第二話「入学式」
入学式を迎える鈴木太郎は、何の変哲もない男子高校生。
ただ、人よりおせっかいで優しく、気遣いができる男の子。
中学生まで何も気にせず日々を送っていたが、高校入学してから彼の生活は激変する。
学校行事やクラスイベント、ことあるごとに何故か彼が罰ゲームの対象になってしまう。
そんな彼と一緒になる女子に対して、太郎はどう対応していくのか。
彼の苦くも、しっかり甘いところもある青春物語。
「これが高校、、、」
「やっぱ中学とはちげぇな~」
「そうだね~」
小学校卒業から中学校入学する時は、後者の貫禄や知らない生徒が多いことに驚いたことを覚えているが、高校はそれよりももっと貫禄と人で溢れかえっていた。俺たち三人は、そんな人混みの中自分たちのクラスへと散っていく。俺がC組で、佑都がB組、理子がA組と見事にきれいに分かれていた。
佑都に関しては、持ち前のコミュニケーション能力で何とかできるだろう、というか外見がイケてるんだからそんな能力使わなくとも女の子が寄ってくるだろう。現に、一緒に登校していた時もやたら佑都に女の子の視線が集まっていたから、なんだか俺が恥ずかしくなってしまった。本人は全く気が付いて内容だけど。
理子に関しても同じだ。そのゆるふわな性格と抜群ではないが、かわいらしい愛嬌とぷにっとした体格が相まって男性人気もこの上ない。いわゆるアイドル系女子だ。当然、男子の視線を浴びていたわけだが、本人は感じ取っていないだろう。
そんな二人に囲まれている俺はというと、二人が浴びる視線の延長線上、もしくはその手前で視線を遮ってしまうせいで、男子女子両方からの痛い視線を浴びる羽目になっている。そりゃ、俺みたいなモブキャラの冴えない男子高校生になる男が二人の間に収まって言い訳がないのだろう。変な重圧から逃れられることを考えれば、クラスが離れていることは一息つけるからよかった。
「じゃあ佑都、理子、また放課後な!」
「太郎も一人くらいは友だち作れよな!」
「そんなの楽勝だって」
「またね太郎~佑都~」
そう言って三人は別々のクラスへと向かった。
そして、俺はC組の自分の席に座って机の中に必要な筆記用具やノートを置き、先生が来るのを待ちつつも、周りにどんなやつがいるかを確認していた。
明らかに中学が同じだったやつはその連中で固まり、さっそく読書をしているやつもいる。女子にいたてもいくつか島が分かれていて、おそらくこのクラスのカースト上位勢になるであろうイケている系にアニメや漫画が好きでその話で盛り上がっている系、そのどちらにも属さない至って普通に高校生を過ごす系の女子と様々だ。男子にはそんな壁はないが、付き合う女子の島によって自分たちのランクが決まってしまいそうな勢いだ。クラスの中でもイケてるやつは何人かいるが、イケている系と普通系のグループに囲まれてしまっている。
ん?俺がどのグループに属しているかって?そんなのわざわざ答える必要ある?いいの答えちゃって?俺、悲しくなっちゃうけどいいの?
そう、俺はどのグループにも属していない孤高の狼ちゃんになっていたわけだが、この段階で諦めなくてもいい。まだ入学式が始まって、、、
キーンコ――ンカーーンコーン・・・・
「お前ら席につけーていって座るやつなんていねぇからこのままはじめまーす」
「(おいおいなんともゆるい先生が入ってきたなおい)」
「じゃあ、そこのお前。えーっと、鈴木太郎、朝礼」
「(よりによって俺かよ)」
「きりーつ、れいっ、ちゃくせーき」
一斉に椅子を引いて立ち上がる音が響き合い、ちゃんと礼をするやつしないやつ、もはや立ってんの?ってレベルのやつもいた。全員座り終えたと同時に、俺の名前が「太郎」であることに少しひそひそされていたが、これも慣れたものだ。小学中学と経験してきたことだから、全く問題なかった。むしろ耐性がついて心地よいほどだ。
「今日からお前たちの担任になった永田千春だ。千春先生しか受け付けないからよろしく」
「なんかこだわりの強い先生に当たってしまったなぁ。ま、面白そうな先生だからこのクラスも楽しめそうかな」
朝のショートホームルームは軽くすましてから、体育館で行われる入学式に向かった。
中学よりは広く、初めて見る校歌の歌詞、初めて見る生徒だらけで頭が回りそうだった。
「え~新一年生の皆さま、ご入学おめでとうございます」
いつもの定型文から始まり、長い長い校長先生の話。少しは面白いことを言うかと期待していたが、全くその要素はなく、忠実に校長先生を全うしていた。そして、退屈な入学式を終えてクラスへ戻った。
「では、早速だがみんなにそれぞれ自己紹介をしてもらおうか。出席番号順だから、、、麻倉さんでいいのかな?よろしくっ」
「はい。はじめまして、、、、」
あ行から始まり、か行、そしてさ行、、、次は俺の番。あんまりおもしろいことを狙ってもいけない。ここは少し慎重なことを言っておかないと今後の暮らす生活が最悪な展開になってしまいそうだ。
よし、、、、
「えーっと、はじめまして。今日から同じクラスで学びます鈴木太郎っていいます。中学の頃は太郎って呼ばれていました。みんなと仲良くしていけたらと思うんで、よろしくです」
よし、かなり無難な自己紹介がだきたぞっ。笑いなしの生真面目な態度で印象も悪くないだろう。
そうこうしているうちに全員分の自己紹介が終わり、ちょうどよいタイミングでチャイムが鳴った。
「よーしっ、今日は特に授業もないし、伝えることも伝えたから今日の学校は終了!明日からしっかり授業があるから、忘れ物がないかちゃんと確認してから登校するように。いいかー?」
「わっかりました~千春先生~」
「おっけー千春ちゃん」
いやいや、初日からいきなり距離詰めすぎだって。もうちょっと別の言い方とかないのかよ。
「あ、そうだそうだ。鈴木、お前後で先生の所に来るように」
「え、あ、、、はい」
え、俺なんかしたっけ?全く心当たりがないんだが。まー、せっかく先生との距離を縮めることのできるチャンス。何言われるかは全く見当はついてないけど、とりあえず行くしかないか。。。
そうして、俺は放課後、千春先生のところへと足を運んだ。
おみおみです!
余談ですが、最近よく小指を角にぶつけます。
ここから始まる物語も、そんな角に小指をぶつけてしまうような日常的なものを描けたらと思います!
よろしくお願いします!