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とある1日 ─門番長の憂鬱─

謎の美人(イケメン)現る!!

 ハァァ、困った、困った事になったぞぉぉぉ。(頭ガシガシ)


 ついさっき、いきなり伝令の兵が「これより騎士団長様が南門に視察に来られる。当直の者はそのままこの場に残るように」とだけ伝えてきた。

 俺だけなら別になんてことないから、さほど問題ではない。

 なら、何が困ったかというと、今日の当直には南門が誇る問題児がいるということだ。


 当の問題児はというと、お達しがあったのにへらへらしてるよ。(呆れ)




 ──おいそこ! 「なあ、騎士団長ってどんな人?」「…さあ」じゃねぇんだよ!

 特に問題児筆頭のお前! そう、お前だよ。

お前は何回か騎士団長と会った事あるからな。

 意外そうな顔してんじゃねぇよ! 会った事あるの!

 …誰がって? お前だよ!!




 ハア、ハア、とりあえずお前達、変な事だけはするなよ!

 ふりですか?じゃねぇんだよ! ふりじゃねぇよ!! ぜってーやんなよ。だからふりじゃねぇぇ!!

 お前らの失態は全部俺の責任になるんだからな!?


 ハア、この問題児達、本当にどうしてくれよう。


 どうこう言ってる間に騎士団長がいらっしゃる時間になった。問題児達は今は……もう既にボロが出始めてやがる。頼むから失礼な事だけはするなよ。




 遠くから騎士団長がやってくるのが見えてきた。なんで遠くから来ているのが分かるかって?

 そりゃあ、騎士団長の周りにファンがいっぱいいるからだよ。

 男女比は男5:女5といったところだな。ん?なんで半々なのかって? そりゃあ、騎士団長は美人(イケメン)だからな。

 意味がわからないだって? んー、説明が面倒なんだよな。


 まあ、とりあえず騎士団長は女性だ。オマケに美人でスタイルも良い。男であれば十中八九、誰もが振り返る程の美人だ。

 それならなんで女性のファンもいるのかって?

 それは、中身がとてもイケメンなんだよ。

 誰に対しても優しく、気配りが凄い。まずそれで女性すらもキュン♡とすんだよ。 …何? おっさんがキュン♡とかすんな、気持ち悪い? うるせぇ、俺だってやりたくてやったわけじゃねぇよ。

 話が逸れたな。まあそんで心ときめいた後に、騎士団長が微笑んで、その微笑み(イケメンスマイル)によって、完全に、女性ですら恋に落ちるんだよ。

 まあ、人気なのはそれだけじゃねえんだけどな。

 騎士団長はイケメンな性格、オマケにとてつもなく強いんだこれが。男相手でも負けた事は一度だってねぇ。そこに男女共に憧れたり、恋に落ちるってわけだ。


 だがな、そんな美人(イケメン)な騎士団長だが。彼氏は一度としていた事がないんだ。

 何でいないかって? そりゃ、騎士団長の理想が高すぎるってのがあるな。


 だから、騎士団長の理想の彼氏像を知って、尚かつ、その理想に巻き込まれた奴は騎士団長への恋は冷める。まあ、俺も騎士団長の理想に振り回された一人だからな。

 俺も騎士団長に恋していた時期がありました。(遠い目)


 何? 騎士団長の理想を訊かせて欲しい?

 まあいいけどよ。まず知っていてほしいのは騎士団長はさっきも言ったが、とてつもなく強いという事だ。一人だけで一つの軍隊を壊滅出来る。

 この国、ひいては他の国にも一人で一つの軍隊を壊滅させる事が出来る人なんざ騎士団長くらい──まあ、門番の問題児筆頭も本気を出せば国一つ壊滅出来るんだろうが──だ。

 だが、厄介な事にこの騎士団長。乙女チックな夢があるんだよ。

 それは、ボーイフレンドは自分より強く、守ってくれる白馬に乗った王子様がいいんだと。

 ……無理だろ。


 だから、なんかの団長になる時には騎士団長より直々に呼ばれて、運命の人探しという名の理不尽な訓練が始まる。そして、皆逃げ出す。これが何回も続く。被害者が増え続ける。訓練を受けた男は恋が冷める。コレの繰り返し。

 ……騎士団長に彼氏出来るの無理じゃね? な? そう思うだろ?


 だから俺は騎士団長に、恋はしねぇが尊敬出来る上司ではある。…他の奴らも今では騎士団長の事を尊敬、というか憧れ的な存在になってる。…あんな男性になるぞってな。




 おっと、騎士団長様が近くまでいらしたから、この話はここまでな。


「騎士団長様、お勤めご苦労様です。我が南門に如何な御用でしょうか?」

「長ったらしいのは嫌いなので単刀直入に訊きます。先程、こちらに飛竜が落下してきましたね?」

「は、はい。確かに飛竜が落下してきました」

「私が見た限りでは槍が刺さり、その一撃で息絶えたのでしょう」


 ……単刀直入というのは一体どこに?


