プロローグ
就職浪人――。そう決まった日から、俺は昼夜逆転の生活に溺れた。夜中ずっと液晶画面を睨むために起きて、朝方から夕暮れまで眠る。文字どおり、白昼夢を見る毎日。
ある朝、柴崎洸太は例によってパソコンの電源を落とし、ジメっと湿気を吸った重たい羽毛布団にくるまった。普段ならものの数分で現実から落ちてしまう。数分の間、洸太は目を閉じてパソコンによって酷使した眼を癒す。脳裏には戦争ゲームがブルーライト経由で映し出されている。
ゲーム後に残った疲労が洸太は好きだった。丸まった猫背を年季の入ったマットに沈ませ、指先まで足を延ばして大きく深呼吸する。大きなことを達成した、と頭を誤解させて現実逃避の休息が身を包んだ。
眠りに落ちるまえ、洸太はいやな予感をおぼえた。何者かが暗闇から時間をかけて、忍び寄ってくるような気持ち悪いもの。だが、根拠のない予感などすぐに消え去ってしまう。再び空想を巡らせていると、疲労が身体中をまわり意識が遠のいてきた。
バタンっ‼
突如、ドアが荒々しく開いた。なにが起きたのか理解する間もなく、洸太は入ってきた何者かに襲われたのだった。