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第十六話 魔獣

 私は山道を進む。

 キノコの精霊さんと一緒に。


 腰に付けたベルの音が響く中、私達は水球の魔法をお供に、草原の山道を進んでいた。


「お上手ですね」


 私は精霊さんに声をかけた。

 精霊さんは3つの小さな水球を作り出し、お手玉のようにクルクル回して遊んでいる。


 流石と言うべきだろう、私も5つまでなら作ることが出来る。

 でも複数の水球を操作出来るようになったのは、去年の暮れと比較的に最近のことなのだ。

 

 そして水球の動かし方は私より上手いかもしれない。

 一瞬、「こんなことも出来んのか!」

と、怒るオババの姿を思い浮かべた。

 心の中で(フーンだ、相手は精霊様よ、しょうがないじゃない)とうそぶいたとき、何かが聞こえた。


「………ナ コトダ」


 その瞬間、全身の毛穴から汗が吹き出す感覚に見舞われ、背筋に悪寒が濁流のように走る。

 立っていられないと思えるほどに、急に膝がガクガクと震えだした。

 だがその感覚も気にならないほどに、私は………恐怖した。


 道を塞ぐように突如現れたケモノの体躯。

 オオカミの姿を形取っているが、その大きさが尋常じゃない、周りの空間が歪んで見える。


 フェ、フェンリル………


 私がかろうじて自我を保てたのは、その魔獣の名を口にしたまでだったであろう。

 

 メテルの足元で水球が力無く弾けた。

 身体を動かす事も出来ない、ただ恐怖のみが彼女を支配していた。

 その中をキノコの精霊はしばらくじっとしていたが、やがてフワフワと漂うように魔獣に近付いて行った。

 メテルはそれに気付いていない。

 魔獣の持つ黄金の瞳から目を逸らせずにいた。

 その黄金の瞳がわずかに動く、フェンリルがキノコ精霊に視線を向けたからだ。


 その瞬間、メテルは膝から崩れ落ちた。


〜〜〜

「オキテ………」


 頭の中で声が響く。

 私を起こそうとしている人がいる。

 誰だろう、聞いたことのない声………

 それに聞くというより、直接頭に響くような………

 その瞬間、私は目を見開き身体を起こし、そして周りを見渡した。 

 辺りは先程の景色と変わらない、千鳥が鳴く草原の山道の中にいる。

 あの魔獣は姿を消していた。


「………夢?」


 そんなはずは無いことは分かっていた。

 だが我が身がなんとも無い事がかえって混乱を招く。

 神をも倒すとされる魔狼 フェンリル。

 もはや伝説上でしか存在しないとされた破壊の権化。

 思い起こしても血の気が引く。


「そうだ! 精霊さん!」


 意識を失う直前、精霊さんが魔獣に向かって行っていたのをかろうじて思い起こす。

 近くを再度見渡すと、見慣れたキノコが転がってもがいていた。


「大変! 精霊さん!」


 慌てて駆け寄ると、どうゆう訳か精霊さんは私に向かってプリプリと怒りだした。


 どうやら、声をかけたのは精霊さんで私が起きたひょうしに、弾き飛ばされたらしい。

 

 私が精霊さんに向かって土下座で謝っていたとき、精霊さんの身体にキラキラしたものをまとっている事に気付く。

 それは魔狼フェンリルの体毛だった。

 驚くほどきめ細やかで白金に輝き、緩やかな風になびき小さな光を放っていた。

 やはり夢では無い。

 けど、どうして………無事なんだろう………

 私が思案していると、精霊さんの声が頭に響いた。


「オオキナ、ミズノタマ、ツクレ」


これから後の話の繋ぎが悩ましいんだよなぁ。

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