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第四話 旅の準備

「よいしょ」


 私は重くなったカバンをテーブルの上に置く。

 そう、私は旅支度を始めていた。


 魔女となった者は、西の聖地に赴かなければならない。


 古くからある村の言い伝えだ。

 はるか西にある魔女の聖地に精霊様と共に赴き、啓示というものを受け取って、初めて本当の魔女になると言うのだ。


 それで私は旅の支度をしている。

 精霊の儀から数日すぎている。

 私は窓辺に顔を向ける。

 そこにはちょこんと座ったキノコ精霊がいた。


 精霊様はあまり動かない。


 だいたいいつも、ボーッと窓から西の空を見上げていた。

 私は旅支度を行う手を止め、精霊様に声をかけた。


「精霊様、今日には準備が整います。そうしたら明日から西の聖地に向かいましょう」


 キノコ精霊はそれを聞くと立ち上がり、ぴょこぴょこと飛び上がって喜んでいる素振りを見せる。


 私は精霊様に向かって微笑みを浮かべる。

 けど…… 不安もある。

 私はほとんどこの村から出た事がない。

 月に数回、隣の村に大人達と一緒に薬草などを持っていき、食料や雑貨などと交換していた程度だ。

 村の外の事などほとんど知らない。


 お爺さんからは色々教えてもらっていた。

 それで何とか一人で生活は出来ている。

 この旅でもお爺さんの教えが助けになるだろう。


 それに私には精霊様がいる。

 精霊様に触れてから、私は魔力が膨らんだのを感じた。

 そして「魔素」がしっかりと見れるようになったのだ。

 私はマナを巡らせ目に集中させる。

 そすると、部屋の中に色々な魔素の姿が浮かび上がってきた。

 青、白、水色、薄いピンク……

 それは光の大きさを変え、フヨフヨと空中を漂っている。

 

 以前はこんなにハッキリと見えなかった。

 ふと見るとキノコの精霊様も魔素を見ているようだ。


「すいません、精霊様。私が見えるのは、これだけなんです…… 」


 私は精霊様に謝った。

 そう、魔素はこれだけではないらしいのだ。

 すぐれた魔術師、魔女はこの数倍もの量の魔素を現せるらしい。


 (すごい、すごい)


 私に精霊様の気持ちが私の心に浮かぶ。

 精霊様の方を見るとキノコ精霊は窓辺のフチでクルクルと周り、それに合わせて魔素もクルクルとキノコの上で小さな渦を作り出していた。

 精霊様が魔素を扱い遊んでいるみたいだ。

 その姿に微笑みを浮かべる。


「さすが精霊様ですね。魔素の扱いがとても上手です」


 私が喋りかけると、精霊様は回転をピタッと止めて、私の方をジッと見る。

 それも私の頭の方を……


「アッ」


 私は慌てて頭を押さえる。

 手の感触からわかる、私の髪の毛がボワッと逆立っている。


「すみません、未熟で…… 」


 私は頭を押さえながら精霊様に謝った。

 マナを使用すると、いつもこうなる。

 何故だか私には分からない。

 魔女はマナを使うと、身体に変化が起こるらしい。

 身体が熱くなったり、冷たくなったり、軽くなったり、重く感じたり色々あるらしいのだが。

 私はこんなふうに髪が逆立ってしまう。

 恥ずかしい……


 そんな私の頭に精霊様がピョンと乗ってきた。


「せ、精霊様!?」


 精霊様はシュルシュルと手と足を糸のように伸ばすと、私の髪の毛を纏めていく。

 そして最後にポンと小さな音を立てると、精霊様は小さくなった。

 ちょうどキノコのデザインの髪留めになったみたいだ。

 

(これでいい?)


 精霊様の声が聞こえる。


「はい、ありがとうございます」


 私は窓に写る自分に向かって笑顔で頭を下げたのだった。



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