悪役令嬢のいない乙女ゲームに転生しました
某界隈ではやりの乙女ゲーム転生をしました。
しかも転生先はわたしが唯一やったことのある乙女ゲームというなんともまあご都合主義。
ありがたいことにモブではなくサポートキャラという安全地帯で、なおかつ最も近い立ち位置で物語を楽しめる絶好ポジ!とか思ってました。
この乙女ゲームの舞台は中世ヨーロッパ風のいわゆる剣と魔法の世界。ザ、乙女ゲーム転生モノって感じの世界デス。わたし自身乙女ゲーム転生モノの小説にはまってそれっぽいゲーム一回くらいやっとくか~って感じだったのであえてそういう世界観の作品を選んだ。ヒロインは現代日本から召喚された20歳のOL、世界に広がった瘴気を浄化するために呼ばれた“癒しの巫女”と呼ばれる存在。浄化の修行をするうちに攻略対象の第二王子、宰相子息、魔法師団エース、騎士団エース、神官、商人などの将来有望な見目麗しい青年と恋に落ち、最後には恋人と攻略対象たちと力を合わせて瘴気の原因である魔王を倒して、愛し合う二人は結ばれましたという言葉と結ばれた二人が幸せそうにしているスチルが出てきてハッピーエンドとなる。
サポートキャラのわたしはこのヒロインの教育係兼相談役兼監視役と言った役どころ。異世界から連れてこられこの世界の常識を何も知らないヒロインに常識やマナーなどを教え、様々な悩みを聞きつつ、おかしな言動などしていないか逐一報告するという何気に重要な役職なのです!!ゲームの中じゃ好感度とか攻略のヒントをくれたりとかの便利キャラとしか見てなかったけど現実はチョー働き者なのですよ。
さてこのゲーム実は悪役令嬢がイナイのデス!!←はいここ、テストに出ますよ~
悪役令嬢転生の小説が流行っている一方で感想?とかで悪役令嬢が出てくる乙女ゲームは滅多にないっていうのを読んだことがあったけど、たしかにちょろっと調べた限りでは悪役令嬢が出てくる乙女ゲームは無かった!そして、悪役令嬢が出てくる乙女ゲームを探すほどのやる気がなかったわたしは世界観だけで選んだこのゲームをやりきりました!何周もするってことはなかったけど全ルート攻略は基本と思ってやりきりましたよ。
そんなわたしが足を向ける先にはこの国を牽引していくであろう高位貴族のご令嬢たちが他の人には見せられないようなスゴイ形相で待ち構えております・・・。
エエ、エエ。イジメやら忠告という名のリンチではゴザイマセン。
この乙女ゲームは悪役令嬢などいませんし、そもそも今わたしのそばにヒロインも居ませんしね。ではこの集まりは何かと申しますと。
現在、乙女ゲームなこの世界の時系列は大体後中盤も終わり、ルートが定まってきて好感度の高い攻略対象の個別イベントが始まる頃合いです。となると、まあ、お分かりいただけるかと思いますが、攻略対象の方々との距離感も近くなるわけで。ありがちな、高貴な方々と距離が近くて生意気だ!とかいう意見とかが出てくるわけで。さらに一人に絞ってくれたらよかったものの、逆ハー狙いかな!?って位均等に皆様と仲良くされているのもありヒロインさんのヘイトが溜まる溜まる。その溜まったヘイトを放置して大切な浄化の巫女を害されたらたまらないとのことで駆り出されたのがこの集まりのメンバーなのである。
うん、スゴイ形相イコール怒りとかではなく、疲れ、な今日この頃。皆様、化粧で隠しきれないクマとは親友となり、人前では虚勢を張るも気心の知れたメンバーしかいないこの場では表情も繕う余裕もなく死相が出ているのではというレベル。もちろん、わたしも同じような顔をしているのは言うまでもない。
「それでは第57回ヒロイン及び攻略対象対策会議を始めますわ」
疲れがにじむ声でそう宣言したのは、金髪に紫の瞳を持つ筆頭公爵家令嬢であり第二王子の婚約者であるアリシア様。
そう、先程の宣言で気づいた方もいるかもしれませんが、アリシア様も転生者なのです!それどころかここにいるメンバーは全員が転生者!!そして、わたし以外は全員攻略対象の婚約者なのデス!!!
