おでかけ
空に掲げられたプラスチック光沢のあるカードは半透明の緑色。噂ではドラゴンの鱗で出来ているらしい。左上には正面無帽の顔写真。幻獣騎乗の免許証だ。
「わぁ、すごい! タイプBだ!」
子どもが一人、両手で掲げたカードを見つめながら瞳を輝かせた。写真の青年がすぐ隣に座っている。そちらへ向けて、ずいっとその子が詰め寄った。
「行こう! どっか! せっかくタイプBだもん。どこがいいかな〜」
タイプBの免許証。
タイプAの幻獣はサイズがそれほど大きくなく、基本は一人乗りなのだ。それとは異なり、タイプBはそこそこの大きさがあるため、二人で楽に乗れる。
わくわくモードの子どもはガイドブックを探しながら挙手した。
「ぼくね、滝が見たいな〜。やっぱ滝の前で仁王立ちだよ」
ぐ。と小さい手で握りこぶしを作って何かに想いを馳せる。その子はちょっと堂々とした感じのBGMを脳内で流していたが、やがてこぶしはそのままに、くりっと青年の方を見やった。
「どこ行きたい? あ、複数回るなら、どこに泊まるかも大事だよね……お宿は何か考えてる?」
楽しみだなぁ。
言って、丸い頬がふにーと持ち上がる。
ごそごそと本を探す音さえ楽しげに部屋に響いた。