#004「バレないようにしないと!」
日向透は本当に逃げ出したみたいだ。
俺は辺りを念のため見回していると。
テレレー♪
ギフトコード関係のメールが着た。昨日ギフトコード関係のメールの着信音を変えたから間違いない。
「ギフトランクA水纏いの能力が手に入れることが出来ます。手にいれますか?」
(これが昨日メールで書かれていた事か。)
ギフト所持者を倒すと。その倒した相手が持つギフトを獲得するかどうか選べるみたいだ。
(俺の能力は来週まで使えないし。ランクAなら弱くは無いだろう。)
ぶっちゃけ完全消去だけでも十分だが俺は菜彩未を守らなくてはいけないし。それに・・・菜彩未の目の前でこの能力は使いたくない。
だってせっかく付き合ったのに。その関係が砂山のように簡単に崩れる気がしたから。
そして俺ははいのボタンを押した。
何も変化がない。だが、画面上にはおめでとうございます。あなたは水纏いを手に入れましたと書いてある。
「こんなで良いのかよ・・・。そう言えば菜彩未を起こさないと。」
俺は一連の流れで一番大事な事を忘れていた。
倒れている菜彩未の元へ駆け寄った。
「おい。菜彩未しっかりしろ。菜彩未。」
「う、うーん。」
菜彩未がゆっくり目を開いた。
「良かった。気がついたか。何があったんだ。」
「あ、うーんとね。急に襲われたの。」
「あの帽子の男か?」
「そうなの。私の能力で確認できたけど。透明人間って能力らしいよ。」
「そっ、そうか。ちなみに菜彩未の能力ってなんだ?」
「どーして気になるの?」
やっぱり怪しいか。ちゃんと答えた方が良いのか?いや、でも。
「どーしたの。急に黙って。」
「あのな。実は俺もギフト所持者なんだよ。」
俺は覚悟を決めて菜彩未に打ち明けた。
「そうなんだ。あはは。・・・じゃあ私を殺すの?」
菜彩未は俺から目をそらして空を眺めていった。
「・・・そんな事しないよ。するわけがないだろ。」
そんな悲しい顔をするなよ。
「そっかぁー。嬉しい。」
「どうして。」
「だって二人で居れば簡単には死なないじゃない!」
菜彩未は微笑みながら呟いた。
俺は菜彩未をおんぶして菜彩未の家まで送った。
「もう大丈夫か?」
「うーんとね。まだキツいかな。」
「そっか。そうだよな。」
「でー。まだあたしは、本調子じゃありません。そこで一つごっちゃんに頼みが有ります。」
「なんだ。」
「あなたの能力ってなぁにかな?」
玄関に腰をかけ上目遣いで俺に問う。
「俺の能力か、それは・・・。」
「彼女なのに言えないのかな。あたしショックだなぁー。」
菜彩未は体育座りに足を組み換え。そのまま顔を膝に埋めなが言った。
「べ、別に言うけど。菜彩未も教えてくれよな。」
「もちろんだよ!」
顔を上げて、にっと微笑みそう返す菜彩未。
別に俺は怪しまれていないよな。
意を決して俺は言う。
「俺の能力は水纏いだ。」
「そう。ちなみにどんな能力。」
「水をある程度操れるんだ。」
「見せてぐれるかな?」
「良いけど。この辺がびちゃびちゃになるぞ。」
「そっかぁ。それは嫌だな。」
うーんと顔をしかませて。少々悩んだのだろう暫くし。
「なら今度必ず見せてね。」
「ああ。分かったよ。それで、菜彩未の能力はどんなの。」
「そうそう。聞いて聞いて。あたし凄い能力なんだよ。」
まるだ聞かれるのを待っていたかのように目を輝かせながら言う。
「えーとね。完璧調査って言って。なんとランクはSSSなんだよ!」
お前もSSSランクなのか!
なんか回りにおんなじランクの人が居るって事は意外にもレアリティ高くないのかな?
「でね。効果は相手のギフトを完璧に知ることが出来るの。なんかね発動すると頭に情報が、こう。ぱぁーって入ってくるの!!」
身振り手振りで説明する菜彩未の話を聞いて。俺は思った。
(あれ。もしかして俺の完璧消去バレるのでは?・・・いやまだ大丈夫なはずだ。)
「でもねこの能力は、1週間に一度しか使えないんだ。・・・ランクSSSの癖に使えないの。」
はぁーとため息を吐いている菜彩未。落ち込んでる菜彩未を余所に、その言葉を聞いて。俺は凄く安心した。
(なら、俺の能力はバレていないよね?)
「な、なぁ菜彩未。」
「うーん。なぁに?」
「今更だけどいい忘れていた。あの男、日向透を逃がしてしまった。」
「日向ってあの帽子の男の事?」
「そうだ。」
「ああ。いーよ。別に気にしないで。・・・だってごっちゃん分かってないの?」
「えっ。何が。」
「あの日向透を捕まえてどうするつもりだったのかな?」
「まあそれは、菜彩未をこんな目に遭わしたから・・・当然・・・あっ!」
「気付いたわね。もう少しでごっちゃん人殺しになっていたんだよ。」
人殺し・・・。
その言葉を聞いて。俺は急に胸の奥が熱くなった。
「うぉえ。うっ。はぁはぁ。」
吐きそうになった。
俺もう殺してるじゃん。抹消しちゃったじゃんか。
「ちょっと大丈夫!」
菜彩未が立ち上がり俺の背中を優しく擦ってくれた。
「あ、ありがとう。」
「どうしたの急に?」
「いや。人殺しって。言葉を聞いて。なんかほらここの辺りが急に苦しくなった。」
俺は胸を押さえながらいった。
心臓が凄く早く鳴っている。まるで全力疾走した後みたいだ。
「大丈夫だよ。」
「えっ。」
菜彩未が俺を優しく抱き締めた。
「ちょっ。な、菜彩未。」
「うふふ。もしねごっちゃんがギフトを使い人を殺めたとしても仕方ないよ。それがギフトを持つものの運命なのだからね。」
「・・・。」
「ギフト所有者の全員が殺しあいとかしなければ大丈夫だけど。そんなに甘くないみたいだね。」
耳元でやんわり話す菜彩未。
「だけど。人殺しは、人殺しじゃんか。」
「だから理由を付ければ平気だよ。」
そう言って菜彩未は俺から離れて。
「私を守るためだと思えば良いのよ。」
とんでもないことを言っているけど。
もう戦いは始まってしまった。
俺はその言葉で何故だか無性に納得してしまった。