第一話「いつもの朝」
中学卒業後、それぞれ別の高校へと別れていくのが一般的なのだが、俺は違う。近所の幼馴染二人と同じ聖南高校に通うことになっている。入学式初日から友だちのいないボッチ生活ではないことは嬉しかった。そして、迎えた入学式前日の夜。何故か俺は、期待と不安を膨らませながら眠れない夜を過ごしているのであった。
【登場人物】
・鈴木太郎:主人公。何故か日常的に罰ゲームの対象になってしまう。
・海崎佑都:太郎の幼馴染の男の子。同じ高校に通い、仲間想いのいいやつ。ちなみにイケメン。
・柏木理子:太郎の幼馴染の女の子。おっとりした柔らかい雰囲気が周りの男子に人気のゆるふわ女子だが、意外と勘が鋭い。ちなみに美少女。
「おーい!太郎!」
いつもと変わらない日常にも少し変化があるだけで、違う景色に見えることはよくあること。
今日は、高校生第一歩になる入学式初日。ちなみに俺の名前は鈴木太郎。全国的に多い苗字ランキング上位に食い込む鈴木に一昔前の代表的な名前の太郎が組み合わさった何の変哲も特徴もない名前だ。
けど、この名前は案外気に入っていることは俺だけの秘密。
「おう!おはよう佑都!」
朝の挨拶を交わしたのは海崎佑都。俺の幼馴染だ。生まれたときから家が近所で、親同士が友人なのもあって遊ぶときはほとんど佑都と一緒に遊んでいた。小学校に中学校、そしてもちろん高校も一緒に登校することになった。いわゆる腐れ縁ってやつだ。すると、少し遅れて、
「二人ともおはよう~」
少し眠たそうな目をしながら歩いてきたのは柏木理子。この子も俺の幼馴染だ。普段から少しおっとりした雰囲気で、柔らかい印象だが意外と勘が鋭いから、下手に嘘をついてしまうと簡単に見透かされてしまう。こいつの彼氏になった人間は大変な人生になることは間違いない。別に悪いわけじゃないんだけどな。
「おう!理子おはよう!」
「うっす」
「いつも待たせちゃってごめんね~」
「俺はいつも早くから起きてるから大丈夫だよ」
「太郎がいつも早すぎるんだよ。入学式で新しい生活始まるからって、テンション上がってんじゃねぇの?」
「そんなわけねぇし」
昨日の夜、準備するものリストを作成して、カバンに入れた内容を何度もチェックし、思ったよりワクワクドキドキで胸がいっぱいで、全く眠れず起きてしまっていた。俺もまだまだ小学生の心を忘れていない、夢と希望が詰まったまま高校生になったんだな。
けど、そんな自分は嫌いじゃない。
「そんなこと言ってないで行くぞっ」
「あ、ごまかしたな太郎!」
「太郎はすぐごまかす癖があるよね~」
「うるっせぇ、早くいくぞっ」
こういう他愛のない会話はいくつになってもできたら幸せなんだろうな。ふと、高校一年生初日ながらに思ってしまった。
ただ、この後起こる出来事をおそらく二人は予知していたのだろうか。三人が中学生まで一緒だった頃の距離感に比べると、少し離れていたような感じがして、俺はもやもやと寂しい気持ちを抱えながら入学式へ向けて登校するのであった。
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