第三十七話 考える男
冒険者ギルドのその内部では、1人の男が頭を抱えていた。
言わずと知れた当ギルドのギルドマスターであるロイである。
旧知の友であるドワーフのダレフより、危険な魔獣であるグレーターベアの存在を知り、その討伐のため冒険者を募り、山に入った。
しかし、討伐対象のグレーターベアは倒されていたのだ。
何者かによって………
彼は冒険者のうち何名かは犠牲者が出る事を覚悟していた。
城兵のような人を対象とした部隊などでは、討伐どころか、こちらが全滅するかもしれない。
グレーターベアという魔獣はそれほどの存在なのだ。
だからロイはダレフからグレーターベアの情報を聞いた時、すぐに領主へと討伐依頼を持ちかけた。
だが、討伐対象のグレーターベアは彼と彼の仲間によって倒されたわけでなく、すでに死体となっていたのだ。
それも矢傷や刀傷が全くない状態で、近くに川や沼もない山道の真ん中で溺死したものとして現れたのだ。
普通では考えられない。
彼は討伐時に見かけた少女が何か知っていると思い、ダレフと同じギルドのメンバーであるリュトとシェランと一緒に同行し、その少女の元へ赴いた。
「まさかね………」
現地の検分では、少女のものと思われる足跡などが見られたが、それ以外には何もなかったのだ。
そして出会った少女は特殊すぎた。
彼女は深淵の森のものだったのだ。
魔力は常人とあまり変わらない、だが魔力を溜める器の大きさが異常なまでに大きかった。
だが魔力自体は普通だ、あの魔獣を倒せるほどではない。
もしあの魔獣を人が1人で倒したとなると、どんな方法があるかを考えた時、真っ先に浮かんだのが毒だった。
その時彼女の髪留めが外れ、キノコの形をした髪留めが見たこともないキノコに変わったのだ。
私は閃いた、彼女はこれを使ったのだと。
キノコの毒は実に多彩で、色々な用途で使われる。
深淵のものたる彼女も、あの魔獣に効果的な毒を用いて仕留めたのだろう。
そう思っていたのだが………
ギルド広場で解体したグレーターベアからは毒物反応は無いと、解体したものから聞いて「そんなはずは無い」と、鬱積した気分だったのだ、つい先ほどまで。
そうしたら早朝にダレフが現れこう言ったのだ。
『あの娘は精霊使いだ』と、これではどちらにせよ報告どころでは無い。
誰も信じないからだ。
あの少女がグレーターベアを毒を使わず1人で倒したことも、精霊使いであることも、どちらも信じないだろう。
もし信じたら信じたで、それはそれで厄介なことになりそうだ。
「ダレフはあの娘と行動を共にすると言っていたが………」
私は今からやって来る、領主の使いの者への返答を考えつつも半ば諦め、別のことを考えはじめていた。
次話はちょっと時間ください。
ここ最近、体調がすぐれません。




