第一話 精霊人形
ええ、勢いだけで書いてます。
私はメテル・メル。
魔女の森と呼ばれる村に住んでいる。
そして私はもうじき魔女になる。
村の掟で十四の歳に精霊の力を借りて、魔女となるのだ。
村のみんながそうなるわけではない。
マナと呼ばれる、特別な力を感じ取る力を持つものだけがなれるのだ。
そのような人は村でも五年から十年に一人くらいしか出てこないらしい。
私の前は九年前だった、私が五歳の頃だ。
精霊の力を借りるのに必要な物がある。
精霊様はこの世界では身体を持つことなく現れる。
だから魔女は、身近にある動物に宿らせたり。
人形を作って、その中に精霊様を宿らせるのだ。
だから私は今人形を作っている。
私は普通の魔女とはちょっと違う。
私のお爺さんが、遠い遠い東の国の魔術師だったのだ。
「おんみょうどう」と言うらしい。
そんな、お爺さんから私は色々教えて貰った。
言葉には精霊が宿る。
言葉を表す文字にも精霊が宿ると。
そう言って「火」と書かれた紙を、囲炉裏に置いてある薪に向かって、指で弾くように投げ入れると。
紙はフヨフヨと漂いながら、途中で火を発生させて、囲炉裏に火を起こしていた事を思い出す。
そんなお爺さんから、私は「おんみょうどう」を教えて貰っていたのだ。
言葉と文字を、そして「呪力」とも呼ばれる、「マナ」の扱い方を教えて貰っていた。
「万物に宿し「マナ」よ。我が願いを…… 」
私は人形を作るための素材に「マナ」を込める。
私の「マナ」を扱うのに長けていない、「魔力」があまり多くないのだ。
だから動物に精霊の依代になるようにお願いしてもソッポを向かれる。
人形に「マナ」を込めても、精霊様は通り過ぎるかもしれないらしい。
けど、お爺さんが教えてくれた。
出来上がった人形に「マナ」を込めるのではなく、その人形の素材から「マナ」を、その素材一つ一つに込めると大丈夫だと教えてくれた。
だから私は人形の素材、一本一本に「マナ」を込めていく。
「ふぅ〜」
大きなため息の後に、私はニンマリとした表情を浮かべる。
形が出来た。
私は髪の毛を一本プツンと引き抜くと、最後の仕上げを施す。
「んふっ」
我ながら良い出来と思う。
これで精霊の儀は楽しみになった。
私は達成感から来る気の緩みを覚え、大きく背伸びをすると、ベッドに向かう。
(後は文字を入れるだけだ…… )
そう思い浮かべながら、目を閉じ布団を被る。
彼女の…… メルの家は大きな木をくり抜いた中にある。
その木の枝にフクロウが止まっていた。
ホーホーとひと鳴きすると、首を傾げチムの部屋を窓越しに覗き込む。
月明かりが差し込む先。
メルが先ほどまで使っていた机の上には……
立派な藁人形の姿があった。