をキャンセルしたので、ロイとダレフの関係をあまり知らずにいた。

 だから彼の口から出た言葉は他の冒険者を驚かせることになる。


「それに、あのドワーフ捕まえるって3日もいらねーよ」


 ロイがリュトの方に顔を向ける。

 その時、リュトの近くにいた冒険者はゆっくりと距離を取る。

 そして誰もリュトの顔を見ようとしなかった。

 誰も顔を合わせない仲間たちに、「なんで?」と疑問に感じるリュトにロイの声がかかる。


「リュト! 任務だ! これから2日間、ドワーフ『ダレフ』の発見及び動向調査を命じる!」


 いきなりの命令に驚きつつも、どこか嬉しそうなリュト。


「は、はい!!」


「戦闘は許さん! 報告には人をよこす、必ず見つけろ! それと」


 そう言うとロイは服の中より封書をひとつ取り出した。


「出会うことがあれば、これをあの娘に渡せ、必要だろう」


 そう言って、その封書を手渡す。


「行け!」


 ロイの号令にうなずき、走り出すリュト。

 そのリュトの後ろ姿を見ながら、ロイはアベルトに1つの指示を送った。


「アベルト、至急シェランを呼んでくれ」

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