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第二十一話 寺院

 よく晴れた石畳みの路地に人影が写る。

 どうもその影は周りを気にしているようで、壁に身を寄せるとキョロキョロと顔を動かし辺りを見渡している。

 そしてその影を作り出している人物の(すそ)からは、ポタポタと雫が落ちていた。

 

〜〜〜

 トロンの街に入った私は、辺りを見回し、人通りの少ない方を選んで人目の付かないように道を進む。

 街に入る前、武装した人達にビックリして慌てて街に入ったけど、服を乾かしてから入ればよかった。

 城壁の兵隊さんには、引き止められることなく街に入れたのはよかったけど。

 何かあったのかな?


(あっ!?)


 前に人がいる、私は気付かれないように横道に逸れた。


(人がいないところを探そう)


 とは言っても初めて訪れた街で、どこに向かえばいいかも分からない。

 私は続けて人目を避け、人の少ない道を選んで 進んで行った。

 それでもたまにすれ違う人からは、どうしても視線を浴びてしまう。

 建物からたまたま出てきた、洗濯物を抱えた年配の女性は、私を見たら不思議そうに天を仰いだ。


 私は急いで人の少ない静かな場所、丸い形をした屋根の建物の中へ向かって行く。

 そこは寺院だった。

 隣の敷地にお墓が並んでいる。

 まだ日が高いので不気味さなど微塵も無く、蝶々が飛び交う、どちらかといえばのどかな雰囲気だ。

 私がいまいる場所は寺院の中庭のようになっており、腰かけられるベンチもある。

 人目が避けられる場所を探してるうちに、服もある程度乾いてしまった。

 ようやく落ち着けると思い、小さなため息を吐くと、私は腰を下ろそうとした。

 

「なんだお前?」


 いきなりの声に、心臓が飛び出すかと思った。


「だ、誰!」


 声は後ろの方から聞こえた。

 私は振り向き、辺りを見渡すが誰もいない。


「こっちだこっち」


 声は高いところから聞こえる、首を上げると寺院の吹き抜けになっている塀の上に、猫みたいに寝転がった男の子がいた。

 私と同い年くらいだ。


「オメェさん、この街のもんじゃあないな。あん?」


 その男の子は一度まじまじと私を見ると急に笑い出す。


「ハハッ、なんだお前。びしょ濡れじゃん。服着たまま水浴びしてんの?」


 そしてその男の子は壁から飛び降り、私の目の前に立つ。

 その言葉に私は赤面するのを自覚する。

 確かに服はある程度乾いているが、下着はびっしょりだったからだ。

 

「な! 何よ! アナタ誰よ!」


 私は気恥ずかしさと、警戒心から声を上げつつ、彼に気付かれないように、背中に水球を作ろうと魔素を集める。

 これなら彼からは死角になるはず………


 次の瞬間、彼の姿は消えてしまう。

 そして首筋にナイフが突きつけられ、風圧で浮かんだ髪の毛が元に戻ろうとしているのを感じた。


「魔法使いか? あんまり変なことするなよ」


 殺気をはらんだその目に恐怖を覚えたとき、背中の小さな水球はパシャと地面で弾ける。

 それと同時に力が抜け、その場にしゃがみこむ。

 涙が浮かんできた、今日は……… ヒック……… 怖いことばかりだ、ヒック………


情景描写が少なすぎる気がするが、まあ……… いいや。

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