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プロローグ

 拝啓 親愛なる友人へ。

 俺がいきなりそちらの世界から消えてしまって、様々な人に迷惑をかけたかもしれません。

 特に家族とか友人とかな? え? そうでもない? 嘘だろ?

 まぁ、いいや、実際のところ、この手紙がお前のところに届いていると言われても、にわかに信じがたい話なのだが、届いてくれていたら、現実世界での、俺にとっての一番の親友だったお前に届けられるようにしてもらったんだ。

 家族の誰かとかじゃなくて、お前にだぞ? 感謝しろよ?

 今頃だったら、お前と一緒に他愛のない話をしながら、通っていた高校の最後の年始めの桜の花びらが満開の校門を潜りながら、クラス表を見てさ、「今年もお前と一緒かよ」なんていう会話をしている筈だったんだろう。

 残念なことに、そんな夢は叶わずに俺はその世界から行方不明となっている。

 お前がよく知っている春休みの終わる一週間前くらいだったよな。

 二人で暇だから散歩していてさ。

「あぁ、女の子とイチャイチャしてぇ」

「ああ、それが叶わないのが現実だよ」

 通り過ぎていくカップルの波を二人で掻き分けながらさ、路地裏の方で変な物音がしたから行ってみると、カツアゲされている気の弱そうな青年が、不良の兄ちゃんに囲まれながらビクビクしていたから、いちゃいちゃしていたカップルへのやりきれない怒りをそいつらにぶつけて終わったあと、俺が自分の部屋で遊ぶことを提案して、その帰り道にさ。

 電柱に置かれていた変なバッグ。俺たち二人で開けちゃったあれだよ。金だったらいなとか喋りながら警戒心ゼロで開けちゃったあの爆弾バッグ。

 吹っ飛ばされたお前はなんとか無事だったんだが、どうして俺は助からなかったんだろうな。

 ああいや、こうして手紙の本文は勿論、俺だよ。

 オレオレっていうと、昔流行った詐欺っぽいって言われると、一人称すら繰り返していけない規制が掛かって何も切り出せなくなるので勘弁して欲しい。

 それじゃあ、本題だけど。なんて話せばいいのか?

 俺はあの爆発をきっかけに異世界に飛ばされたんだ。

 極端に言うと神様の悪戯とか思えてしまうほどのレベルでさ。

 この世界に来てから、思ったことはまず、なんで俺なんだ? っていうことだけしか思い浮かばなかった。

 だって考えてもみてくれ。

 爆弾に巻き込まれて、死んだのかなって思ったらそこは異世界でしたとかって、これまた流行りのネタに俺までもが巻き込まれた感じだったしさ。

 今ではこっちの生活も大分慣れた、というか、快適だ。快適すぎて戻りたくない自分がいるということを教えておくわ。

 俺は求められてこの世界に来たのかって、一応、この世界のお偉いさん? みたいなやつに問いただしたら、なんてことのない、ただの偶然だとさ。

 さらっとお偉いさんも酷いことを言ってくれるなと思いながら、お偉いさんが元の世界に戻してやろうとか言ってくれたんだ。

 まだこっちに来たばかりの俺だったら迷わず、一言返事で頷いていただろうけれど、充実していた俺は、首を振って拒否したよ。

 ここまで読んでくれたお前なら、頭に?マークでも浮かべているだろうけど、こっちの世界での射影術を念写したやつがあるので、それを同封しておく。

 お前の世界で言う、写真だよ。


 それじゃあ、俺は俺の最高の世界を死ぬまで堪能していきます。

 以上!!


 親愛なる我が友へ。

 国後 楓より


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