蕁麻疹 その7
君嶋商事の広いフロアは、ほとんど電気が消えており、数名が残業しているだけである。
『あっー、疲れたなぁ~』
高藤は、そう言って、座りながら背伸びをすると、時計が目に入った。
『やばっ、もう20時かよ』
会社は残業を認めておらず、20時以降に仕事をする場合は、
基本的に事前申請が必要になる。
『ある程度進んだし、帰るかな』
周囲を見渡すと、同じ部署では神楽のみが残業していた。
彼は、帰る準備をし、彼女に近寄っていった。
「神楽さん、まだ終わらないか」
彼女は、高藤を見上げた。
「えぇ、私ももう帰ります」
「そうか。
あまり遅くならないようにな」
そういって、彼は扉を出て、エレベータホールに着いた時、
携帯電話が鳴った。
「あれっ、折谷か?」
彼は携帯電話の通話ボタンを押し
「どうしたんだ?」
「おいっ、高藤、呑んでるから来いよ」
その声の大きさに高藤は耳を遠ざけてしまった。
明らかに酔っぱらっているのが、彼には分かった。
「おいっ、聞いてるのかよ!!」
携帯電話から遠ざけていても、聞こえてくる。
仕方ないので、高藤は口だけ携帯電話に近づける。
「これからっ!?」
「いいから、来いよ~」
そう言って、電話を切ってしまった。
『どうするか?』
彼は携帯電話を胸ポケットにしまいながら考え込む。
とりあえず、エレベータに乗り込み、エントランスへ向かう。
彼にとっては、同僚でもあり、部下でもある。
その誘いを断ることは今後の仕事にも影響が出てしまう可能性がある。
彼は、ゲートを抜け、エントランスホールに出る。
『しょうがない、行くか……』
あまり、お酒は飲まない彼だが、無下に断ることができないが、
しかし、ここで一つ問題があった。
『そもそも、あいつどこで呑んでるんだ?』
彼は、エントランスホールで茫然としてしまった。
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