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きみとはなしができたなら

きみとはなしができたなら『わたしのもみじ』

作者: 三千
掲載日:2019/10/31

わたしのもみじ


ねえ、口元を見ていて。もうすぐもうすぐ。ほーらね、笑った。

あら、つられ笑い?

パパになったあなたにも、可愛いところがあるんだね。

そっくりだよ、そのニヒルな笑い方。にひひってなによ、あー可笑しい。

眠った顔に、そっと自分の顔を近づければ、ほわりと甘く、くすぐったい香り。

大切で、大切な、私のもみじ。

その手を必ず、守ってみせるよ。


✳︎✳︎✳︎


「なあ、俺がいつ、彼女がいるなんてこと言ったんだよ?」

「純太くんに会ったのよ、もちろん偶然よ、偶然」

「アイツ、口軽すぎ」

「いいじゃない。別に悪いことじゃない。反対してるわけじゃなし、内緒にしなくたって……」

「うるさいよ、ほっといてくれ」

「ほっとけるか、相手のこと傷つけたら、ママが許さんぞ」

「うぜえ」

「あかちゃんでもできたら……」

「うわ、そんな話するか、ふつー」

「ふふん、親にはそういう話をする義務があるんだからね」

「わかってっから、やめてくれよ」

「もし、あかちゃんできたら、うちのパパみたいに、結婚してきちんと責任取れよ」

「うわあ、重ぉー」


✳︎✳︎✳︎


ねえ、眠っているはずなに、今度は眉をひそめてる。

なんなの、どうしたの?

まだ私のもみじはなにも知らないはずなのに。

この世界の小石ひとつの憂いさえ、あなたは知らないはずなのに。

くすくす、眉間にしわを寄せちゃって、いったいなにを悩んでいるのかねえ。

勉強とか部活とか彼女とか。あれやこれやと悩むのは、これからだって言うのに。

それにしたって。

なんて可愛いの、私のこの手と比べてみてごらん。

私の手の面積の、半分もないくらい。

そんなもみじにだって、神さまは。

こんなにちっちゃな爪まで用意したんだね。

おとなになったらその爪で、ビールのプルタブ上げるんだろうなあ。

ねえ、想像できる?

そのビールを男らしく喉に流し込んで、ぷはってやるんだってこと。

想像したら笑えてきて。

大きなグローブのような手が、ビール缶を嬉しそうに握っている、そんな男前な姿。

あはは、お腹を抱えるくらいに、笑えてきて仕方がない。

そうなったらもう誰も、君の手がこんなもみじだっただなんて、思いも寄らないのだろうね。

あらら、今度は今にも泣き出しそうな、おちょぼ口。

その唇に、ちゅと軽くキスしてみる。

ああ、私の可愛いもみじ。

ずっとこの手を握っていく。

必ず、そして絶対に。

この手を離しはしない。


✳︎✳︎✳︎


「ちゃんとママにも紹介しなさいよ」

「あああ、もううるせ」

「うるさいじゃないよっ」

「わあったから、イテテ、足踏みつけるなよ」

「で……?」

「はあぁ、……」

「で? 潤?」

「あーーーもうっっ……はああ、町井だよ、町井っ」

「え、理沙ちゃん? マジで?」

「くっそー、白状しちまったあ」

「あんた……」

「ああ?」

「見る目あるじゃない」

「あああ、くそ恥ずう」

「理沙ちゃんママに電話しなきゃ」

「うわおい、ヤメろっ」

「うちのおバカのねえ、本当にこんなんで良いのか、聞かなきゃね」

「あああああ、だから嫌だったんだよ……くっそーー」


✳︎✳︎✳︎


可愛い私のもみじ。

今度は君が、新しいもみじを守る番になるのかな。

だとしたら、とても誇れる、私のもみじ。


まだあかちゃんの、きみへ



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― 新着の感想 ―
[一言] 松山千春さんの歌で「生命いのち」と言う曲が有ります。 ご存知かもしれませんが、私はこの歌が大好きでカラオケでも良く歌います。 「わたしのもみじ」を読んで、そんな歌を思い出しました。 両…
[良い点] お母さんが息子さんが大きくなった頃を想像して、自分と重ねて、クスクス笑うところが好きです。 子供が元気に大きくなって、ちゃんと次の命を守れる大人になる。これ以上言うことありませんよね。
[良い点] 息子とお母さんの、あるあるって感じのやりとり。 もしかしたら、お母さんも、自分のお母さんと、そんな会話をしたのかも。 赤ちゃんの手は、ほんとに不思議なくらい小さいですよね。繊細な宝物ってい…
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