その17
1月12日
今日はミントさんが風邪を引いて休んだので、代わりに受付をしていたのだが、
「おや、お手伝いかい? 偉いな」
頭ぽんぽんされて……なんか……飴玉くれた…… 。
これでも19才だし、ギルマスなんだけどな……。
褒められても、嬉しくない。
1月13日
「ぎゃあぁあ!」
そんな叫び声を聞いたのは深夜だった。
灯りをつけて、ウェンディを見る。
ぶんぶんと首を振った。
「ごめんなさい、母ちゃ~ん!」
あぁ、うん……どうやら、ヤコブの寝言だったらしい…… 。
というか今さらだけど……ヤコブって家出してきたんじゃないよね?
1月15日
ハーベスト(父親)から依頼がきた。
曰く、妹の結婚式の身代わりをして欲しいとのこと。 そんなことして大丈夫なのかと聞くと、相手も了承済みなのだと言う。
仕方なく妹の尻拭いに行ったのだが、まさか相手も代役を立てているとは思わなかった。
しかも代役が勇者だなんて聞いてなかったぞ。
これは、詐欺だ。
「このまま、結婚しちゃおうか!」
とんでもない爆弾発言をかましてきた。
いやいやいや、あり得ないですから。
私に無断で誓いのキスとやらをしようとしていたので、全力で回避させてもらった。
しかし問題は、それからだった。
「あ」
その人たちを見て、私はフリーズした。
「まぁ! もしかしてあの人は……」
「悔しいけど……彼女なら、仕方ないわね」
やばい。
何を勘違いしているのか、息子を(お兄ちゃんを)よろしくねと私の手を熱く握られて、背中からぶぁっと嫌な汗が噴き出た。
「いや、これはですね」
「そっか……! ってことは、私、お姉ちゃんが増えるのね!」
「これは大変! ヴィヴィアン叔母様でしょ、デヴィット叔父様に、あぁ、あと誰に言えばいいのか……」
テンションハイな彼女達を納得させるに、1ヶ月を要しただなんて、誰が考えただろうか。 勇者は踏みつければ終わりだが、女性にそんな乱暴なことは出来ない。
1月18日
本を雨宮さんに渡した。
前の世界に、未練がないと言うと嘘になる。
けれど、積極的に戻りたいとは、やっぱり思えない。
私にはウェンディや、ルチア、それにララバイがいる。
雨宮さんには悪いけど、戻りたい人だけ戻ればいいと思う。
1月19日
勇者が、女体化するという奇病を発症した。
どうやら、岩清水さんの怪しげな薬を飲んだらしい。
命知らずにも程がある。
1月20日
寒いから、手袋が欲しいなと思って、防具屋に注文した。
なんか超合金素材のトゲトゲ付きという意味不明なものが出てきた。
ふわふわであったかい茶色のウサギの毛皮で作った可愛いミトンみたいなのを、ずっと楽しみにしていたので、いくら仲がよい友人だとはいえ、憤りは隠せなかった。
「そんなサービス精神はいらないよ」
「え? ココちゃんには防御力が必要でしょ? 勇者が襲ってきたらどうするのよ」
「あー……」
超合金の手袋を見た。トゲトゲはついているけど、それほどダサくはない。
はめてみる。
思ったよりも、重くないし、どうやら手袋の中は私の要望通りに兎の毛皮を入れてくれたらしい。
「ごめんね、ありがとう……。あの、おいくらですか……?」
「友情価格で安くしとくよ」
私は友人に謝罪して、手袋を購入した。
1月21日 大雪
階段を降りようとして踏み外した。本を読みながら歩いていたのが敗因だ。
怪我が打撲程度で済んで良かった。
1月22日
雪を見ると、童心に返る気がする。母は元気だろうか……。
久しぶりに手紙を出そうかな。
1月23日
空が澄み切っていて、星がきれいだ。じっと見上げていたら、背後から抱きつかれて悲鳴を上げた。
勇者だった。
どうやら酔っ払うと抱きつき魔になるらしい。
びっくりして平手打ちしたら、頭をぶつけて気絶してしまった。
勇者は変質者であり、正当防衛だと主張したい。




