第三十一話 扉
「そうやってグレーターベアを倒したのかな?」
「あなたは………」
リュトと入れ替わるように中年の男の人が現れた。
その人は私に、優しく微笑みかけるようにそう言った。
間違いなく変態だ!
「誰ですか! あなたは! 早く部屋から出てって下さい!!」
私はリュトと一緒に来た中年の男の人に水珠を投げつけると、急いで扉を閉める。
水球は男の人の顔面にまともに当たったようだけど、そんな事より急いで扉を閉めた。
前を隠しながら背中で扉を押さえつける。
するとゲラゲラした女の人の笑い声が扉ごしに聞こえてきた。
「ダァーハッハッ! 腹いてぇ〜」
リュトがいるから盗賊とかでは無いみたいだ。
だけど最大限に警戒心を強める。
するとリュトの声が聞こえてきた。
「すまねぇ、ちょっと急ぎなんだ。すぐにここを開けてくれ」
「嫌よ!」
私は即答した。
開けれる訳がない、私は湯浴みをしている最中だったのだ。
こんな格好で会えるはずがない。
「しゃーねぇ! 扉をぶち破る! 離れていろ!」
「え? え?」
不吉な内容の声が聞こえた。
なにが仕方がないの? 意味がわからない!
前を隠しながら部屋を見渡すが、すぐに身を隠せそうな場所は無い。
私は扉から少し離れた場所で座り込んでしまった。
「せぇのぉー!」 (嫌あぁー)
「止めんか」
年配の男性の声がしたら、何故か扉がキイと音を立て、ひとりでに開く。
扉の向こうには耳をつねられたリュトと、耳をつねっている中年のおじさんが、私に目を向けていた。
恥ずかしくて、死にそうだ。
「えっと、違うんだ。俺じゃなくギルマスが用事が………」
「す、すまないお嬢さん。グレーターベアの件でだな、ちょっと重要な………」
何を言っているか知らない、聞きたくも無い。
私は顔を伏せ、身を縮こませる事しか出来ないでいた。
すると………
フワリとしたものが私に覆い被さる。
「なにしとるんじゃ? お主ら」
顔を上げるとそこには昼間見たドワーフの姿があった。
このドワーフが毛布をかけてくれたみたいだ。
「お嬢ちゃんすまんの、着替えたらワシらの話を聞いてくれるか、着替えるまでワシらは外で待っていよう」
ドワーフはゆっくりとそう言うと、リュトとおじさんを促しながら扉の方へ向かっていった。
そして扉の横には腹を抱えて笑っている女の人がいた。
ここいら辺のストーリーは後の展開によってはガラリと書き換えるかも知れません。




