蕁麻疹 その9
神楽は風呂からあがると、ロッカーに向かった。
多くの人は、ラウンジで休んでから外に出るが、彼女は男性に
近寄ると蕁麻疹ができてしまう体質なので、見ず知らずの人が
多いラウンジで休むことはできないのだった。
女性用ロッカーから廊下に出て、曲がり角を曲がろうとしたとき、
人とぶつかってしまった。
そんなに勢いよくぶつかったのではなったので、倒れはしなった。
「あっ、すみません」
ぶつかったのが男性か女性か分からなかったので、蕁麻疹ができない。
「いえっ、こちらこそ」
男性の声と分かった瞬間に彼女の体に蕁麻疹ができる。
『やだわぁ、こんな体質』
痒みはそれほどでもないが、ゼロでもないので、我慢しなくてはいけない。
そして、再び、外に出ようとしたのだが、
「……あれっ、神楽さん」
「高藤……課長代理」
「どうしてこんなところに……?」
「課長代理こそ」
一気に彼女の蕁麻疹がひどくなり、痒みが強くなり、体を掻き始める。
「まだ、男性恐怖症は治ってないのか……?」
神楽が黙っていると、高藤はため息をつく。
「悪い。
また明日な?」
そう言って、高藤はラウンジへ消えていった。
神楽は一人になり、こう思うのだった。
『やっぱり、高藤さんの時だけ、蕁麻疹がひどいわね』
体の痒みは未だ残っており、体を掻きながら会社に戻るのだった。