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外に出てみようと思うんだ。

 前世の記憶を取り戻してから、どのくらい経ったのだろう。龍にでも聞けばいいのだろうが、奴は宛にならない(彼奴は俺が立つようになるまでを一瞬とほざきやがった)。なので、外に出てみようと思う。

『…大丈夫か?外まで俺はついていけないのだが。いや、お前が行きたいと言うなら止めはしない。あの、でも、危ないぞ。』

漫画のようにおろおろと手を振り、右往左往する龍。過保護なのか何なのか分からないが、俺だってそれなりに大きくなったんだ。一人で行ける。

『えっと、これを持っていけ。治癒薬だ。あと、食い物と飲み物と、あと何がいるんだ?寝床か?』

俺の魔法領域の中に様々なものがぶちこまれる。ちなみに、魔法領域とは魔力によって大きさの異なる鞄みたいなものだ。これの扱い方と敵の倒し方などは一通り教えて貰っている。むしろ、これだけしか教えて貰っていない。

「そんなに要らないから。」

俺は前世の日本語を話していて龍には伝わるのだが、外では使えるのだろうか。一抹の不安を感じながらもどこか胸が踊る。

『そうか…いや、持っていっておけ。もしかしたら、此処には帰ってこないかもしれないからな。』

妙に悟って、結局全て詰め込まれてしまった。まあ、まだ余裕はあるから良いのだが。

「…じゃ、いってきます。」

魔力領域を閉めて、手ぶらで外へ向かう。

『あぁ、またな。』

どこか寂しそうに眉を寄せる龍の姿から目を背けて、歩く。そもそもこの洞窟がどうなっているのか、よく分からない。居場所だけ最低限照らされていたが、あとは闇が広がるばかりだった。龍の教えを受ける場所も練習をした場所もごく一部だ。手探りで壁を伝う。目が慣れてくると、岩のシルエットがぼんやりと見えるようになってきた。大きな岩を乗り越え、尖っている石を避けて前に進む。光がないのは心細かったが、外への興味からか心は踊っていた。

 そう言えば、それなりに歩いているのにあまり疲れを感じない。随分時間が掛かったような気がするがやっと立てるようになって、形状的に人間だと思われる。歩けるようになった子供がこんなにもずかずか歩けるだろうか。何なら、身体が軽いような気さえする。モンスターを食べていた副作用か、龍に育てられた影響か。まあ、便利でいいのだが。

「あっ…」

ふと、遠くに僅かな光が見えた。外に繋がっているという確かな手掛かりに胸を撫で下ろす。実は繋がっていなかったらどうしようかと思っていたのだ。走り出したい気持ちを押さえて、転けないように歩く。あまり余計な体力を使いたくない。もしこれで外は戦場でした、なんてことになったら洒落にならない。徐々に強くなるそれは、久方振りに見た陽の光だった。照らされる範囲が広くなり、僅かに影が出来ている。立てられた丸太が枝分かれし、雫形の何かが密集しているような影。あれは、木だろうか。それがたくさん見えるということは森の中か。ありきたりだな、なんて思いつつ光の中に足を踏み出した。

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