第二十九話 帰り道に
話は少しさかのぼる。
魔法使いシェランは満足気に街の中を歩いていた。
ギルマスのロイに魔獣討伐の囮役を、知らずのうちにやらされていたのは腹正しかったが、気持ちを落ち着かせようと飲んだ高品質のお茶と甘味をタダで頂けたことと、世間知らずのお嬢に世の中の厳しさを教えてあげれたことで、気分は回復していた。
基本的に最低なヤツである。
そんなシェランは前の方から知った顔が近づくのがわかった。
顔がにやけるシェラン。
「よう! ヒヨッコ!」
シェランが声をかけたのはリュトだった。
そしてかけたのは声だけでなく、水魔法の水球も一緒であった。
「シェランの……… 姐御………」
顔面から水を滴らせながら、リュトは思いっきり面倒くさそうな顔をする。
そんなリュトにシェランは気にもせず、笑顔で近付いて行く。
「しけたツラしてんなぁ」
「姐御に会ってからな」
「ハンッ! 魔獣討伐をふけたヤツがいっぱしのこと言いやがる」
ふてくされたリュトをからかうシェラン、凄く楽しそうである。
「そう言う姐御はどうしたんだ。えらい早いお帰りじゃねぇか。野営は明日からか?」
どうやらリュトはまだグレーターベアが倒された事は知らないようである。
それを察したシェランはでまかせを口にする。
「グレーターベアの件かぁ? あんなのチャッチャッと終わらせたぜ?」
討伐隊で仕留めた訳では無いが、依頼が終ったのは事実である。
ホラを吹くとも言う。
どのみち最低なヤツである。
「マジかよ!? どうやって倒したんだ!?」
「ま、まぁ、水魔法でな。詳しくは教えてやらん。秘密だからな」
「へぇ、水魔法でどうやって?」
目をキラキラさせて質問をするリュト。
ここら辺は年相応の仕草を見せた。
「だ、だから、秘密だ。冒険者は教えてなれるもんじゃ無い。それくらい自分で調べろ。グレーターベアはギルドの広場に運ばれてる」
自分が倒したわけでは無いし、本当に水魔法で倒されたかも定かでは無いので、どこか口調がしどろもどろのシェラン。
リュトはグレーターベアが運ばれているのを知って興味深々な様子だ。
「わかったよ姐御自分で見てみるから後で教えてくれよ。でも水魔法ねぇ、今日は水魔法によく出くわすわ」
そう言ってリュトは広場に身体を向けて走り出そうとしている。
何気なく言ったリュトの言葉にシェランはピクリと反応した。
「おい、リュト。出くわすって?」
「ああ、さっきびしょ濡れの水魔法使いに出会ったんだ。じゃあな姐御」
そう言いながらリュトは広場に向かって走り出していた。
「お、おい! リュト」
シェランは引き止めようとしたが、間に合わず、リュトは走り去っていった。
シェランは顔の向きを変え、一度はそのまま何処かに行こうとした。
したが………
「ええい、クソ!」
だが一声そう言うと、どこか腹ただしげにリュトの後を追って行くのだった。
病院食ってなんであんなに不味いん………




