蕁麻疹 その3
君嶋商事の会社は天井が高く、フロアは広く、端から端まで歩くと、結構な距離になる。
そんな会社内には、多くの机や椅子が整然と並んでいる。
フロア内は暗く、少し不気味さを醸し出しているが、
その一部だけがデスクライトで照らされている。
そんなフロアにキーボードの叩く音が鳴り響いている。
神楽はひとり残業していた。
彼女は、不安げな表情をし、コピー機の方に行き、印刷物を手にする。
その印刷物を両手で持ち、顔の高さまで持ち上げて、印刷物を確認する。
そして、満足げな表情で、
『問題ない……わよね』
そう独り言を言った。
彼女は自席に戻り、深く椅子に座り、背もたれにもたれかかる。
その状態で周囲を見回してみると、誰もいない。
『皆、帰ったかぁ』
ふと、パソコンの時間を見てみると、深夜1時。
『やだぁ、こんな時間……
今日中に終わらせることなかったのに……』
高藤が帰り際に声をかけてくれたのは覚えていたが、
それ以降は、仕事に没頭し、時間を確認することを忘れてしまっていた。
ポーチから鏡を取り出し自分の顔をチェックする。
『疲れが顔に出ているかなぁ~
玉越さんにばれたらやだなぁ~』
目が腫れぼったくなり、少し黒ずんでおり、肌の状態も悪くなっていた。
彼女は、顔をマッサージしてみるが、すぐに効果が表れるはずもなく、
特に変化は見られない。
彼女は、マッサージを諦め、椅子に大きくもたれかかった。
『帰る気力ないなぁ……』
自転車で約40分。
これから、夏本番という時期で、暑さも増してきている。
いくら夜で涼しいとは言っても、自転車で帰る余裕は、彼女にはなかった。
『……とりあえず、お風呂に入っておこう』
彼女は、荷物をまとめ、会社を後にした。
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