あれ?んんん?
と疑問に思ったそこのあなた!その疑問、わたしたちも持ちました!!!
攻略対象の婚約者なんて悪役令嬢のテンプレート!アリシア様なんかメインヒーローの第二王子の婚約者!!乙女ゲーム転生モノだったら主役級の悪役令嬢デスヨ!!!
わたし以外はなんだかんだ言って幼い頃から交流があり、ひょんなことからお互いが転生者と気づき仲を深めていた彼女たちは婚約者となった時戦々恐々としたそうです。この乙女ゲームの知識がある方もいて、悪役令嬢はいないはずなのにっ!?と。え?わたくしデスか?わたくしは家格が皆様より低いので、今までまともな交流もなく、この様な事態になって初めて皆様が転生者と知りましたがナニカ?いいのですよ、この件をきっかけに仲良くなれたから!!それに家格が低いといってもそれなりには高い家格なのですヨ!本当だからネっ!!
・・・それはさておき、話を戻しますと。
ところがどっこいといいますか、蓋を開けてみますと、この疲れに彩られた顔で察していただける通り、悪役令嬢なんてものやってる暇はゴザイマセンデシタ!
先程も言った通りヒロイン様は攻略対象以外の方々、ゲーム中ではモブといわれる方々のヘイトを買っていますのでそれを様々な方法で抑えるのはもちろんのこと、ゲーム中のイベントの対応など仕事が次から次へと発生するのです。
イベントへの対応とはなんぞや、と思われるでしょう!説明しますとね、例えば攻略対象とヒロインのお忍びデートとかあるじゃないですか。ゲームで見てるときは、護衛なんかを撒いて、いつもと違う環境でいつもと違う彼を見れてドキッ、暴漢に絡まれたところを華麗に蹴散らす攻略対象がステキッ!そしてスチルゲットぉぉぉぉぉ!!なわけですが。はいこれ、モブたちの動きを見てみましょう。
まず、ヒロイン失踪により城内大捜索大会開始、同時進行で城下の見回り強化のために人員増員。通常勤務の方々だけでは人手不足になるので休暇中の方々を緊急招集。城壁の出入りの監視および検査を強化。結果ヒト、モノその他の流通が滞る。
ヒロイン見つかりました!攻略対象と一緒です!!捜索こそ終了ですが、周囲の見回りおよび城壁の出入り監視強化状態は継続、護衛を遠巻きに配置、もし暴漢にすでに出会っていたらそいつらの尋問開始。
デート終了して城に戻ってきました!ヒロインの護衛やそば仕えの侍女たちには目を離してしまったことへの責任問題の追究、また、なにか裏がないかの調査。次に同じことが起きないよう原因の追究と警備体制の見直し。休暇中の方々を緊急招集したのでその休暇補填に伴うシフトの組みなおし。城下の流通が滞ったことによる問題の精査、補填など対策の検討。エトセトラエトセトラ
これが、複数、攻略対象の数だけ、発生スルノデス。
仕事がエンドレスで増えていく~~。
フフフッ、乙女ゲーム?悪役令嬢?なにそれおいしいノ?
悪役令嬢やってる暇がないのはもちろんのこと、大なり小なりあった攻略対象という名の婚約者との情も薄れる今日この頃の皆様の心中をお察しいただきたい。
ちなみに本来これらを取り仕切るべき大人たち(宰相やら大臣やらその辺)は、大量発生中の瘴気対策でてんやわんやしていて私たちにお仕事丸投げされていマス。
・・・・・・ああ、逆ハーでも何でもいいから、ヒロインよ、とっとと誰かと結ばれて魔王を倒して乙女ゲーム終わらせてくれ!!!
感想などいただけると泣いて喜びます(^^)/
大体この設定で初長編に挑戦しようか悩み中…