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第三十二話 冒険者の能力

「悪かった」

「申し訳ない」

 

 年齢がそれぞれ全く異なる男のひと2人が、私に向かって頭を下げる。

 1人はリュトで私と同い年くらいの男の子だ。

 思いっきり反省して貰いたい。

 もう1人はこの街の冒険者ギルドのギルドマスターらしい。

 この街の代表者の1人と言っていい人らしく、なんとなく偉い人だとは思ってきた。

 大人の男の人には頭を下げる事などして貰いたくは無いけど、リュトと並んでるからそうも言えない状況だ。


 そしてそんな2人を後ろから覗いている人もいる。

 1人は綺麗な女の人でニヤニヤした表情を隠そうともせず、こちらを見ている。

 そしてもう1人はドワーフで、この人たちの中では一番まともに思える。

 妖精族と言われるドワーフが一番、人としてまともに思えるなんて………

 

「本当にすまなかった」


 もう一度男の人は頭を下げる。


「もう、いいです」


 さすがにこれ以上、謝ってもらっても申し訳ない。

 見れば貴族っぽいし、身なりもしっかりしてるから、だんだんこっちが悪い気がしてきた。


「もうちょっと反省させたほうがいいぜぇ〜」


 シェランと言うらしい綺麗な顔立ちの女の人は、変わらずニヤニヤしながらそう言った。

 服装とたたずまいから、魔法使いのようだ。

 その言葉に頭を下げているロイという名の男の人は、ムッとして女の人を睨んだ。

 女の人は視線を避け、そしらぬ顔で口笛を吹く素振りを見せる。


 その様子に私は少し吹き出してしまった。


「ぷっ!」


 私のそんな様子でようやく気持ちを落ち着かせたらしい。

 男の人は軽く安堵の息を漏らすと、あらためて私に向き合った。


「本当に申し訳なかった。私はこの街の冒険者ギルドのギルドマスターを務めるロイというものだ」

 

「わ、私はメテルです。ちょっと用事で東の村から来ました」


 嘘は言ってない、事実だから。

 昼間にリュトに会ったことでスムーズに言葉が出てきた。

 だけどここからは私は嘘をつかなければいけない。

 この男の人はグレーターベアのことを聞きたいと言った。


 精霊さんのことは隠し通した上で、話を進めて納得させないといけないだろう。


「キミに聞きたい事がある」


(来たっ!)

 

 私は唾を飲み込むと、少し笑みを浮かべる。


「はい、なんでしょう」


「キミはここに来る途中、山で魔獣……… グレーターベアに遭遇しているね?」


「……… はい」


 質問の内容を吟味して答える。


「キミは魔法使いで水魔法を使えるね?」


「はい」


 私は淡々と答える。


「その魔獣は溺死していた……… キミがやったのかな?」


「いえ、私は倒してなんかいません」


 これも本当のことだ。

 私は倒してなんかいない、倒したのは精霊さんだ。


「誰が倒したのかな?」


「わかりません」


 ここで私は嘘をつく、大丈夫なにも問題はないはずだ。


「それを誰かに見られていた可能性は?」


 その質問にギョッとした。

 人通りの少ない山道とはいえ、可能性は全く無いとは言えないのではないか?

 もしかしたら、たまたまそこに猟師や山菜を取りに来た人がいたかも知れない。


 どうしよう、どう答えたらいいのかわからない。

 

「ちょっといいかい? ギルマス」


 そこに女魔法使いが声を飛ばした。

 男の人はその人に顔を向ける。


「その()があの魔獣を倒したと本気で思っているのか? 絶対に無理よ」


「何故そう思った? 私の事を含め言ってみてくれ」


「まずはロイ、アンタの言い方さ。その質問の仕方は犯罪者の嘘を引き出すやり方だ。見方を変えればこの()がやったと言っているもんだ」


(えっ?)


 私は無表情を装い、驚いていた。

 目の前の男の人は女の人の方を見ながら、ニヤリと口元を歪める。


「それとこの()のことだが、魔法使いとしては魔力が小さい、少なすぎるんだ。水魔法を使えるにしても数回から十数回が限界だ。あの魔獣の相手なんか出来るはずがない」


 私はそれを聞いて、さらに驚いた。

 会って間もないのに、私の出来る事を知られている。


「マスター、それにだ。コイツは魔力を使う時に気配がダダ漏れなんだ。戦闘には向いてねぇ」


 横からリュトが、はき捨てるように口を挟んだ。

 なんなのだろう………

 冒険者とは、こんな短時間で相手のことがわかるのだろうか………

 まるで心を覗かれているかのようだ。

 でも……… でも、精霊さんのことは絶対に喋らない!

 私は気力をふり絞り、男の人を睨みつけた。

 そうしなければ、倒れてしまいそうだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 気を付けないと、キノコさんの気配というか精霊の力も感知されちゃうのでしょうか? ちょっと、心配です!
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