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第十五話 緊急クエスト

 見習い魔女メテルが向かっている次の街。

 街の名をトロンと言う。

 2階建ての住居が建ち並び、石畳みで舗装された道を多くの人達が行き交っていく。

 

 道の両脇では多くの行商人が店を構え、ちょっとした喧騒となっている。

 そのような中、1匹の猫が高い塀の上で毛繕いをしていた。

 

 まるまると太ったその猫は、スラリとした足をピーンと伸ばして毛繕いをしていたが、何かに気付いたようにおもむろに毛繕いを止めると、眼下に視線を移した。


 背は低く、ずんぐりむっくりとした体型、豊かな口髭を生やし、背中にクロスボウと腰に斧を添えている1人の男が歩いている。

 この街において、彼は異端らしく道行く人は彼を見るとギョッとした表情を浮かべるが、彼自身は気を止める事なくむしろ平然と歩みを進める。

 

 その男は一際立派な建物の前に立つと、その中へと消えて行った。


〜〜〜

 

「ダレフ、間違いはないのか」


 貴族のような身なりの目の鋭い男は、落ち着いた口調で呟くようにそう言った。


「ああ」


 ぶっきらぼうにそう返答したのは先程の男だ。

 

「領主にはまだ報告しとらん」


「構わないさ、こちらで報告しておこう。それにどの道こちらに回される案件だ。それを見越して先に私のところに話を持って来たのだろう?」


 その問いにダレフという男は答えなかった。

 ただ先程と同様に不機嫌な口調でボソリと声を出しただけだった。


「下で待っとる」


 言うやいなや、ダレフは動き出す。


「ああ、半刻ほどくれ。装備と人員を揃える」


 ロイがそう言った時には、ダレフの姿はその部屋から消えていた。

 ロイはダレフの消えた方向に向かって苦笑を浮かべると、別の方向から若い女性の声が飛んだ。


「ギルドマスターであるロイ様に失礼ですわ」


 歳の程は20歳前後であろう、美人と言うよりは可愛らしい感じの女性が頬を膨らませていた。


「ああ、彼とは古い付き合いなんだ。サーシャ気にしないでくれ」


 ロイはその女性になだめるように言う。


「でも………」


 サーシャと言う女性はまだ何かをしゃべろうとしたが、それはロイの差し出した手で遮られる事になる。


「それよりも緊急事態だ。領主と城兵に同時に報告。そして緊急クエストを発動する」


 その時のロイの言葉は先程の柔らかな物腰のものとは似て異なるものに変貌していた。

 そして何よりも顔の距離が近すぎた。


 サーシャは唾を呑み込み、赤い顔のまま、その表情を引き締める。

 

「分かりました。クエスト名はいかがなさいましょう?」


 彼女のその切り替えの速さににロイは少し口元をほころばせ、そして答えた。


「グレーターベア討伐」



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