「コホン、つまり何が言いたいかというと、たったの一撃で飛竜を仕留めたのは誰ですか?」


 ……。

 …遅かった! もう問題児が問題起こしてた!


「いますよね。飛竜を一撃で葬った人が」


 います。あいつです。

 そう思ってやつの方を見たんだが……。

 なんだよその顔は!?

 コッチ見んな、って顔してんじゃねぇよ。

 この話題の当事者はお前だろうが。


「あいつです」


 上司への態度がなってないからな。ちょっと仕返しだ。

 それに、日頃の厄介事に対する憂さ晴らしに俺はやつに全てをマル投げする事にした。


「ほう、あなたでしたか。……ふむ、まあまあといったところですかね?」


 何がですか?


「とりあえず、私と一騎打ちしましょうか」


 突然ですね。

 あっ、もう既に距離を取っていらっしゃる。

 こりゃ、なに言っても聞く耳持たねぇや。


「大丈夫です。怖くありませんから」


 それ明らかにダメなやつです。字面だけ見たら犯罪者にしか見えません。


「剣をとりなさない。私が直々に相手になりましょう」


 相変わらず強引ですね。(遠い目)

 それに、門番は槍しか持ってません。


 これに対して、やつはというと、…何時も通りだな。

 めんどそうな顔すんな。…まあ、多少は同情するが。

 騎士団長についてきた近衛の奴らも呆れてやがる。…言わなくても分かってると思うが、近衛の奴らも騎士団長の被害者だ。


「では、参ります」


 そう言うと騎士団長は先程取っていた距離を一気に詰めてやつに迫った。というか、騎士団長の動きって端から見ても瞬間移動にしか見えないんだよなぁ。

 よし、実況に戻るぞ。

 一気に距離を詰めた騎士団長は問題児(やつ)に向かって剣を振るった!

 それをやつは片足を下げることで避けた!

 そこで騎士団長は剣を横薙に振るった!

 やつは槍の柄を用いて上手く剣をいなす!

 そこから先は…分からん!! 動いているのは分かるんだが…姿が見えん!! 最早、常人には実況出来る次元ではないのだ!!


 んっ? 双方の動きが止まったぞ? どした?


「あなた…攻撃してきなさい!」

「え~? だって攻撃するのって疲れるじゃないですか」


 はぁ…、んなこったろうと思った。

 だが問題児よ、避けるのも相当疲れるぞ?


 ※(それは無いっすね~)


「ふぅ…。あなたが攻撃をしてこないのであれば、続ける意味がありませんね」


 あっ! 騎士団長がやる気無くした。しかし、何故?


「あれ? 終わりですか?」

「うん、そうだね」


 理想の王子様探し※(無理じゃね?)は?

 あっ、でもこれ興味が無くなったな。口調が普段通りになってる。


「急ですね」

「ああ、私は働こうとしない男性は嫌いでね」


 だから理想高すぎだろ?!

 それだから彼氏出来ないんですよ!?

 問題児も、「えっ?! 何この人?!」みたいな顔してらぁ。そりゃ、そうだよな。いきなり勝負仕掛けといて途中で「お前、嫌い」って言われたら誰だって、はっ?ってなるだろ。


 そういや騎士団長の理想の高さは筋金入りだってエピソードがあったな。

 あれは騎士団長が飲みに誘ってくれた時だったな。

 二人して酔いが回ってきた頃に騎士団長が話しを切り出してきた。


────


「君に訊きたい事がある」

「何でしょうか?」

「どうして私には彼氏が出来ないんだい?」

「そ、それは」

「正直に言ってくれ」

「では…、騎士団長様は理想の男性像が高すぎなのだと思います」

「それは私に妥協をしろ、という事かい?」

「えっ?! あっ、…はぃ」

「ああ、すまない。忠告は有り難いのだが、私は妥協するのが嫌いでね」

「そ、そうですか」

「ハハ、まあ気長に待つとするか。今日はありがとう、だから私が奢るよ。また二人で飲みに行こう。じゃあね」

「は、はい」


────


 そんな事を思い出た。

 そして、帰り際に「あいつを鍛えれば理想の男性に…」などと呟いているのを聞いてしまった。

 そんなこんなもあり、騎士団長に彼氏が出来るのは当分無理だろうなぁと思ってしまったのは仕方ない事だろう。

ちなみにこの騎士団長、金髪、色白の肌、凛々しい瞳、グラマラスな体型と超絶美女ではありますが、男性よりも断然かっこいいです。

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